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省諐録 →省諐録🔗⭐🔉
省諐録 →省諐録
(一)行ふところの道は、もつて自から安んずべし。得るところの事は、もつて自から楽しむべし。罪の有無は我にあるのみ。外より至るものは、あに憂戚するに足らんや。もし忠信にして譴を受くるをもつて辱となさば、すなはち不義にして富みかつ貴きも、またその栄とするところにあるか。
(二)人の知るに及ばざるところにして、我独りこれを知り、人の能くするに及ばざるところにして、我独りこれを能くするは、これまた天の寵を荷(にな)ふなり。天の寵を荷ふことかくのごとくにして、しかもただ一身の為にのみ計(はか)り、天下の為に計らざれば、すなはちその天に負(そむ)くこと、あにまた大ならずや。
(三)君子に五の楽(たのしみ)あり。しかうして、富貴は与(あず)からず。一門礼義を知りて、骨肉釁隙(きんげき)なきは、一の楽なり。取予苟くもせず、廉潔自から養ひ、内には妻孥に愧ぢず、外には衆民に
(は)ぢざるは、二の楽なり。聖学を講明し、心に大道を識り、時に随ひ義に安んじ、険に処(お)ること夷のごときは、三の楽なり。西人が理窟を啓(ひら)くの後に生れて、古の聖賢のいまだ嘗て識らざるところの理を知るは、四の楽なり。東洋道徳、西洋芸術、精粗遺さず、表裏兼該し、因りてもつて民物を沢し、国恩に報ゆるは、五の楽なり。
(四)敏の一字は、これ学を為すの法にして、治を為すの要も、またこれに若くはなし。天下の学ぶべく為すべきの務は、このごとくそれ広く、かのごとくそれ大なり。ゆゑに学と治とは、みなもつて敏ならざるべからず。かの身を学に終へて、空疎にして用なく、身を官に終へて、因仍(いんじよう)にして功なきものは、その力を勤むること敏ならざるに坐すること、十のうち常に八、九なり。
(五)外夷をして易侮の心を開かしめざるは、これ防禦の至要なり。辺海の防堵は、みなその法を得ず。陳(つら)ぬるところの銃器は、みなその式に中(あた)らず。接するところの官吏は、みな凡夫庸人にして、胸に甲兵なし。かくのごとくにして、夷人の侮心を開くことなからんことを欲するも、寧(いずく)んぞ得べけんや。
〈日本思想大系55〉
(は)ぢざるは、二の楽なり。聖学を講明し、心に大道を識り、時に随ひ義に安んじ、険に処(お)ること夷のごときは、三の楽なり。西人が理窟を啓(ひら)くの後に生れて、古の聖賢のいまだ嘗て識らざるところの理を知るは、四の楽なり。東洋道徳、西洋芸術、精粗遺さず、表裏兼該し、因りてもつて民物を沢し、国恩に報ゆるは、五の楽なり。
(四)敏の一字は、これ学を為すの法にして、治を為すの要も、またこれに若くはなし。天下の学ぶべく為すべきの務は、このごとくそれ広く、かのごとくそれ大なり。ゆゑに学と治とは、みなもつて敏ならざるべからず。かの身を学に終へて、空疎にして用なく、身を官に終へて、因仍(いんじよう)にして功なきものは、その力を勤むること敏ならざるに坐すること、十のうち常に八、九なり。
(五)外夷をして易侮の心を開かしめざるは、これ防禦の至要なり。辺海の防堵は、みなその法を得ず。陳(つら)ぬるところの銃器は、みなその式に中(あた)らず。接するところの官吏は、みな凡夫庸人にして、胸に甲兵なし。かくのごとくにして、夷人の侮心を開くことなからんことを欲するも、寧(いずく)んぞ得べけんや。
〈日本思想大系55〉
広辞苑 ページ 24211 での【省諐録 →省諐録】単語。