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より (格助)🔗🔉

より (格助) (1)比較の基準を表す。「よりは」「よりも」「よりか」などの形をとることが多い。「富士山―高い山」「思った―も立派なできばえ」「人―は妹そも悪しき恋もなくあらましものを思はしめつつ/万葉 3737」 (2)一定の範囲を限定する意を表す。下に時間・距離・位置などに関する名詞がくることが多い。「私の家は公園―手前にある」「五時―後にしよう」「これ―東,娑婆世界―西に,天上の人の植ゑし木の声すなり/宇津保(俊蔭)」 (3)(打ち消しの語句を伴って)ほかのものを否定し,それと限る意を表す。「よりほか」「よりしか」などの形を用いることが多い。「ことわる―しかたがない」「もろともにあはれと思へ山桜花―ほかに知る人もなし/金葉(雑上)」 (4)動作・作用の時間的・空間的起点を表す。現代語では,書き言葉的で,話し言葉では「から」を用いるのが普通である。「神戸港―船出する」「六時―開会の予定」「いづく―来りしものそまなかひにもとなかかりて安眠(ヤスイ)しなさぬ/万葉 802」 (5)動作の行われる場所・経由地を表す。…を通って。から。「古に恋ふる鳥かもゆづるはの御井(ミイ)の上―鳴き渡り行く/万葉 111」「かたゐのやうなる姿なる,この車のまへ―いきけり/大和 148」 (6)動作・作用の手段・方法を表す。で。にて。「つぎねふ山背道(ヤマシロジ)を他夫(ヒトヅマ)の馬―行くに己夫(オノヅマ)し徒歩(カチ)―行けば/万葉 3314」「ただひとり徒歩(カチ)―まうでけり/徒然 52」 (7)原因・理由を表す。のゆえに。によって。「つはものどもあまた具して山へ登りける―なむその山をふじの山とは名づけける/竹取」 (8)(活用する語の連体形に付き)「…するとすぐ」「…するやいなや」の意を表す。「命婦かしこにまかでつきて門引き入るる―,けはひあはれなり/源氏(桐壺)」「名を聞く―,やがて面影は推しはからるる心地するを/徒然 71」 〔(1)上代には,ほとんど同じ用法をもつ格助詞として,「ゆ」「ゆり」「よ」「より」の四語がある。これらの語源に関しては,「ゆり」「より」からその省略形として「ゆ」「よ」が生じたとする説と,「ゆ」「よ」から「ゆり」「より」が生じたとする説とがある。→「ゆり」(格助)の補説(1)。(2)「より」は上代から用いられている語であるが,古来,その用法が変わらないのは(1)で,中古以降,(4)(5)などは次第に「から」がこれに代わり,その他のものも「にて」「で」その他の語に代わったものが多い〕

大辞林 ページ 156445 での格助単語。