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安愚楽鍋 →安愚楽鍋🔗⭐🔉
安愚楽鍋 →安愚楽鍋
開場
天地は万物(ばんもつ)の父母、人は万物の霊、故(かるが)ゆゑに五穀草木(そうもく)鳥獣魚肉、是が食(しよく)となるは、自然の理にして、これを食ふこと、人の性(せい)なり。昔々の里諺(ことわざ)に、盲文爺(ももんじじい)のたぬき汁、因果応報穢(けがれ)を浄(きよ)むる、かち
山の切火打(きりびうち)。あら玉うさぎも吸物で、味をしめこの喰初(くいぞめ)に、そろ
開化(ひらけ)し西洋料理。その功能も深見草、牡丹紅葉(もみじ)の季(とき)をきらはず。猪(しし)よりさきへだら
歩行(あるき)、よし遅くとも怠らず、往来(ゆきき)絶ざる浅草通行(どおり)。御蔵前(おんくらまえ)に定舗(じようみせ)の、名も高籏(たかはた)の牛肉鍋(ぎゆうにくなべ)。十人よれば、十種(といろ)の注文。昨晩(ゆうべ)もてたる味噌を挙(あげ)、たれをきかせる朝帰り。生(なま)のかはりの粋(いき)がり連中、西洋書生漢学者流、劉訓(りゆうくん)に似た儒者あれば、省柏(しようはく)めかす僧もあり。士農工商老若男女(なんによ)、賢愚貧福おしなべて、牛(うし)鍋食はねば開化不進(ひらけぬ)奴(やつ)と、鳥なき郷(さと)の蝙蝠傘。鳶合羽(とんびがつぱ)の翅(つばさ)をひろげて、遠からん者は人力車。近くは銭湯帰(ゆがえり)、薬喰(くすりぐい)、牛乳(みるく)乾酪(かんらく)乳油(ちちあぶら)、牛陽(たけり)はことに勇潔(いさぎよく)、彼(かの)肉陣(にくじん)の兵粮(ひようろう)と、土産に買ふも最(いと)多き。






広辞苑 ページ 23981 での【安愚楽鍋 →安愚楽鍋】単語。