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笈の小文 →笈の小文🔗⭐🔉
笈の小文 →笈の小文
百骸(ひやくがい)九竅(きゆうきよう)の中に物有(あり)。かりに名付(なづけ)て風羅坊といふ。誠にうすものゝかぜに破れやすからん事をいふにやあらむ。かれ狂句を好(このむ)こと久し。終(つい)に生涯のはかりごとゝなす。ある時は倦(うん)で放擲(ほうてき)せん事をおもひ、ある時はすゝむで人にかたむ事をほこり、是非胸中にたゝかふて、是が為に身安からず。しばらく身を立(たて)む事をねがへども、これが為にさへられ、暫(しばらく)学(まなん)で愚を暁(さとらん)事をおもへども、是が為に破られ、つゐに無能無芸にして只(ただ)此一筋に繋(つなが)る。西行の和歌における、宗祇の連歌における、雪舟の絵における、利休が茶における、其(その)貫道(かんどう)する物は一(いつ)なり。しかも風雅におけるもの、造化(ぞうか)にしたがひて四時(しいじ)を友とす。見る処花にあらずといふ事なし。おもふ所月にあらずといふ事なし。像(かたち)花にあらざる時は夷狄(いてき)にひとし。心花にあらざる時は鳥獣に類(るいす)。夷狄を出(いで)、鳥獣を離れて、造化にしたがひ、造化にかへれとなり。
広辞苑 ページ 23999 での【笈の小文 →笈の小文】単語。