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落窪物語 →落窪物語🔗⭐🔉
落窪物語 →落窪物語
今は昔、中納言なる人の、御女(むすめ)あまたもち給へるおはしき。大君(おおいぎみ)、中君(なかのきみ)には婿(むこ)どりして、西の対(たい)、東(ひんがし)の対(たい)に、花々(はなばな)として住ませ奉り給ふに、三四の君、裳(も)着(き)せ奉り給はんとて、かしづきそし給ふ。時々通ひ給ひけるわかうどほり腹(ばら)の君とて、母もなき御女(むすめ)おはす。北の方、心やいかゞおはしけん、仕うまつる御達(ごたち)の数にだにおぼさず、寝殿の放出(はなちいで)の、又一間(ひとま)なる所の、落窪(おちくぼ)なる所の、二間(ふたま)なるになん住ませ給ひける。君達(きんだち)ともいはず、御方(おんかた)とはましていはせ給ふべくもあらず。名をつけんとすれば、さすがに、おとゞのおぼす心あるべしとつつみ給ひて、「落窪の君といへ」との給へば、人々もさいふ。おとゞも、ちごよりらうたくや思(おぼ)しつかず成りにけん、まして北の方の御まゝにて、はかなき事おほかりけり。はか
しき人もなく、乳母(めのと)もなかりけり。たゞ、おやのおはしける時より使ひつけたるわらはの、されたる女ぞ、後見(うしろみ)とつけて使ひ給ひける。あはれに思(おも)ひかはして、片時(かたとき)離れず。さるは、この君(きみ)のかたちは、かくかしづき給ふ御女(おんむすめ)どもよりもおとるまじけれど、出(い)で交(まじ)らふことなくて、ある物とも知る人もなし。

しき人もなく、乳母(めのと)もなかりけり。たゞ、おやのおはしける時より使ひつけたるわらはの、されたる女ぞ、後見(うしろみ)とつけて使ひ給ひける。あはれに思(おも)ひかはして、片時(かたとき)離れず。さるは、この君(きみ)のかたちは、かくかしづき給ふ御女(おんむすめ)どもよりもおとるまじけれど、出(い)で交(まじ)らふことなくて、ある物とも知る人もなし。
広辞苑 ページ 24001 での【落窪物語 →落窪物語】単語。