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花月双紙     →花月双紙🔗🔉

花月双紙     →花月双紙  花のこと。  なきときけば、ありといはまほしく、あしきといふをば、よきと事かへていはんこそ、いとねぢけたることなれ。さくらてふはなは、わが国のものなるを、からくににもありとて、さまためしなどひきつくれど、桜かいたるもろこしの画もなく、かなへりとおもふからうたもなければ、なしとこそいふべけれ。いでやさくらといはでしも、はなとだにいへば、こと木にはまぎれぬものを。ほのとあけ行山ぎは、雲かゆきかとばかりさきみちたるも、かすみこめたるゆふまぐれ、花のけはひもおぼろにみえて、こゝにのみくれのこすけしきなどいふは浅かりけり。まゐてうてなののびやかなれば、近劣りするなどいふは、かのことかへてざえおふ心にいふことなりかし。風にちりかふも、雨にぬるゝも、遠山にみるも、軒ばにむかふも、明ぼのも、夕ぐれも、露のひるまも、めかるゝときしなきを、ことにわが国ぶりの姿にて、枝もすなほに、花のかたちもゆたけく、匂ひさへもこちたからぬも、あやしきまでにこそおぼゆるものなれ。さるを、いづこにもありといふはさらなり、曙、夕ぐれなどと、おもしろからんやうにことばそゆるは、いまだ深くそめし心にはあらざりけり。すべて、ことばもていひ尽さんと思ふは、いとあさき心かな。

広辞苑 ページ 24010 での花月双紙     →花月双紙単語。