複数辞典一括検索+![]()
![]()
鹿島紀行 →鹿島紀行🔗⭐🔉
鹿島紀行 →鹿島紀行
洛(らく)の貞室(ていしつ)、須磨のうらの月見にゆきて、「松陰(まつかげ)や月は三五(さんご)や中納言」といひけむ、狂夫のむかしもなつかしきまゝに、このあき、鹿島の山の月見んとおもひたつ事あり。ともなふ人ふたり、浪客(ろうかく)の士ひとり、ひとりは水雲(すいうん)の僧。僧はからすのごとくなる墨のころもに、三衣(さんね)の袋をえりにうちかけ、出山(しゆつざん)の尊像を厨子(ずし)にあがめ入(いれ)テうしろに背負(せおい)、拄杖(しゆじよう)ひきならして、無門の関(かん)もさはるものなく、あめつちに独歩していでぬ。いまひとりは、僧にもあらず、俗にもあらず、鳥鼠(ちようそ)の間(かん)に名をかうぶりの、とりなきしまにもわたりぬべく、門(もん)よりふねにのりて、行徳(ぎようとく)といふところにいたる。
ふねをあがれば、馬にものらず、ほそはぎのちからをためさんと、かちよりぞゆく。甲斐のくによりある人の得させたる、檜(ひのき)もてつくれる笠を、おの
いたゞきよそひて、やはたといふ里をすぐれば、鎌谷(かまがい)の原といふ所、ひろき野あり。秦甸(しんでん)の一千里とかや、めもはるかにみわたさるゝ。筑波山むかふに高く、二峯ならびたてり。かのもろこしに双劔(そうけん)のみねありときこえしは廬山(ろざん)の一隅也。

いたゞきよそひて、やはたといふ里をすぐれば、鎌谷(かまがい)の原といふ所、ひろき野あり。秦甸(しんでん)の一千里とかや、めもはるかにみわたさるゝ。筑波山むかふに高く、二峯ならびたてり。かのもろこしに双劔(そうけん)のみねありときこえしは廬山(ろざん)の一隅也。
広辞苑 ページ 24012 での【鹿島紀行 →鹿島紀行】単語。