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甲子夜話     →甲子夜話🔗🔉

甲子夜話     →甲子夜話 故松平豆州老職勤(つとめ)られ候中、何年の事にか、両番衆の中弓削田(ゆげた)新右衛門と云(いえ)る人、事に因て番頭石河壱岐守宅に於て切腹仰付(おおせつけ)らる。其節検使として往(ゆき)たる御目付某の語(かたり)たると聞(きき)しは、彼(かの)御目付、検使畢(おわ)りし届とて、先づ若年寄某の宅に往たるに、時夜陰に及びたれば、もとより門も鎖(とじ)たるに、此事申達(たつし)ぬれば、門内狼狽せし体(てい)にて、門外に待(まつ)こと良久(ややひさしく)して開門す。玄関の体も、俄に燭をつけ抔(など)せし有様にて有しが、入て其状(そのじよう)を用人に申(もうし)て出(いづ)。是より豆州の宅へ往(ゆく)途中にて、若年寄さへ斯(かく)の如し、定(さだめ)て待こと久(ひさし)かるべしと思(おもい)て彼門に至れば、直に開門す。玄関の中燭台を陳(つら)ね取次(とりつぎ)の侍並居(ならびい)たり。夫より謁(えつ)を通(つうず)れば、即(すなわち)用人出(いで)、豆州対面せらる。其体(そのてい)かねて待居(まちい)たると覚しく、乃(すなわち)検死の状を申述(もうしのべ)たれば、是非もなきことにとの、豆州挨拶なり。因て御目付も感入(かんじいり)て退出せしとぞ。この事諸御旗本中聞伝(つたえ)て、普第(ふだい)の御家人、一家断絶することは、罪あるものさへ、かくまで心留らるゝことよとて、実に忝き心得と申さぬ者はなかりき。

広辞苑 ページ 24013 での甲子夜話     →甲子夜話単語。