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仮名文章娘節用 →仮名文章娘節用🔗⭐🔉
仮名文章娘節用 →仮名文章娘節用
太刀は大山(おおやま)石尊(せきそん)の、さゝげ物に納(おさま)れば長刀(なぎなた)はひやめしの、草履にその名を止(とど)めたり。弓は矢場(やば)のあねさんが、活業(くちすぎ)の助(たね)となれる静けき御代のことになん。斯波(しば)家の藩中に、仮名家文字之進(かなやもじのしん)といへる者あり。二人の男子(なんし)ありけるが兄は文之丞(ぶんのじよう)といひ、弟(おとと)は文次郎と喚(よび)なして、両人ともに文武の道を、常にはげみて勤めしが、兄文之丞はいつしかに、奥づとめの御側(おそば)玉章(たまずさ)といへる容貌(みめ)よき女と人しれず、契りをこめてかたらひしが、日にまし互ひに思ひつのりて、しのび
の密話(ささめごと)に、玉章(たまずさ)はいつか只ならぬ懐妊の身となりけるにぞ、此事今にもあらはれなば、とても添事(そうこと)なりがたしとおもへば二人ひそかにかたらひ、ある夜館(やかた)を忍び出(いで)、すこしのしるべを便(たより)にして、難波(なにわ)をさしてのぼりつゝ、彼地(かなた)此方(こなた)とさまよひて、おもはしからぬ日を送れば、この地にをりても要なきことと、夫(それ)より皇都(みやこ)へおもむきて、三すぢ町のほとりにさゝやかなる家を借(かり)て、学文(がくもん)剣法(けんぽう)の指南をしつ、月日をこゝにおくりしが、もとよりその技(わざ)に勝れたれば、わづかのうちに弟子のあまた付(つい)て繁昌しければ、おのづから金銀の、融通(ゆずう)もよければ、些(ちと)づゝの金を人に貸(かし)などして、その利を取(とり)て不足なく暮すほどに、月満(みち)て妻はやす
と、玉のごとき男子(なんし)を産出(うみいだ)しければ、名を金五郎とよびなして、蝶よ花よとそだつるうち、満(みつ)れば欠(かく)る世のならひ、妻は産後肥立(ひだた)ぬうへに、あしき風を引(ひき)そへて、医療手をつくすといへどもその験(げん)更になく、つひに無常の風にさそはれ、冥途(めいど)の旅におもむきぬ。




広辞苑 ページ 24015 での【仮名文章娘節用 →仮名文章娘節用】単語。