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狭衣物語 →狭衣物語🔗⭐🔉
狭衣物語     →狭衣物語
 少年の春は、惜しめども留(とど)まらぬものなりければ、弥生の廿日(はつか)余(あまり)にもなりぬ。御前(まえ)の木立、何(なに)となく青み渡れる中に、中島の藤は、「松にとのみも」思はず咲きかゝりて、山ほとゝぎす待(まち)顔なるに、池の汀(みぎわ)の八重山吹は、「井手の辺(わたり)にや」と見えたり。「光源氏の、『身も投げつべき』との給(たまい)けんも、かくや」と、独り見給ふも飽かねば、侍(さぶら)ひ童(わらわ)の、おかしげなる、小さきして、一枝(ひとえだ)づつ折らせ給(たまい)て、源氏の宮の御方(かた)に持(も)て参り給へれば、御前には、中納言・中将などいふ人々、絵かき、色どりなどせさせ給(たまい)て、宮は御手習などせさせ給て、添ひふしてぞおはしける。「この花どもの夕映(ゆうばえ)は、常よりもおかしくさぶらふものかな。春宮(とうぐう)の、「盛(さか)りには、必ず見せよ」とのたまはせしものを。いかで、一枝(ひとえだ)御覧(らん)ぜさせてしがな」とて、うち置き給へるを、宮、少し起きあがり給ひて、見をこせ給へる御まみ・つらつきなどの美しさは、花の色々にも、こよなふ優(まさ)り給へるを、例の胸さはぎて、花には目もとまらず、つく
とまぼらせ給ふ。

とまぼらせ給ふ。
広辞苑 ページ 24048 での【狭衣物語 →狭衣物語】単語。