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邪宗門 →邪宗門🔗⭐🔉
邪宗門 →邪宗門
邪宗門秘曲
われは思ふ、末世の邪宗、切支丹でうすの魔法。
黒船の加比丹(かぴたん)を、紅毛(こうもう)の不可思議国を、
色赤きびいどろを、匂(におい)鋭(と)きあんじやべいいる、
南蛮の桟留縞(さんとめじま)を、はた、阿剌吉(あらき)、珍
(ちんた)の酒を。
目見(まみ)青きドミニカびとは陀羅尼(だらに)誦(ず)し夢にも語る、
禁制の宗門神(しん)を、あるはまた、血に染む聖磔(くるす)、
芥子粒(けしつぶ)を林檎のごとく見すといふ欺罔(けれん)の器(うつわ)、
波羅葦僧(はらいそ)の空をも覗く伸び縮む奇(き)なる眼鏡(めがね)を。
屋(いえ)はまた石もて造り、大理石(なめいし)の白き血潮は、
ぎやまんの壺に盛られて夜となれば火点(とも)るといふ。
かの美(は)しき越歴機(えれき)の夢は天鵝絨(びろうど)の薫(くゆり)にまじり、
珍らなる月の世界の鳥獣(とりけもの)映像(うつ)すと聞けり。
あるは聞く、化粧(けわい)の料(しろ)は毒草(どくそう)の花よりしぼり、
腐(くさ)れたる石の油に画くてふ麻利耶(まりや)の像よ、
はた、羅甸(らてん)、波爾杜瓦爾(ぽるとがる)らの横つづり青なる仮名は
美くしき、さいへ悲しき歓楽の音(ね)にかも満つる。
いざさらばわれらに賜へ、幻惑の伴天連尊者(ばてれんそんじや)、
百年(ももとせ)を刹那に縮め、血の磔(はりき)背にし死すとも
惜しからじ、願ふは極秘、かの奇しき紅(くれない)の夢、
善主麿(ぜんすまろ)、今日を祈(いのり)に身も霊(たま)も薫(くゆ)りこがるる。

広辞苑 ページ 24057 での【邪宗門 →邪宗門】単語。