複数辞典一括検索+
心中万年草 →心中万年草🔗⭐🔉
心中万年草 →心中万年草
女嫌(きら)やる。高野(こうや)の山に。なぜに女松(めまつ)は。はゆるぞや。なぜに女松がはへまいならば。夜這星(よばいぼし)でも飛ぶまいか。松より梅より柳より。お寺小姓の稚児桜。稚児文珠の御相伝(そうでん)大師の広め置き給ひ。俗も尊(たつと)む若衆の情(なさけ)。衆道秘密のお山とかや。
南谷(みなみだに)の吉詳院(きちじよういん)に播磨大名の使者有りとて。庭の掃除の下男(しもおとこ)小姓衆は客殿の。床に掛物台子の埃掃(は)いつ拭(のご)ふつ忙しさ。「是長介関介(せきすけ)。掃除が大方出来たらば不動坂まで一走り。お使者が見へるか見て戻りや。急ぎや
」と有りければ。「いやそれは余(よ)の者やらしやりませ。私共は皆様の髪を結(ゆ)はねばなりませぬ。寺方(てらがた)のお小姓は俗の内儀と同じこと。法印様の奥様の髪結はずに済みますか」と。じやれを真受けの顔ひねて。足らぬ心の花之丞。「ムヽそんならこちは法印様と女夫(めおと)か。エヽ在所の父様(とさま)や母様(かかさま)は嘘つきじや。山へ登れば魚(とと)食ふことがならぬほどに。豆腐や菎蒻を鯛や鱧(はむ)じやと思ふて食へ。山の芋を鰻と思へ。法印様を親と思へとばつかりで。女夫(めおと)とは聞かなんだが。アヽ思ひ当つた。おとゝひのお日待に。法印様の相伴(しようばん)で善哉(ぜんざい)餅を十三杯。それから身持ちになつたやら。ぼてれんじや」と腹さすり。


広辞苑 ページ 24069 での【心中万年草 →心中万年草】単語。