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心中宵庚申     →心中宵庚申🔗🔉

心中宵庚申     →心中宵庚申  花のお江戸へ六十里梅の難波へ六十里。百廿里の相(あい)の宿(しゆく)都離れて遠江。浜松の一城主浅山殿の御在国。町屋々々 (あきない)に撓(たゆ)みなく。武士は弓馬に怠らず日まぜのお鷹狩。上一人の励みより犬も油断はならざりし。お家相伝の弓頭坂部郷(ごう)左衛門。六十(むそじ)の皺の夜昼なく。お側去らずの野出頭(のしゆつとう)今日も鷹野のお供にて。留主の屋敷は大手の見附お鷹帰りの御入とて。昼当場(ひるとうば)より先(さき)案内給人(きゆうにん)若党お出入の町人まで。降って涌いたる忙しさ。お成座敷の替畳。床に掛物台子の埃掃(は)いつ拭(のご)うつ。お庭の掃除どっさ草引く薄茶挽(ひ)く。茶道(さどう)は引木に揉まるゝ。実(げ)に誠忘れたりとよ。門の盛砂(もりずな)。小者は箒(ははき)に揉まるゝ。台所の板本(いたもと)には青物の淵(ふち)魚鳥(ぎよちよう)の山。献立(こんたて)は三汁九菜おちた肴を吟味の役人。こりゃめでたいを三枚におろし山葵(わさび)は八百屋が請取。南京(なんきん)の皿蒔絵の家具。善(ぜん)尽したるもてなしなり。組下の二番生(ばえ)金田甚蔵岡軍(ぐん)右衛門大橋逸平。打揃うたる血気盛(ざかり)立掛けのんこの頭(あたま)がち。裙(すそ)はお留主の勝手見廻(みまい)。いづれも御苦労々々々。今日お鷹野よりすぐお腰掛けらるゝとな。急なお成でさぞ取込。お料理組もう出来たか早し。我々も幸ひ非番。用あらば遠慮無用と挨拶口々。座敷口より小姓山脇小七郎。生花屑を花盆に。花の露うく前髪盛(ざかり)すると立出で。是は日比(ひごろ)の御懇意。お揃ひなされての御出で。主人郷左衛門さぞ満足。只今の殿様先代と違ひ。何かに付けて軽いお身持。壁に馬乗りかけし今日のお成。主人はお供我々が当惑掃除等もそこ。書院の筆架(ひつか)飾(かざり)石。生花も手づゝながら間に合するも奉公。御内見の上御直し下されと詞も風(ふう)も出過ぎざる。

広辞苑 ページ 24070 での心中宵庚申     →心中宵庚申単語。