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当世書生気質 →当世書生気質🔗⭐🔉
当世書生気質 →当世書生気質
さま
に移れば変る浮世かな。幕府さかえし時勢(ころおい)には、武士のみ時に大江戸の、都もいつか東京と、名もあらたまの年毎に、開けゆく世の余沢(かげ)なれや。貴賤上下の差別(けじめ)もなく、才あるものは用ひられ、名を挙げ身さへたちまちに、黒塗馬車にのり売の、息子も鬚を貯ふれば、何の小路といかめしき、名前ながらに大通路(おおどおり)を、走る公家衆(くげしゆ)の車夫(くるまや)あり。栄枯盛衰いろ
に、定めなき世も智慧あれば、どうか生活(くらし)はたつか弓、春めくあれば霜枯の、不景気に泣く商人あり。十人集れば十色なる、心づくしや陸奥人(みちのくびと)も、慾あればこそ都路へ、栄利もとめて集ひ来る、富も才智も輻湊の、大都会とて四方より、入こむ人もさま
なる、中にも別(わけ)て数多きは、人力車夫と学生なり。おの
其数六万とは、七年以前の推測計算方(おしあてかんじよう)。今はそれにも越えたるべし。到る処に車夫あり、赴く所に学生あり。彼処に下宿所(げしゆくどこ)の招牌(かんばん)あれば、此方に人力屋の行灯あり。横町に英学の私塾あれば、十字街(よつつじ)に客待の人車あり。失敬の挨拶は、ごつさいの掛声に和し、日和下駄の痕は、人車の轍にまじはる。実にすさまじき書生の流行、またおそろしき車の繁昌。








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