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難波土産 →難波土産🔗⭐🔉
難波土産 →難波土産
往年某(それがし)近松が許(もと)にとむらひける比(ころ)、近松云(いい)けるは、惣じて浄るりは人形にかゝるを第一とすれば、外(ほか)の草紙と違(たが)ひて、文句みな働(はたらき)を肝要とする活物(いきもの)なり。殊に哥舞妓の生身(しようしん)の人の芸と、芝居の軒(のき)をならべてなすわざなるに、正根(しようね)なき木偶(にんぎよう)にさま
の情(じよう)をもたせて見物の感をとらんとする事なれば、大形(おおかた)にては妙作といふに至りがたし。某(それがし)わかき時、大内(おおうち)の草紙を見侍る中に、節会(せちえ)の折ふし雪いたうふりつもりけるに、衛士にあふせて橘の雪はらはせられければ、傍(かたえ)なる松の枝もたはゝなるが、うらめしげにはね返りて、とかけり。是(これ)心なき草木(そうもく)を開眼したる筆勢也。その故は、橘の雪をはらはせらるゝを、松がうらやみて、おのれと枝をはねかへして、たはゝなる雪を刎(はね)おとして恨たるけしき、さながら活(いき)て働く心地ならずや。是を手本として我(わが)浄るりの精神(しようね)をいるゝ事を悟れり。されば地文句(じもんく)せりふ事はいふに及ばず、道行なんどの風景をのぶる文句も、情(じよう)をこむるを肝要とせざれば、かならず感心のうすきもの也。詩人の興象(きようしよう)といへるも同事(どうじ)にて、たとへば松島宮島の絶景を詩に賦しても、打詠(うちながめ)て賞するの情をもたずしては、いたづらに画(えが)ける美女を見る如くならん。この故に、文句は情をもとゝすと心得べし。


広辞苑 ページ 24094 での【難波土産 →難波土産】単語。