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堀川波鼓     →堀川波鼓🔗🔉

堀川波鼓     →堀川波鼓  さても行平三年(みとせ)が程。御徒然(つれづれ)の御舟遊(みふねあそび)。月に心は須磨の浦夜潮(よしお)を運ぶ蜑(あま)乙女に。姉妹(おとどい)選ばれ参らせつゝ。折にふれたる名なれやとて。松風村雨と召されしより。月にも馴るゝ須磨の蜑(あま)の。塩焼衣色かへて。縑(かとり)の衣(きぬ)の空薫(そらだき)なり。それは塩焼く蜑衣(あまごろも)是は夫(おつと)の江戸詰の。留主(るす)の仕事の張物や妹(いもと)のお藤は折よくも。幸(さいわい)の里帰りサア手伝と木綿(ゆう)襷。糊付け絞る姉妹(おとどい)の袖雫垂(しずくだ)る風俗は。国に名取の濡者と。聞えしもさることぞかし。いやなうお藤。必ずお主(しゆう)の気に入っていつまでも奉公しや。男やなんど持ちゃんなや身に抓(つ)みてこそ知られたれ。彦九郎殿とは様子ある夫婦故。嫁入(よめり)の時の嬉しさは譬へん方もなかりしが。小身人(しようしんびと)の悲しさは隔年のお江戸詰。お国に居ては毎日の御城詰。 月に十日の泊番夫婦らしうしっぽりと。いつ語ひし夜半もなしされども主(ぬし)は侍気。かう勤めねば侍の立身がならぬとて。心強うはいひながら去年(こぞ)六月の江戸立(えどだち)には。又来年の五月にお供して。下るまでは逢はれぬぞや無事でゐよよう留主(るす)せよとの(かお)つきが。目にちろと見るやうでほんに忘るゝ隙もない。ふだん恋してゐるやうでいつかと松の木に。衣張(きぬばり)結び細引(びき)の言うて思や晴すらん。

広辞苑 ページ 24113 での堀川波鼓     →堀川波鼓単語。