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門     →門🔗🔉

     →門  宗助(そうすけ)は先刻(さつき)から縁側へ坐蒲団(ざぶとん)を持ち出して日当りの好さそうな所へ気楽に胡坐(あぐら)をかいて見たが、やがて手に持っている雑誌を放り出すと共に、ごろりと横になった。秋日和と名のつくほどの上天気なので、往来を行く人の下駄の響が、静かな町だけに、朗らかに聞えて来る。肱枕(ひじまくら)をして軒から上を見上ると、奇麗な空が一面に蒼く澄んでいる。その空が自分の寐(ね)ている縁側の窮屈な寸法に較べて見ると、非常に広大である。たまの日曜にこうして緩(ゆつ)くり空を見るだけでも大分違うなと思いながら、眉を寄せて、ぎらぎらする日を少時(しばらく)見詰めていたが、眩(まぼ)しくなったので、今度はぐるりと寐返りをして障子の方を向いた。障子の中では細君が裁縫(しごと)をしている。  「おい、好(い)い天気だな」と話し掛けた。細君は、  「ええ」といったなりであった。宗助も別に話がしたい訳でもなかったと見えて、それなり黙ってしまった。しばらくすると今度は細君の方から、  「ちっと散歩でもしていらっしゃい」といった。しかしその時は宗助がただうんという生返事を返しただけであった。

広辞苑 ページ 24121 での門     →門単語。