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鑓の権三重帷子 →鑓の権三重帷子🔗⭐🔉
鑓の権三重帷子 →鑓の権三重帷子
君(きみ)八千代、国は治まる御留守にも、弓馬(きゆうば)たしなむ梓弓、馬の庭乗遠乗と、遥に出でし浜の宮、鳥居通りの流鏑馬(やぶさめ)馬場、並木に落つる風の音、とどろ
と打つ波も、乗分けつべき器量こそ、表小姓の数々の、中にも笹の権三(ごんざ)とて、武芸の誉世の人に、鑓(やり)の権三は伊達者の、どうでも権三は好(よ)い男、謡ひ囃らす美男草(びなんそう)、女若(によにやく)二つの恋草を、飼ひにかうたる月毛の駒、前脚(ずね)とつてかん強く、雪噛み砕く白泡(しらあわ)に、三焦(さんしよう)よしや尾は青柳の、しつたりしたりした
した、かつしかつしと歩まする、大坪流の鞍の内、稽古に心染手綱(そめたづな)、掻(かい)繰り
乗り拍子、「はい。」とかけたる一(ひと)声に、両口(もろぐち)放す奴(やつこ)が髭も、共に跳ねたる駿足や、袴の裾に風受けて、小波(さざなみ)寄する須弥の髪、しつ
しつと乗戻し、引廻し乗る袖摺(そですり)の、松も女松(めまつ)の十八公、其年頃の振袖の、京染模様菅笠は、家中で誰の娘ぞや。お乳母らしいが小風呂敷、権三見る眼の糸薄、ちらりほらりと馬の先、除(よ)ける振して邪魔をする。権三それぞと見し人の、心に覚え荒駒も、色にそばへて足早き、はい
声をかごとにて、馬ぞ迷惑痴話の鞭、打ちくれ
駈けさする、轡の音ははりりんりん、泥障(あおり)の音はばた
ばた。叩く嵐や馬場先の、すゝの笹原さら
、さら
さつと乗飛び乗飛び
乗飛ばせ、蹄(ひづめ)を陸地(ろくじ)につけばこそ、二町五反の馬場の内、息をもつがず半時許、達者を見せてぞ。せめ馬の、鞍も鐙も汗になり、乗止むれば小者(こもの)馬取(うまとり)、「もうお仕舞か。」と走り寄る。




















広辞苑 ページ 24124 での【鑓の権三重帷子 →鑓の権三重帷子】単語。