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立正安国論 →立正安国論🔗⭐🔉
立正安国論 →立正安国論
旅客来(きた)つて嘆いて曰く、「近年より近日に至るまで、天変・地夭(ちよう)・飢饉・疫癘、遍く天下(てんが)に満ち、広く地上に迸(はびこ)る。牛馬巷(ちまた)に斃(たお)れ、骸骨路(みち)に充てり。死を招くの輩(ともがら)、既に大半を超え、之を悲しまざるの族(やから)、敢て一人(いちにん)もなし。然る間、或は「利剣即是」の文(もん)を専らにして、西土教主(さいどきようしゆ)の名を唱へ、或は「衆病悉除」の願(がん)を恃(たの)んで、東方如来の経を誦(じゆ)し、或は「病即消滅、不老不死」の詞(ことば)を仰いで、法華真実の妙文(みようもん)を崇め、或は「七難即滅、七福即生」の句を信じて、百座百講の儀を調へ、有(あるい)は秘密真言の教(きよう)に因つて、五瓶(ごびよう)の水を灑(そそ)ぎ、有(あるい)は坐禅入定の儀を全うして、空観(くうがん)の月を澄まし、若しくは七鬼神の号を書して、千門に押し、若しくは五大力の形を図して、万戸に懸け、若しくは天神地祇を拝して、四角四堺の祭祀を企て、若しくは万民百姓を哀れみて、国主国宰の徳政を行ふ。然りと雖も、唯肝胆を摧(くだ)くのみにして、弥(いよいよ)飢疫(けやく)逼(せま)る。乞客(こつかく)目に溢れ、死人眼(まなこ)に満てり。
広辞苑 ページ 24130 での【立正安国論 →立正安国論】単語。