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路傍の石 →路傍の石🔗⭐🔉
路傍の石 →路傍の石
そのとき、吾一は学校から帰ったばかりだった。はかまをぬいでいるところへ、おとっつぁんが、ひょっこり帰ってきた。おとっつぁんは、彼に銅貨を一つ渡して、焼きイモを買ってこいと言った。よっぽど腹がすいているらしく、いやにせかせかしていた。
吾一は、急いで路地を駆けだして行った。
ちょうど、おやつの時刻だったので、焼きイモ屋の店さきは、ふろしきを持った小僧だの、オカモチをさげた女中だのが、黒びかりのする、大きなカマの前に、いっぱい立っていた。なかなか順がまわってこないので、吾一はいらいらしたが、やっと、彼の番になった。
「おつぎは、おいくら。」
イモ屋のおやじは長い竹のハシを動かしながら、忙しそうに言った。
大きな店の小僧たちが、十銭も二十銭も買って行くなかで、少しばかり買うのは、吾一はなんとなく、きまりが悪かった。彼はちいさな声で、「一銭。」と言った。
「おいきた。」
主人は威勢よく答えて、カマの中から、なれた手つきで、ひょいひょいとイモをはさみあげた。
広辞苑 ページ 24132 での【路傍の石 →路傍の石】単語。