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折たく柴の記 →折たく柴の記🔗⭐🔉
折たく柴の記 →折たく柴の記
(序)むかし人は、いふべき事あればうちいひて、その余はみだりにものいはず、いふべき事をも、いかにもことば多からで、其義を尽したりけり。我父母にてありし人々もかくぞおはしける。(中略)かくおはせしかば、あはれ、問まいらせばやとおもふ事も、いひ出がたくして、うちすぐる程に、うせ給ひしかば、さてやみぬる事のみぞ多かる。よのつねの事共は、さてもやあるべき。おやおうぢの御事、詳ならざりし事こそくやしけれど、今はとふべき人とてもなし。此事のくやしさに、我子共も、また、我ごとくの事ありなん事をしりぬ。今はいとまある身となりぬ。心に思ひ出るおり
、すぎにし事共、そこはかとなく、しるしをきぬ。外ざまの人の見るべきものにもあらねば、ことばのつたなきをも、事のわづらはしきをも、えらぶべしやは。
(上)父にておはせし人は、四歳にして母にをくれ、九歳にして父にをくれ給ひしかば、「父母の御事、詳なる事はしらぬ也」と仰られき。我祖父をば勘解由殿と申し、祖母にておはせし御事は、染屋の何某の女也。ふたりながら常陸国下妻庄にてうせ給ひぬ。新井といふはもと上野国の源氏にて、染屋はもと相模国の藤氏なるに、いかなる故によりてか、常陸国には移り給ひぬらむ。(下略)
〈日本古典文学大系〉


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