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海国兵談     →海国兵談🔗🔉

海国兵談     →海国兵談 (自序)海国とハ何の謂ぞ、曰、地続の隣国無して四方皆海に沿ル国を謂也。然ルに海国にハ海国相当の武備有て、唐山の軍書及ビ日本にて古今伝授する諸流の説ト品替れる也。此わけを知ざれば、日本の武術とハ云かたし。先海国ハ外寇の来リ易キわけあり、亦来リ難キいわれもあり。其来リ易シといふハ、軍艦に乗じて順風を得レば日本道二三百里の遠海も一二日に走リ来ル也。此如ク来リ易キわけあるゆへ、此備を設ざれば叶ざる事也。亦来難シといふいわれは四方皆大海の険ある故、妄リに来リ得ざるなり。しかれども其険を恃て、備に怠ル事なかれ。是に付て思へば日本の武備ハ外寇を防グ術を知ルこと、指当ての急務なるべし。さて外寇を防グの術ハ水戦にあり、水戦の要ハ大銃にあり。此二ツを能調度する事、日本武備の正味にして、唐山韃靼等の山国ト、軍政の殊なる所なり。これを知て然して後、陸戦の事に及ブべし。惜哉大江匡房を始トして、楠正成、甲越二子の如キ、世に軍の名人ト称するも其根元、唐山の軍書を宗トして、稽古ありし人々なれバ、皆唐山流の軍理のミ伝授して、海国の議に及べる人なし、是其一を知て、其二を知ざるに似たり。今小子海国兵談を作て、水戦を以て開巻第一義に述ス、是海国武備の根本なるがゆへなり。      水 戦 海国の武備ハ海辺にあり。海辺の兵法は水戦にあり。水戦の要は大銃にあり。是海国自然の兵制也。然ル故に此篇ヲ以て開巻第一義に挙ル事、深意ある也。尋常の兵書ト同日の義にあらずと知べし。(中略) ○窃に憶へば当時長崎に厳重に石火矢の備有て、却て安房、相模の海港に其備なし。此事甚不審。細カに思へば江戸の日本橋より唐、阿蘭陀迄境なしの水路也。然ルを此に備へずして長崎にのミ備ルは何ぞや。小子が見を以てせば安房、相模の両国に諸侯を置て、入海の瀬戸に厳重の備を設ケ度事也。日本の惣海岸に備ル事ハ、先此港口(みなと)を以て始ト為べし。是海国武備の中の又肝要なる所也。然ト云とも忌諱を顧みずして有の儘に言フハ不敬也。言はざるハ亦不忠也。此故に独夫、罪を憚らずして以て書ス。(下略)                                 〈岩波文庫〉

広辞苑 ページ 24196 での海国兵談     →海国兵談単語。