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鳩翁道話 →鳩翁道話🔗⭐🔉
鳩翁道話 →鳩翁道話
(上略)聖人の道も、チンプンカンでは、女中や子ども衆の耳に通ぜぬ。心学道話は、識者のためにまふけました事ではござりませぬ。たゞ家業におはれて、隙のない御百姓や町人衆へ、聖人の道ある事をおしらせ申たいと、先師の志でござりまするゆゑ、随分詞をひらたうして、譬をとり、あるひはおとし話をいたして、理に近い事は、神道でも仏道でも、何でもかでも、取こんでおはなし申ます。かならず軽口ばなしのやうなと、御笑ひ下されな。これは本意ではござらねども、たゞ通じ安いやうに申すのでござります。
時に仁と申事は、畢竟トント無理のないと申す事でござります。此無理のないのが、則ち人の心じやと、孟子は仰せられました。此無理のない心をもつて、親につかへますると孝行になり、主につかへますると忠になり、夫婦・兄弟・朋友の間も又々此通りで、五倫の道は、やすらかに調ひます。其無理のない仕様は、親は親のあるべきやう、子は子のあるべきやう、夫はをつとのあるべきやう、女房は女房のあるべきやう、此あるべきやうが、無理のないところで、則ち仁なり、又人の心でござります。たとへて申さば、此扇は誰が見ても扇じや。扇としつて、これで鼻汁かむ人も、尻ぬぐふ人もない。これは是扇のあるべきやう、礼儀に御もちひなされるか、開いて風をもとめる歟、この外に仕様はない。(下略)
〈日本思想大系42〉
広辞苑 ページ 24201 での【鳩翁道話 →鳩翁道話】単語。