複数辞典一括検索+
言志録 →言志録🔗⭐🔉
言志録 →言志録
1 凡そ天地間の事は、古往今来・陰陽昼夜、日月代(こもごも)明るく、四時錯(たが)ひに行(めぐ)り、その数皆前に定まる。人の富貴貧賤・死生寿殀・利害栄辱・聚散離合に至るも、一定の数に非ざるはなし。殊に未だこれを前知せざるのみ。譬ふるに、猶ほ傀儡の戯の、機関已に具(そな)はりて、而も観る者知らざるがごとし。世人、そのかくの如きを悟らず、己の知力恃むに足ると以為(おも)ひて、終身役役と東索西求し、遂に悴労して以て斃る。これまた惑ふことの甚だしきなり。〈文化癸酉五月念六日録す。〉
3 凡そ事を作(な)すには、須(すべか)らく天に事(つか)ふるの心あるを要すべし、人に示すの念あるを要せず。
4 天道は漸を以て運(めぐ)り、人事は漸を以て変ず。必至の勢は、これを却けて遠ざからしむる能はず、またこれを促して速やかならしむる能はず。
6 学は立志より要なるはなし。而して立志はまたこれを強ふるに非ず。只本心の好む所に従ふのみ。
7 立志の功は、恥を知るを以て要と為す。
8 性分の本然を尽し、職分の当然を務む。かくの如きのみ。
10 人は須らく自ら省察すべし、天は何の故に我が身を生み出し、我をして果して何の用に供せしむる。我既に天物なれば、必ず天役あり。天役共せずんば、天の咎必ず至らん、を。省察ここに到れば、則ち我が身の苟(かりそめ)に生く可からざるを知る。
13 学を為す、故に書を読む。
27 真に大志ある者は、克く小物を勤む。真に遠き慮(おもんぱかり)ある者は、細事を忽(おろそ)かにせず。
32 緊(かた)くこの志を立てて、以てこれを求むるは、薪を搬(はこ)び水を運ぶといへども、またこれ学の在る所、況や書を読み理を窮むるをや。志の立たざるは、終日読書に従事するも、また唯これ閑事なるのみ。故に学を為すには立志より尚(とうと)きはなし。
33 志あるの士は利刃の如し、百邪も辟易す。志なきの人は鈍刀の如し、童蒙も侮翫す。
34 少年の時は、当に老成の工夫を着くべし。老成の時は、当に少年の志気を存すべし。
58 山岳に登り、川海を渉り、数十百里を走り、時ありてか露宿して寐ねず、時ありてか饑ゑて食らはず、寒に衣(き)ず。これぞこれ多少実際の学問。夫(か)の徒らに爾(か)く明窓浄几にて香を焚き書を読むが若(ごと)きは、恐らくは力を得る処少なし。
61 一芸の士、皆語る可し。
62 凡そ人と語るに、須らく渠(かれ)をしてその長ずる所を説かしむべし。我において益あり。
64 才は猶ほ剣のごとし。善くこれを用ふれば、則ち以て身を衛(まも)るに足る。善くこれを用ひざれば、則ち以て身を殺すに足る。
〈日本思想大系46〉
広辞苑 ページ 24203 での【言志録 →言志録】単語。