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日本の下層社会     →日本の下層社会🔗🔉

日本の下層社会     →日本の下層社会  歯入はこの頃は日に二、三十銭を得、羅宇(らお)のすげかえは二十銭の上を出づること難し。  芸人に至りては大道講釈・大道軽業・かっぽれ・ちょぼくれ・辻三味線等種類多く、大道軽業の如き時に四、五円を得ることありといえども、毎日は収益なく、辻三味線の如きは二十銭の上に出づること極めて難し。  これを以て見るに多きは四、五十銭に出づるはありといえども、屑拾・芸人の如きは二十銭以下十五銭内外なりとすれば、いかにしてかれらは生活するものぞ。今試みに日用生活の費用を挙ぐれば、   米代 二十八銭六厘  石油代 八厘   薪代 二銭五厘    炭代 三銭   朝の汁 二銭     家賃 四銭   オカズ 五銭     合計四十五銭九厘  これ昨年十二月、一人の老婆、二人の子供を有(も)てる人力車夫につきて調査せる生計費用とす。かれらが生活費用の一に加うべき酒代は加えざるなり。衣服の費用、煙草代および子供の小遣も未だこれを加えず。更に新網の一芸人につき査(しら)べたるを挙ぐれば、   米代(一升二合) 十七銭  酒代 三銭   薪炭代 二銭        煙草代 七厘   肴代 四銭         石油代 五厘   子供の小遣 一銭      布団損料但し四幅布団二枚 二銭六厘   家賃 二銭五厘       合計三十三銭三厘  これ夫婦に一人の子供を有てるものの一日生計費用なり。右の如き果敢(はか)なき生活を送りてなお三十三銭三厘を費す。大道軽業の如き、あるいは可なり。屑拾もしくは一般芸人は決して堪うべからざるなり。ただ内職仕事と残飯とによりて少しく生活の窮迫を寛(ゆる)うするを得べきのみ。                                 〈岩波文庫〉

広辞苑 ページ 24251 での日本の下層社会     →日本の下層社会単語。