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貧窮問答歌(山上憶良) →貧窮問答歌🔗⭐🔉
貧窮問答歌(山上憶良) →貧窮問答歌
風雑(まじ)へ 雨降る夜(よ)の 雨雑へ 雪降る夜は 術(すべ)もなく
寒くしあれば 堅塩(かたしお)を 取りつづしろひ 糟湯酒(かすゆざけ)
うち啜(すす)ろひて 咳(しわぶ)かひ 鼻びしびしに しかとあらぬ
鬚(ひげ)かき撫でて 我(あれ)を除(お)きて 人は在らじと 誇ろへど
寒くしあれば 麻衾(あさぶすま) 引き被(かがふ)り 布肩衣(ぬのかたぎぬ)
有りのことごと 服襲(きそ)へども 寒き夜すらを 我(われ)よりも
貧しき人の 父母は 飢ゑ寒(こご)ゆらむ 妻子(めこ)どもは
吟(によ)び泣くらむ 此の時は 如何(いか)にしつつか
汝(な)が世は渡る
天地は 広しといへど 吾(あ)が為(ため)は 狭(さ)くやなりぬる
日月(ひつき)は 明(あか)しといへど 吾(あ)が為は 照りや給はぬ
人皆か 吾(あれ)のみや然る わくらばに 人とはあるを
人並(ひとなみ)に 吾(あれ)も作るを 綿も無き 布肩衣の
海松(みる)の如(ごと) わわけさがれる 襤褸(かかふ)のみ
肩にうち懸け 伏廬(ふせいお)の 曲廬(まげいお)の内に 直土(ひたつち)に
藁解き敷きて 父母は 枕の方に 妻子(めこ)どもは 足(あと)の方に
囲み居て 憂え吟(さまよ)ひ 竈(かまど)には 火気(ほけ)ふき立てず
甑(こしき)には 蜘蛛(くも)の巣懸(か)きて 飯(いい)炊(かし)く
事も忘れて ぬえどりの 呻吟(のどよ)ひ居(お)るに いとのきて
短き物を 端(はし)截(き)ると 云へるが如く 楚(しもと)取る
里長(さとおさ)が声は 寝屋戸(ねやど)まで 来立ち呼ばひぬ
斯くばかり 術(すべ)無きものか 世間(よのなか)の道
世間(よのなか)を憂(う)しとやさしと思へども
飛び立ちかねつ鳥にしあらねば
〈日本古典文学大系〉万葉集・巻5−892・893
広辞苑 ページ 24275 での【貧窮問答歌 →貧窮問答歌】単語。