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高野聖 →高野聖🔗⭐🔉
高野聖 →高野聖
「参謀本部編纂の地図を又繰開いて見るでもなからう、と思つたけれども、余りの道じやから、手を触るさへ暑くるしい、旅の法衣(ころも)の袖をかゝげて、表紙を附けた折本になつてるのを引張り出した。
飛騨から信州へ越える深山の間道で、丁度立休らはうといふ一本の樹立も無い、右も左も山ばかりぢや、手を伸ばすと達(とど)きさうな峰があると、其の峰へ峰が乗り、巓(いただき)が被さつて、飛ぶ鳥も見えず、雲の形も見えぬ。
道と空との間に唯一人我ばかり、凡そ正午と覚しい極熱の太陽の色も白いほどに冴え返つた光線を、深々と戴いた一重の桧笠に凌いで、恁(こ)う図面を見た。」
旅僧は然(そ)ういつて、握拳を両方枕に乗せ、其で額を支へながら俯向いた。
道連になつた上人は、名古屋から此の越前敦賀の旅篭屋に来て、今しがた枕に就いた時まで、私が知つている限り余り仰向けになつたことのない、詰り傲然として物を見ない質の人物である。
広辞苑 ページ 24291 での【高野聖 →高野聖】単語。