複数辞典一括検索+

山椒大夫     →山椒大夫🔗🔉

山椒大夫     →山椒大夫 越後の春日を経て今津へ出る道を、珍らしい旅人の一群が歩いてゐる。母は三十歳を踰えたばかりの女で、二人の子供を連れてゐる。姉は十四、弟は十二である。それに四十位の女中が一人附いて、草臥(くたび)れた同胞二人を、「もうぢきにお宿にお著(つき)なさいます」と云つて励まして歩かせようとする。二人の中で、姉娘は足を引き摩るやうにして歩いてゐるが、それでも気が勝つてゐて、疲れたのを母や弟に知らせまいとして、折々思ひ出したやうに弾力のある歩附をして見せる。近い道を物詣にでも歩くのなら、ふさはしくも見えさうな一群であるが、笠やら杖やら甲斐々々しい出立(いでたち)をしてゐるのが、誰の目にも珍らしく、又気の毒に感ぜられるのである。 道は百姓家の断えたり続いたりする間を通つてゐる。砂や小石は多いが、秋日和に好く乾いて、しかも粘土が雑つてゐるために、好く固まつてゐて、海の傍のやうに踝を埋めて人を悩ますことはない。

広辞苑 ページ 24295 での山椒大夫     →山椒大夫単語。