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三四郎     →三四郎🔗🔉

三四郎     →三四郎 うとうととして眼が覚めると女は何時の間にか、隣の爺さんと話を始めている。この爺さんは慥(たし)かに前の前の駅から乗った田舎者である。発車間際に頓狂な声を出して、馳け込んで来て、いきなり肌を抜いだと思ったら脊中に御灸の痕が一杯あったので、三四郎の記憶に残っている。爺さんが汗を拭(ふ)いて、肌を入れて、女の隣りに腰を懸けたまでよく注意して見ていた位である。 女とは京都からの相乗である。乗った時から三四郎の眼に着いた。第一色が黒い。三四郎は九州から山陽線に移って、段々京大阪へ近付いてくるうちに、女の色が次第に白くなるので何時の間にか故郷を遠退(とおの)くような憐れを感じていた。それでこの女が車室に這入って来た時は、何となく異性の味方を得た心持がした。この女の色は実際九州色であった。

広辞苑 ページ 24295 での三四郎     →三四郎単語。