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藤村詩集     →島崎藤村🔗🔉

藤村詩集     →島崎藤村 自序 若菜集、一葉舟、夏草、落梅集の四巻 をまとめて合本の詩集をつくり時に 遂に、新しき詩歌の時は来りぬ。 そはうつくしき曙のごとくなりき。あるものは古の預言者の如く叫びあるものは西の詩人のごとくに呼ばゝり、いづれも明光と新声と空想とに酔へるがごとくなりき。 うらわかき想像は長き眠りより覚めて、民俗の言葉を飾れり。 伝説はふたゝびよみがへりぬ。自然はふたゝび新しき色を帯びぬ。 明光はまのあたりなる生と死とを照せり、過去の壮大と衰頽とを照せり。 新しきうたびとの群の多くは、たゞ穆実なる青年なりき。その芸術は幼稚なりき、不完全なりき、されどまた偽りも飾りもなかりき。青春のいのちはかれらの口唇にあふれ、感激の涙はかれらの頬をつたひしなり。こゝろみに思へ、清新横溢なる思潮は幾多の青年をして殆ど寝食を忘れしめたるを。また思へ、近代の悲哀と煩悶とは幾多の青年をして狂せしめたるを。われも拙き身を忘れて、この新しきうたびとの声に和しぬ。

広辞苑 ページ 24301 での藤村詩集     →島崎藤村単語。