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が🔗⭐🔉
が
[一]〔助詞〕
➊(格助詞)
①体言及び体言に準ずる語に付く。連体格を示す。前の体言が後の体言に所有・所属などの関係で続くことを示す。同じ連体格に「の」があるが、「が」は、前の体言に「我わ」を始めとして話し手側の人間を受けることが多く、能動的主体としてとらえる。「の」に比べ、低い敬意で遇するととらえられることもある。→の。
㋐所有・所属を示す。後の体言が省略された形で使われる場合もある。古事記上「太刀―緒」。万葉集5「妹―心のすべもすべなさ」。万葉集5「笞しもと取る里長さとおさ―声は」。万葉集17「なでしこ―花」。平家物語2「しやつ―首」。「我―国の経済発展」。古今和歌集秋「この歌はある人のいはく、柿本人麿―なりと」。宇治拾遺物語1「いかなれば、四条大納言のはめでたく、兼久―はわろかるべきぞ」
㋑後に来る語の数値を具体的に示す。源氏物語若菜上「三日―程は夜がれなく渡り給ふを」。歌舞伎、好色伝受「一貫―酒を売りたさに」
㋒体言、活用語の連体形に付き、下の「ごと」「ごとし」「まにまに」「からに」「むた」などの形式名詞の内容を示す。万葉集3「咲く花の匂ふ―ごとく今盛りなり」。万葉集6「一重山超ゆる―からに」。万葉集20「草―共むた寝む妹無しにして」。宝物集「臨終に見欲を起さじ―ために」
②後に述べることをもたらしたものを示す。
㋐それを生み出したものを取り出して示す。一般には主語を示すとするが、主語を述語の主体ととらえるとすると、主体とならない「私が歯を抜いた病院」のような言い方もある。日本語では具体的な内容の語に付くのが本来で、「運命が私の一生を変えた」の「運命」のような抽象名詞に付くのは明治以降の言い方。古くは述語が連体形となったり、条件句であったりなど、従属節の中で用いられた。中世に終止形で言い切る文でも使うようになった。同じように主語を示す働きのある「は」との違いを、「が」は主語を示し、「は」は題目を示す、あるいは、「が」は初出の情報を示す、「は」は既出の情報を示す等と区別する説もある。(i)(多く話し手を指示する語に付く)自ら進んでそれをもたらしたものを示す。話し手以外に付く時は、進んでそれをしたとして責める思いのこもることがある。源氏物語若紫「雀の子を犬君―逃がしつる」。「君が黙っているなら、私―言う」「誰も行かないから、彼―行った」「私―コーヒーだ」(ii)(話し手以外に付いて)話し手が関わらずに起こった事態のもとになったものを示す。古事記上「青山に日―隠らば」。万葉集3「吾妹子―植ゑし梅の樹見るごとに心むせつつ涙し流る」。源氏物語桐壺「いとやんごとなき際にはあらぬ―すぐれて時めきたまふありけり」。徒然草「この文、清行―書けり」。「雨―降って来た」「海―美しい」「彼―山田さんだ」「油―切らしてある」「急に予定―変更した」
㋑後の情意を表す形容詞、可能の表現などに続け、その原因・条件となったことを示す。述語の対象を示すととらえる説もある。現代語では「が」の代りに「を」の使われることもある。万葉集20「母を離れて行く―悲しさ」。天草本平家物語「平家の由来―聞きたいほどに」。浄瑠璃、鑓の権三重帷子「早い―好きなら、この舟、初夜が鳴ると出します」。浄瑠璃、心中宵庚申「若いものの人中へつら―出されませうか」。「故郷―恋しい」「この本―私には面白い」「歩くの―楽しい」「本―買える」
③活用語の連体形に付いて、その動作主体との位置関係を表す。万葉集20「白波の八重折る―上に」。源氏物語桐壺「高麗人の参れる―中に」
④後の「も」と呼応して「…が…でも」の意。源氏物語葵「三つ―一つにても、あらむかし」。浄瑠璃、傾城無間鐘「いつ―いつまでも」。歌舞伎、傾城浅間嶽「銀かねがすまぬ間は、五年―十年でも」
⑤(後に続くべき語句を省略して)驚きや非難の意を込めて示す。狂言、長光「あのすつぱめ―。あの横着者め―」。「あの人―。信じられない」
⑥代価を表す語を受けて、それ相当の分量を表す。「…分」の意。黄表紙、廬生夢魂其前日「緑青と丹を三十二文―買つて来い」
➋(接続助詞)活用語の連体形を受ける。➊2㋑の用法から、前後の句の動作主体の異なる例が出て来て成立した。
①前後の句を接続し、共存的事実を示す。「…ところ」などの意。今昔物語集16「巳の時ばかりなりける―、日も漸く暮れぬ」。狂言、萩大名「下京辺によい庭をもたれた御方のござる―、これに唯今宮城野の萩が盛りでござる」。「きのうお訪ねしました―、たいそうお元気でしたよ」
②転じて、前後が反対の結果になり、食い違う事柄に移行したりする意を表す。「…けれども」の意。平家物語6「熊野の別当湛増も平家の重恩の身なりし―、其も背いて源氏に同心の由聞えけり」。「声をかけた―、答えがなかった」
③下文を略して、不審や不安を表明したり、軽い感動を表したりする。天草本平家物語「あの木をば自らこそ植ゑさせられた―」。歌舞伎、娘孝行記「『兄源之丞が死にました』『それは今朝まで内にゐた―』」。「あしたも天気だとよい―」
④推量の助動詞を受けて二つの事柄を列挙し、そのいずれにも拘束されない意を表す。…と。…とも。浮世風呂4「八百屋だろう―前栽せんぜへ売りだろう―、おめへにつかまつてはいかねへ」。「雨が降ろう―風が吹こう―行く」
➌(終助詞)
①相手の注意をうながしたり、念を押したりする。「…が、それでよいか」「…ぞ」の意。浄瑠璃、夕霧阿波鳴渡「おのれ帰ると命を取る―」。浄瑠璃、女殺油地獄「ある所にはあらう―な」。「みんな困っているんだ―」
②(疑問の「か」の転ともいう)希望を表す。上に「し」「てし」「にし」を添えて「しが」「てしが」「にしが」とする。また「がな」「がも」「もが」「もがな」「もがもな」となることもある。後世には「がな」が主に用いられた。
[二]〔接続〕
(接続助詞からの転用)であるが。だが。「おとなしい。―、酔うと人が変わる」
広辞苑 ページ 3164 での【が】単語。