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2. 英語の母音🔗🔉

2. 英語の母音 英語には「強母音」と「弱母音」の別があり, 前者は多少とも強いアクセントを受ける音節に現れ, 後者は常に弱音節にのみ現れる. 強母音はまた「短母音」と「長母音」とに分かれる. 英語の母音は無声子音の前では短く, 有声母音の前および語末では長くなり, さらに語の音節数が多いほど短くなる. 従って bid の短母音 // の長さと beat の長母音 /i/ の長さは実際は殆ど同じである. また happy /hpi/ や butter /b | -t(r/ の語末の弱母音 /i/ や // は happiness /hpins/ や butterfly /bfl | -t-/ の語中の /i/ や // と比べるとかなり長い. また同じ // の母音でも, hand /hnd/, handy /hndi/, handiness /hndins/ のように音節の数が増えるほど短くなる.   2.1 短母音 1 //  「イ」と「エ」の中間の響きをもつが, むしろ「エ」に近く発音したほうがよく, 後述の長母音 /i/ が短くなったものではない. /i/ とはかなり音色が違う: big /bg/, business /bzns/.   2 //  英音では「エ」に近い. しかし米音では「エ」より舌の位置が下がって「ア」に近く聞こえることがある. このため本辞典では /e/ を使わず, それよりは舌が低い母音を表す // の記号を使用した: bet /bt/, question /kwstn/.   3a //  この母音は伝統的に「ア」と「エ」の中間の短母音とされてきたが, 単音節語(特に有声子音の前)ではかなり長くなる. また // を発音する際には咽頭が収縮するのが特徴である. 米音では // は最近かなり大きな変動が起こっている. 一つは // が二重母音化して // のように二重母音化すること, もう一つは舌の位置が高くなって上の // に接近して両者の区別が曖昧となる傾向である. このため, to gather /tg/ と together /tg/ などがしばしば同じ発音に聞こえる. いっぽう英音では逆に舌の位置が低くなって [a] に近づく傾向がある. このような複雑な事情を本文の発音表記に反映することは不可能なので, 本辞典では従来通り // で示すこととした: bag /bg/, package /pkd/. 3b  // の直後に /f, , s/ および /m, n/+子音が続くとき, 米音では // であるが, 英音では後述の長母音 // となる語がある: after /ftft(r/, bath /b | b/, pass /ps | ps/; sample /smp | sm-/.   4a /() | /  米音では「ア」よりもやや舌の位置が低く発音される. 長めに発音されることが多く, ほとんどの地域で長母音の // と同じ音になって bomb /b()m/ と balm /bm/ とは同じ発音になっているので, 本辞典では /()/ で表すこととした. また最近では舌の位置が前寄りとなる傾向がある. 英音では // に唇の丸めがわずかに加わった // (精密表記では [])で,「オ」よりかなり口が開き唇の丸めも弱く多少「ア」の響きが感じられる: dot /d()t | dt/, polish /p()l | pl-/. 4b /() | /  英音では短母音の // だが, 米音では // を除く無声摩擦音と // の前では同じ母音だが長めに発音され, 多くの地域で長母音の // と同じになっている. 従って精密には [() | ]: off /()f | f/, cloth /kl() | kl/, long /l() | l/.   5 //  米音と英音とでは音色に多少の違いがある. 英音の // は「ア」をそのまま流用しても差し支えない. 米音の // は「ア」よりも舌の位置が高く奥の方で発音される: cut /kt/, country /kntri/. 米音の // は /l/ の前では「オ」のように聞えることがある 《⇒3. 5. 2》.   6 //  米音・英音ともに最近は丸めが弱くなって「ウ」に近い音色になった. // は後述の長母音 /u/ が短くなったものではなく, 両者の音色はかなり違っている: bush /b/, woman /wmn/.   2.2 長母音 1 /i/  「イー」に近い音であるが, それよりも唇や舌が緊張しているので, 短母音 // の長い音ではない: eat /t/, sea /s/.   2 //  短母音の 4 で説明した /()/ が長くなった母音: calm /km/, father /f | -(r/, spa /sp/.   3 /, /  // は米音と英音とではかなり違う. 米音の // は「オー」よりも口が大きく開き, 舌の位置が低くて // に近く, 精密には []. 最近では完全に // と発音する人も多数いる. このような事情なので, 本辞典では // の後に常に // を併記した. いっぽうの RP の // は「オー」に近く, /o/ で表してもよい: cause /kz, kz | kz/, law /l, l/.   4 /u/  「ウ」よりも唇が強く丸まり舌の位置も高く, 緊張している. この点で短母音の // とは音色がかなり異なる: soup /sp/, blue /bl/.   5 //  この母音は米音と英音の最も重要な相違点である. 米音では図のように 2 種類の // がある. (a) の発音では中舌面がもり上がり, (b) 型では舌先は多少そり返って歯茎の後方に近づき, 中舌面は凹状となる. このように舌面の形状は異なるが, 舌の奥が後ろに引っ張られて咽頭が圧迫され, 舌の後部の縁が上の奥歯に触れ唇が多少丸まる, などの共通点があるため, 両者は聞いてもほとんど区別がつかない独特の同じ音色を持つ. 英音の // は口をあまり開かず, 「アー」と「ウー」の中間のような不明瞭な響きである: learn /ln | ln/, occur /kk(r/. 【図】   2.3 二重母音 1 /e/  「エ」あたりから // の方向へ移動する: cake /kk/, away /w/.   2 /a/  「ア」のあたりから // の方向へ移動する: side /sd/, rely /rl/.   3 //  「オ」より少し低い位置から // の方向に移動する: voice /vs/, enjoy /nd/.   4 /a/  「ア」のあたりから // の方向へ移動するが, 出だしの母音の位置にはかなりの変動があり, 米音では // と発音する人も多い: house /hs/, allow /l/.   5 /o/  米音では「オ」のあたりから // の方向に移動し, 始めの母音はかなり唇が丸まるが, 次第に丸めは弱くなる. 英音では出だしの母音の唇の丸めはなく, 長母音 // の始めの // に近い: boat /bt | bt/, ago /gg/.   6 /ju/  後述する半母音 /j/+/u/ と解釈されるのが普通だが, 歴史的には /u/ と /ju/ とは別の母音であり, また子音の後には /ju/ しか続かない (cue /kj/ という語はあるが /kjt, kj, kj/ などは存在しない), などの理由で本辞典では独立した二重母音として扱う. 後半の唇の丸めを強くした「ユー」: huge /hjd/, review /rvj/.   7 //  短母音の // あたりから後述する弱母音 // に移動する. ただし英音では語末では // よりもさらに舌の位置が低くなる(これは以下で扱う //, // および三重母音全てに当てはまる(語末の /(r/ については後述する)): pierce /ps | ps/, appear /pp(r/.   8 //  // から // に移動するが, 始めの母音を // と発音する人もある. また英音では二重母音ではなく長母音の // と発音する人が増えてきた: scarce /sks | sks/, bear /b | b(r/.   9 //  // から // に移動する: tour /t | t(r/, assure /(r/.   10 //  米音では短母音の // から弱母音の // に移動する二重母音だが, 英音では長母音の // となる: part /pt | pt/, car /k | k(r/.   11 //  米音では長母音の // と二重母音の /o/ の出だしの母音の中間くらいの位置から // に移動する二重母音だが, 英音では長母音の // と同じになる: court /kt | kt/, worn /wn | wn/, pour /p | p(r/.   2.4 三重母音 次の二つは実際は /a/+// および /a/+// で 2 音節となることが多く, 真の三重母音とはいい難い. 1 /a | a/: fire /f | f(r/.   2 /a | a/: flour /fl | fl/, power /p | p(r/.   3 /j | j/  元来は上で扱った /ju/+// が合体して 1 音節になったもので, 英語で唯一の三重母音である: pure /pj | pj(r/, secure /skj | -kj(r/.   2.5 弱母音 1 /i/  /i/ の短く弱い母音で, 現れる位置が二つある. 一つは語末で, このときはかなり長めとなる. ただし refugee /rfjd/ の語末の第一アクセントのある強母音 /i/ ほどではない: happy /hpi/, colony /k()lni | kl-/. もう一つは語中の母音の前で, ここではかなり短い: curious /kjris | kjr-/, period /prid | pr-/.   2 //  強母音の // と同じ記号であるが, それよりもやや // に近く, 弱く曖昧なことが多い: except /kspt/, incline /nkln/, vanish /vn/, nothing /n/.   3 //  英音の長母音 // が短く弱く曖昧になった母音を中心にして, 現れる位置や綴り字によってかなりの変動がある. to come /tkm/ や ago /gg/ のように /k/ や /g/ の前では弱い「ウ」のように聞え, 逆に China /tn/, sofa /sf | s-/ のように語末では(特に英音で)低くなって弱い「ア」のように聞える. 一般に about /bt/, chorus /krs/ のように綴り字が a や u のときは弱い「ア」に聞える. e のときには element /lmnt/ のように「エ」の響きが加わることもあり, また seven /svn/ のように弱い「ウ」に近く聞えることもある. contain /kntn/ のように o のときには「オ」の響きが認められることもある. 注意すべきは i のときで, この場合は「ア」ではなく「ウ」と「イ」の中間のような弱い音となり, 英音では代りに // が現れることも多い: animal /nm/, possible /p()sb | ps-/   ★ 弱音節では // も // も現れることが多い. このようなとき本辞典では紙面の節約のため // の記号を用いる. // は二つの母音を同時に示す合成記号で, 独立した別個の母音を表すものではない: decide /dsd/=/dsd, d-/, happiness /hpins/=/hpins, -ns/.   4 //  米音では長母音の // が弱く緩んで発音されたもの. 英音では上の // と同じ母音である. ともに語中では短いが語末ではかなり長くなる. particular /ptkjl | ptkjl(r/ では語末の // は始めの音節の // よりもかなり長く, また teacher /tt | -t(r/ の語末の // はその前の長母音の /i/ の長さと同じくらいである. しかし occur /kk(r/, refer /rf | -f(r/ のように語末で第一アクセントを持つ強母音の // ほど長くはない: pitcher /pt | -t(r/, Saturday /sd | -t-/.   5 /j/, /ju/  二重母音の /ju/ が弱く短くなったもので弱い「ユ」. 母音の前では /ju/ となる: regular /rgjl | -l(r/, manual /mnju/.   2.6 綴り字R を持つ母音 上で扱った母音のうち, 綴り字に r を持つ母音は米音では音声的には必ず // を含む. これを「R の音色の母音」という. このような母音の直後にさらに母音(特に弱母音)が続く場合, 本辞典では次のように // を /r/ に変えて表記している: hear /h/ → hearing /hr/, endure /nd/ → endurance /ndrns/. ただし //, // の場合は // がさほど目立たないので便宜的に英音と同じく star /st/ → starry /stri/, store /st/ → storage /strd/ とする. また // の後に弱母音が続くときは /r/ を入れて示す: occur /k/ → occurring /kr/. 英音ではこれに対応する母音が語末にあり, その後にまた母音が続くときには母音間に /r/ が入ることが多い. この場合は /(r/ で示す: hear /h(r/ → hearing /hr/, endure /ndj(r/ → endurance /ndjrns/, occur /k(r/ → occurring /kr/.    

研究社新英和大辞典 ページ 168191 での2. 英語の母音単語。