複数辞典一括検索+

3.3  英単語の中には dog のように OE docga より古く遡ることができない場合もあるが, cow の場合は上記語源欄の示すように OE c が最終的語源では🔗🔉

3.3  英単語の中には dog のように OE docga より古く遡ることができない場合もあるが, cow の場合は上記語源欄の示すように OE c が最終的語源ではない. 英語と同語派に属する他のゲルマン諸語に OE c に対応する語―OFris. k, OS k, OHG chuo, ON kr―が存在することから, 古代ゲルマン人が用いた言語, いわゆるゲルマン基語の語彙に k(w)uz が推定できる. (印は A. Schleicher 以来, その語が文証されないが理論上推定される語形であることを示す.) 我々はさらに, このゲルマン語に対応する語形を欧亜大陸の諸言語に, OIr. b, L bs (cf. boss), Toch. (A ko, ki; B keu), Gk bos, Arm. kov, Latv. govs, OSlav. govdo, Aves. gush, Skt gus のように見出し, これらの語形の遡源する印欧基語 gus '牛'を帰納的に推定することができる. 上記語源欄はこの過程を簡略に OE c < Gmc k(w)uz … < IE gus としている. (A′ < A は A′ が A の音法則的発達であることを示す.) その際ゲルマン基語の次に, 同じくこの基語から発達した同族語を例示するが, 一般読者の便を考えて, 通例オランダ語・ドイツ語の現代語形をあげてある. (なお Du. と G の間の斜線は異なる言語を併記するときの区切りとして用いている.) また, 印欧基語の次にも同じように, ラテン語・ギリシャ語の同族語形をあげた. ギリシャ語の転写法は, サンスクリット・ヘブライ語・アラビア語・ロシア語と共に, 本文中の alphabet の項の表に示してある. ギリシャ文字のローマ字転写は, 慣用的なラテン語式によらなかったところがある. すなわち kappa は c でなく k, upsilon は y でなく u, chi は ch でなく kh, また軟口蓋音 (k, g など) の前の gamma も n でなく g で表記した. しかし, 英語におけるギリシャ借入語は通例ラテン語を経由しているので, synchronize のように, いずれもラテン語式 (y, n, ch) の形をとっていることはいうまでもない.

研究社新英和大辞典 ページ 168231