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もの 【物】🔗⭐🔉
もの 【物】
■一■ [2][0] (名)
〔形のある物体を初めとして,広く人間が知覚し思考し得る対象の一切を意味する。「こと(事)」が時間的に生起・消滅する現象を表すのに対して,「もの」はその現象を担う不変な実体を想定して用いる語である〕
□一□
(1)物体。物品。「階段に―を置くのは危険だ」「窓から―が落ちて来た」
(2)特に,経済的な価値をもった物品。また,その品質。「―は乏しくても,心は豊かでありたい」「値段は安いが,―は確かだ」
(3)対象を具体的に表現せず,漠然という語。何らかの対象。「―を言う」「―を思う」「―も食べない」「―のはずみ」「―の役に立たない」
(4)対象を特定化せず,一般的・包括的にいう語。すべての対象。「―は考えようだ」「―には順序がある」
(5)物事の筋道。道理。「―が分かっている人」
(6)鬼や悪霊など,正体のとらえにくい対象を畏怖していう語。「―に憑(ツ)かれる」「―の怪(ケ)」
(7)取り上げる価値のある対象。ひとかどの存在。「―ともしない」「―の数ではない」「―になるかどうか」
(8)思考の対象として取り上げる事物をさす語。物事。「幸福という―はとかく失われやすい」「日本的な―を好む」
(9)一度名前を言ったあとで再びそれをさす時に,名前の代わりに用いる語。それ。「あの映画は一度見た―だ」
(10)(「…のもの」の形で)所有物。持ち物。「自分の―には名前を書いておきなさい」「人の―を借りる」
□二□
(1)〔哲〕
〔英 thing; (ドイツ) Ding〕
(ア)感知し得るさまざまな属性の統一的担い手としてのまとまりをもった空間的・時間的対象。狭義には,このもの・あのものと指し示し得る「机」「家」など外界に存在する感覚的個物をいうが,広義には思考の対象となり,命題の主語となり得るすべて,例えば心や価値などの非感覚的存在をも含めていう。(イ)人格としては関係しない対象を「ひと」に対して「もの」という。
(2)〔法〕 権利の客体とされる,排他的支配が可能な外界の一部をいい,有体物と無体物とに分けられる。民法上「物」は有体物に限られる。
□三□種々の語の下に付いて複合語をつくる。
(1)その分野・種類に入る品物や作品であることを表す。「夏―」「西陣―」「三年―のワイン」「現代―」
(2)そういう事態を引き起こすような事柄であることを表す。「それは切腹―だ」「全く冷や汗―だった」
(3)動詞の連用形に付いて,そのような動作の結果できた物品,そのような動作の対象となる物品であることを表す。「塗り―」「焼き―」「食べ―」「読み―」
□四□(形式名詞)
(1)(「…ものだ(である)」などの形で)(ア)普遍的な傾向。「どんな人もお世辞には弱い―だ」「人間はとかく過去を美化したがる―らしい」(イ)なすべきこと。「そんな時は何も聞かずにいてあげる―だ」(ウ)過去にしばしば起こったこと。「二人でよく遊んだ―だ」
(2)(「…ものだ」の形で)感動・詠嘆を表す。…なあ。「あの難関をよくくぐり抜けた―だ」「故郷とはいい―だ」「あの男にも困った―だ」
(3)(「…ものか」「…ものではない」などの形で)否定を強調する。「そんなことがある―か」「誰が言う―ですか」「何をするかわかった―ではない」
(4)(「…ものと思われる」などの形で)判断を強調する。「彼はもう帰った―と思われる」「あきらめた―とみえて,その後何も言ってこない」
(5)(「ものとする」の形で)…することとする。「甲はその責任を負う―とする(契約書ナドノ文言)」
■二■ (接頭)
形容詞・形容動詞・動詞に付いて,何とはなしに,また,どことなくそのような状態である,の意を表す。「―寂しい」「―静か」「―古る」
大辞林 ページ 155696 での【物】単語。