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から🔗⭐🔉
から
〔「から(柄)」という名詞が抽象化されて,動作・作用の経由地を表すようになったといわれる。上代から用いられているが,起点・原因を表すようになるのは中古以降の用法〕
■一■ (格助)
体言および体言に相当するものに付く。
(1)出発する位置を表す。(ア)時間的・空間的な起点。「あした―休みになる」「山―日がのぼる」(イ)論理の起点・根拠。「ことしの実績―ボーナスの額を決める」(ウ)「…から…へ」の形で慣用的に用いる。「花―花へと,蝶が飛び回っている」「次―次へ能書きを並べる」
(2)通過する位置を表す。「窓―日がさしこむ」「ほととぎす卯の花辺―鳴きて越え来ぬ/万葉 1945」
(3)範囲を表す。「…から…まで」の形をとることが多い。「小学校―大学まで首席で通した」「何―何までお世話になりました」
(4)理由・原因・動機などを表す。「からすると」「ところから」「の上から」など慣用的に用いることがある。「経営不振―,工場が閉鎖された」「寒さの折―お体大切に」「現状―すると,円高傾向は今後も避けられまい」「ながしとも思ひぞはてぬ昔よりあふ人―の秋の夜なれば/古今(恋三)」
(5)動作・作用の出どころを表す。「君―聞いた話」「おやじ―おこられた」
(6)材料・構成要素を表す。「酒は米―作る」「議会は衆参二院―成る」
(7)おおよその数量を示す。数量を示す語に付く。「千人―の人出」
(8)一つの事例をあげて,全体を強めていう。…をはじめとして。「からして」の形で用いられることもある。「名人の演奏になると,音―違ってくる」「先生―してそんなことでは,生徒に対してしめしがつかない」
(9)手段・方法を表す。…によって。…で。「徒歩(カチ)―まかりていひ慰め侍らむ/落窪 1」
■二■ (準体助)
〔■一■からの転用で,近世後期以降の用法〕
いろいろの語に付いて,それの付いた語句を全体として体言と同じ働きをもつものにする。「以後」「以上」「故(ユエ)」などの意を表す。「10キログラム―の重さ」「こうなった―は一歩もひかない」「向こうに着いて―が心配だ」「僕のやり方がまずかった―のことだ」
■三■ (接助)
活用する語の終止形(古語では連体形)に付く。{■一■}の用法から出たもので,中古以降のもの。古語では「からに」の形をとることが多い。
(1)原因・理由を表す。(ア)前件を受けて,後件に話し手の断言・命令・意志など主観性の強い表現がくることが多い。「ほしい―買ったんだ」「むずかしい―できっこないよ」(イ)「からだ」「からです」などの形で,強く述べる。「成績があがらないのは,勉強しない―だ」(ウ)「からといって(からって)」の形で,理由・原因に対する帰結・結果を暗示させる。「寒い―といって,寝ぼうするやつがあるか」
(2)「からには」「からは」の形で,「…する以上は」の意を表す。「決心した―には,やり通すぞ」「やる―には立派になしとげなさい」
(3)「てから」「てからが」の形で逆接の意を表す。…したところで。「文句ばかり言って―が,何にもできないくせに」
→てから
→てからが
(4)「てからに」の形で順接の意で用いる。…たりして。
→てからに
(5)二つの事柄が必然的に結ばれており,それらが相続いて発生するという意を表す。「からに」の形をとる。(ア)「…だけの理由で」「…ばかりで」の意。「見る―に強そうな人」「初春の初子(ネ)の今日の玉箒(タマバハキ)手に取る―に揺らく玉の緒/万葉 4493」(イ)「…するとすぐ」「…するやいなや」「…とともに」の意。「吹く―に秋の草木のしをるれば,むべ山風をあらしといふらむ/古今(秋下)」
〔■三■(1) の用法は,理由・原因を表す接続助詞「ので」との間にすこし差異がある。特に(1)(イ)(ウ) は「から」だけに見られるもの〕
→ので(接助)
大辞林 ページ 141515。