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に (助動)🔗⭐🔉
に (助動)
〔打ち消しの助動詞「ず」の古い連用形。上代語〕
…ないで。…ないので。「己(オノ)が緒を盗み殺せむと後(シリ)つ戸よい行き違ひ前つ戸よい行き違ひ窺はく知ら〈に〉と御真木入日子はや/古事記(中)」「春されば我家(ワギエ)の里の川門(カワト)には鮎子さ走る君待ちがて〈に〉/万葉 859」
〔上代でも「知らに」「飽かに」「かてに」など,付く語は限られている〕
→ず(助動)
に (助動)🔗⭐🔉
に (助動)
〔断定の助動詞「なり」の連用形〕
断定の助動詞「なり」に同じ。「かぐや姫のいはく,月の都の人〈に〉て,父母あり/竹取」「いかばかりの昔の仇敵〈に〉かおはしけむとこそ思ほゆれ/源氏(真木柱)」「人などに立ちまじるべき有さま〈に〉もなく見苦しくやせ衰へ/讃岐典侍日記」
〔「にあり」「になし」「にして」「にて」「にや」などの形で用いられることが多い〕
→なり(助動)
に🔗⭐🔉
に
■一■ (格助)
〔上代から用いられている語で,動作・作用が行われ,また存在する,時間的・空間的な位置や範囲を示すのが本来の用法〕
(1)時を指定する。「五時―起きる」「仕事の合間―本を読む」
(2)場所・範囲を指定する。「アパート―住む」「空―星がまたたく」
(3)目標・対象などを指定する。「読書―熱中する」「魚釣り―行く」「君―見せてやろうか」
(4)帰着点や動作の及ぶ方向を表す。「家―たどりつく」「車―乗る」「危篤(キトク)―おちいる」
(5)動作・作用の起こる原因やきっかけを表す。「山登り―夢中になる」「前祝い―酒を飲む」「恐ろしさ―ふるえる」「やぶ蚊―苦しむ」
(6)比較・割合の基準を表す。「一か月―二日の休み」「親―似ぬ子」「子―まさる宝はない」
(7)動作・作用の起こるみなもとを表す。「人―ぶたれる」「盗人(ヌスツト)―金をとられる」
(8)ある資格をもつという意を表す。として。「ごほうび―千円もらう」「浅緑いとよりかけて白露を珠―もぬける春の柳か/古今(春上)」
(9)変化する結果を表す。「学者―なる」「星―なりたい」
(10)動作・状態の行われ方・あり方を表す。「左右―ゆれる」「ぴかぴか―光る」
(11)(多く「には」「にも」などの形で)尊敬すべき主語を表すのに用いる。「陛下―は,両三日御休養の御予定であります」
(12)(「…には…が」の形で,活用語の終止形に付いて)条件付きの許諾の意を表す。「行く―は行くが,しばらく待ってくれ」「いい―はいいが,値段が高い」
(13)(同じ動詞を重ねた間に用いて)程度のはなはだしいことを表し,その動詞の意を強める。「待ち―待ったこの日」「斬り―斬って斬りまくる」
(14)動作が行われる手段・方法を表す。で。によって。「この皮衣は火―焼かむに,焼けずはこそまことならめと思ひて/竹取」
(15)状態を認定するのに用いる。のように。の状態で。「花ぞむかしの香―にほひける/古今(春上)」
■二■ (並立助)
〔■一■から転じた用法〕
名詞および準体助詞「の」に付いて,同趣のものの添加,対比・取り合わせなどの意を表し,また,対等に並べあげるのに用いる。「月―むら雲」「ロイドめがね―燕尾服(エンビフク)」「古いの―新しいのと,いろいろ組み合わせる」「米―みそ―醤油―,何から何まで足りないものばかりだ」
■三■ (接助)
〔■一■から転じた用法〕
(1)動詞の終止形に付いて,本論を述べる前の前置きを表す。(ア)「思う―,国際情勢は悪化の一途をたどっている」「一言で言ってみる―,…」(イ)(「…もあろうに」の形で)逆接的な意を表すのに用いる。「こともあろう―,飲酒運転するとは」
(2)(動詞の連体形に付いて)(ア)前件から後件へ,時間的に継起していることを表す。…すると。…したところ。「あやしがりて寄りて見る―,筒の中光りたり/竹取」(イ)前件が後件の原因・理由であることを表す。ので。から。「舟とく漕げ,日のよき―/土左」(ウ)逆接の条件を表して,前件から予想される結果が後件と食い違う場合に用いる。のに。が。「しばしかなでて後,抜かんとする―,大方抜かれず/徒然 53」(エ)(「むに」の形をとって)前件が後件の仮定条件に立つ場合に用いる。「たまさかにても,かからむ人をいだしいれて見む―,それにますことあらじ/源氏(紅葉賀)」
■四■ (終助)
〔■三■からさらに転じてできた用法〕
(1)(「…うに」「…ように」の形をとって)言いきかせたり,あわれみ惜しむ意を添えるのに用いる。「さぞお嘆きだったでしょう―」「ああしておけばよかったろう―」
(2)〔近世の用法〕
人の注意をうながす意を添える。「しづかにしなさろ,むすめが目をさます―/滑稽本・膝栗毛 3」
大辞林 ページ 151351。