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そら【空・虚】🔗🔉

そら【空・虚】 空間・場所・位置などの上の方をいう。 1 地上の上方で、神の世界と想像した天より下の空間。虚空。中天。転じて、地上の上方に広がる空間全体をさしていう。古くは、「あめ(天)」が天上の神々の生活する世界を想定しているのに対して、より現実的な空間をいうようである。*古事記‐中・歌謡「腰泥(なづ)む蘇良(ソラ)は行かず足よ行くな」 2 1の様子。天候や、時に寒暖などの気候をあらわすものとして用いる。空模様。時節。「空を気にする」「一雨来そうな空」 3 ある物の上部、高い所をさしていう。 屋根・天井・梢(こずえ)などの高い所をいう。*宇津保‐楼上上「屋(や)のそらところどころ朽ちあきたりし」物の表面。上手(かみて)。上座(かみざ・じょうざ)。*滑・膝栗毛‐二「がいに、あとへさがりやることよ。もっとそらへつん出なさろ」 4 方角。場所。また、境遇。心境。現在の地、または本拠たるべき地を離れて、これから出発しようとする方角や場所、または異なる境地に身を置いていることを示すとともに、その境遇や心境などが不安定で、心配・悲しみ・憂いに満ちたさまであることをも含める。*竹取「旅のそらに助け給ふべき人もなき所に」 5 (4から転じて)物事の途中。中途。*梁塵秘抄‐二「見初めざりせばなかなかに、そらに忘れて已(や)みなまし」 比喩的に、精神状態などについて用いる。 1 (形動)心が空虚であるさま。魂が抜けたようで、しっかりした意識のないさま。うつろ。うわのそら。*万葉‐二五四一「心空(そら)なり土は踏めども」*枕‐二三「『御硯の墨すれ』と仰せらるるに、目はそらにて」 2 (形動)明確な基準・根拠・原因・理由などがないことをあらわす。多く、助詞「に」を伴って、副詞的に用いる。 はっきりした原因のないさま。偶然。自然。*今昔‐一・一一「頭(かしら)の髪空に落ちて羅漢と成りぬ」これという理由のないさま。*山家集‐上「そらにいでて何処(いづく)ともなく尋ぬれば」根拠が不確実であるさま。*海道記「富士の山を見れば、都にて空に聞きししるしに」足もとがおぼつかないさま。*徒然草‐一九「ことことしくののしりて、足をそらにまどふが」特に、「知る」などを修飾して、はっきりした根拠もなく、推量して知ることをいう。*白氏文集天永四年点‐三「闇(ソラ)に君が心を測り」助詞「に」(後には「で」)を伴い、「読む」「覚える」などの語を修飾して、文字を見ることもなく記憶に頼るだけであることをいう。「全文を空で言う」*枕‐一九一「六の巻そらに読む」 3 うそ。いつわり。→空を使う。 4 心。気持。下に否定の表現を伴って、不安な心境やうつろな心を表す。または、漠然とした意志などをさす。*古今‐五八〇「秋霧のはるる時なき心にはたちゐのそらもおもほえなくに」 〔語素〕主として名詞、その他の語の上に付いて、実体のないことである意などを示す。 1 実体のないもの、間違ったことなどの意を表す。「そらね(空音)」「そらめ(空目)」「そらみみ(空耳)」など。 2 本心はそうでなく、うわべだけであることを表す。「そらごと(空事)」「そらね(空寝)」「そらなき(空泣)」など。 3 かいがない、無駄であるの意を表す。「そらだのめ(空頼)」など。 4 いいかげんである、でたらめであることを表す。「そらあわせ(空合)」など。 5 自然に、の意を表す。「そらどけ(空解)」など。 6 名詞、または動詞の上に付いて、わざと、承知の上で、の意を表す。「そらとぼけ(空惚)」「そらとぼける(空惚)」など。 〔接頭〕 1 動詞の上に付いて、むやみに、やたらに、の意を表す。「そらからくる(空絡繰)」「そらうそぶく(空嘯)」「そらっぷく(空吹)」など。 2 形容詞の上に付いて、はっきりした結果、または事情は不明であるが、その気持のはなはだしいことを表す。「そらおそろしい(空恐)」「そらはずかしい(空恥)」など。 ●空がない 落ち着いた気分がしない。また、気乗りしない。 ●空聞かず ⇒親見出し ●空知らず ⇒親見出し ●空知らぬ雨 空の知らない雨の意で、涙のこと。 ●空知らぬ雪 空の知らない雪の意で、風に舞う桜などの花びらのこと。 ●空飛ぶ円盤 未確認飛行物体(UFO)」の俗称。 ●空飛ぶ鳥も落とす 空を飛んでいる鳥さえも落とす力をもっている。不可能なことはないほど権勢を誇っているたとえ。飛ぶ鳥を落とす。 ●空に標(しめ)結(ゆ)う 空中にしめ縄を結いわたす。不可能なこと、思ってもかいのないことを思いわずらうたとえ。 ●空にす ⇒親見出し ●空に巣掻(すが)く 空中に巣をかける。はかないことを試みるたとえ。また、報いられることのないたとえ。 ●空に三(み)つ廊下(ろうか) (「降ろうか」「照ろうか」「曇ろうか」の三つの「ろうか」を廊下に掛けていう)天が、まるで「降ろうか、照ろうか、曇ろうか」と言っているように、天候の定まらないのをしゃれていう語。 ●空の色(いろ) 1 晴れた大空の色。空色。 2 空の様子。天候のぐあい。そらあい。空模様。 ●空の海(うみ) 海のような大空。空を大海に見立てていう語。 ●空の鏡(かがみ) 空にかかっている鏡のように澄んだ月。秋の名月の形容。 ●空の限(かぎり) 空のつきるところ。大空の果て。 ●空の煙(けぶり) 1 空に立ちのぼる煙。 2 死者を火葬にする煙。多く、「空の煙に(と)なる」の形で、死ぬことをいう。 ●空の時雨(しぐれ) 落ちる涙を降る時雨にたとえた語。 ●空の雫(しずく) 落ちる涙を空から落ちる雫にたとえた語。 ●空の乱(みだ)れ 天候が悪いこと。不順な空模様。風雨の天候。 ●空吹(ふ)く風(かぜ) 1 吹き過ぎてゆく風。中空を吹く風。 2 転じて、吹き過ぎる風のように、無関心であること。そしらぬふりをすること。とらえどころのないこと。どこ吹く風。 ●空を歩(あゆ)む 不安で落ち着かないさま。心中に迷いが生じて足もともおぼつかないさまのたとえ。 ●空を=使(つか)う[=吐(つ)く] 知らないふりをする。しらばっくれる。とぼける。また、うそをいう。

日国 ページ 12447 での単語。