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〔格助〕 連体格を示す格助詞。体言または体言に準ずるものを受けて下の体言にかかる。→補注(1)(2)。 1 下の実質名詞を種々の関係(所有・所属・同格・属性その他)において限定・修飾する。 修飾される実質名詞が表現されているもの。*古事記‐上・歌謡「山処(やまと)能(ノ)一本薄(ひともとすすき)」*源氏‐常夏「このごろ世にあらむことの、少しめづらしく、ねぶたさ醒めぬべからむ、語りて聞かせ給へ」修飾されるべき、下の実質名詞を省略したもの。準体助詞とする説もある。*仏足石歌「薬師は常乃(ノ)もあれど」*土左「いまのあるじも、さきのも」(の用法がさらに進んで)活用語の連体形、または連体格を示す格助詞「が」を受けて形式名詞として用いられ、「もの」「こと」の意を表す。「プログラムを刷るのに忙しい」*曾丹集「人妻と我がのと二つ思ふには馴れこし袖はあはれまされり」下の名詞(人を表す体言)を省略して、呼びかけに用いる。近世に現れた用法。*伎・油商人廓話‐四「コレコレ若いの」 2 下の形式名詞の実質・内容を示すもの。 形式名詞が表現されているもの。*万葉‐三六六一「風能(ノ)むた寄せ来る波に」*源氏‐桐壺「右大弁の子のやうに思はせて」実質を示されるべき、下の形式名詞「ごと(如)」を省略したもの。…のように。*古事記‐上・歌謡「朝日能(ノ)笑み栄え来て」*源氏‐夕顔「例の急ぎ出で給て」 (1 の同格を表す用法から転じて)「…であって」の意を表す。*更級「門出したる所は、<略>かりそめのかややの、しとみなどもなし」 体言を受け、形容詞語幹に体言的接尾語「さ」の付いたものを修飾する。*古今‐二一七「目には見えずて音のさやけさ」 主格を示す助詞。 1 従属句や条件句など、言い切りにならない句の主語を示す。*万葉‐一七三「高光る吾が日の皇子乃(ノ)いましせば」*源氏‐夕顔「御けしきのいみじきを見たてまつれば」連体形で終わる詠嘆の文や疑問・反語・推量文中の主語を示す。*万葉‐一七「しばしばも見さけむ山を心なく雲乃(ノ)隠さふべしや」*枕‐一「むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる」言い切り文の主語を示す。→補注(3)。*古今‐八五四「みれば涙のたぎまさりけり」 2 好悪の感情や希望・可能の対象を示す。*源氏‐若菜上「宮の御事の猶いはまほしければ」 他の格助詞の用法に通ずるといわれるもの。「を」「に」「と」に通う「の」といわれる。*万葉‐四一九「岩戸割る手力もがも手弱き女にしあればすべ乃(ノ)知らなく」*土左「きのふの同じところなり」 〔終助〕(1から転じたもの)文末にあって活用語の連体形を受け、文全体を体言化し、詠嘆をこめて確認する。下に間投助詞「さ」「よ」「ね」がつくこともある。上昇のイントネーションを伴えば質問文になる。*伎・阿弥陀が池新寺町‐一「確(しか)とそなたの産んだ若殿でないの」*咄・高笑‐天目「茶碗の事を天目といふが、なぜてんもくと云ふの」 [補注](に関して)(1)の用法の多くは格助詞「が」の用法と重なる。「が」との違いには、形態上、その受ける語が品詞的に「が」の場合より多種であるにかかわらず、元来活用語の連体形を受けないこと、意味機能上、関係構成の種類が「が」より多いこと、および待遇表現上、古く「が」が親愛・軽侮・嫌悪などの情を含む表現に用いられるのに対し、「の」は疎遠な対象(崇敬の対象にはある距離を保ち、形の上で疎の扱いをするのが常である)に用いられたなどの点が指摘される。待遇表現の問題については「が」は自己を中心とする「うち」なる領域のものに付く助詞、「の」は自己の領域外なる「そと」の部分にあるものにつく助詞であるとする説が出されている。(2)中世中頃、漢文訓読の場から、「あざむかざるの記」のような用法が成立する。連体形は連体格表示機能を有するから、その下にさらに連体格助詞「の」を用いることは本来あり得ないが、漢文の字面を離れても置字のあることがわかるようにとの配慮から、朱子新注学を奉ずる人々が従来不読の置字であった助字「之」を読んだところから生じたものという。(3)1の用法は中古仮名文に現れ、近世にはかなりの例が見られるが、助詞「が」のように自由な主格助詞となりきることはなく、後には再び衰退する。なお中世の抄物では、聞き手を意識して念を押す助詞「ぞ」の下接した「…したぞ」の形で終わる文が圧倒的に多く、「た」までが体言的にまとめられていることが知られ、また近世の例はすべて感動表現であって本質的にはやはり の用法と同様である。

日国 ページ 15811 での単語。