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はな【花・華・英】🔗🔉

はな【花・華・英】 植物の器官の一つで、一定の時期に美しい色彩を帯びて形づくるもの。 1 種子植物で、有性生殖を行なうために分化した花葉と花軸の総称。花葉には花冠(萼片・花弁)・雄しべ・心皮の区別がある。花弁は時には萼片や苞葉とともに、美しい独特の色彩を持つが、実際には緑色のものが多い。また、これを構成する各花葉の有無により完全花・不完全花、雌しべ・雄しべの有無で単性花・両性花などに区別する。普通、つぼみが開いたもので、受精して実を結ぶ。*古事記‐下・歌謡「葉広斎(ゆ)つ真椿其(し)が波那(ハナ)の照り坐し」 2 (春、百花にさきがけて咲き、また奈良時代以来その愛好が盛んであったところから)特に梅の花をいう。*古今‐一〇「春やとき花や遅きとききわかん鶯だにもなかずもあるかな」 3 (それが春を代表する花であるところから)特に桜の花をいう。平安後期に固定したものとみられ、以降「花」すなわち「桜」の用法が多い。《季・春》*古今‐七六「花ちらす風の宿りはたれかしる」 4 1が咲くこと。開花。特に桜の花にいう。*万葉‐一三五九「花待つい間に嘆きつるかも」 5 1を見て賞すること。特に桜の花にいう。花見。*新古今‐九四「尋ね来て花にくらせる木の間より」 6 1のうち、神仏に供え、あるいはいけ花とするもの。1のついていない枝葉などもいう。*万葉‐一九〇四「梅の花しだり柳に折りまじへ花にそなへば君にあはむかも」 7 (仏前に供えるところから)「しきみ(櫁)」の異名。 8 花をいけること。いけばな。花道(かどう)。お花。「花の先生(稽古)」 9 露草の花びらからしぼりとった青色の絵の具。これを和紙にしませて青花紙(あおばながみ)を作る。*栄花‐もとのしづく「頭には花を塗り」 10 露草の花のしぼり汁の青白い色。縹(はなだ)。さらに、藍染(あいぞめ)の淡い藍色をいう。また、花染。*枕‐三六「みちのくに紙の畳紙のほそやかなるが、花かくれなゐか、すこしにほひたるも」 11 米、麦、大豆などの原料に繁殖した麹黴(こうじかび)。麹花(こうじばな)。また、麹のこと。*俳・鷹筑波‐三「花もよくつかんかうじのむろにして」 (色や形から比喩的に用いる) 1 雪、霜、白波、月光、灯火などを、その形状や色合の白の意識をなかだちとして花に見立てていうことば。「雪の花」「氷の花」「波の花」「湯の花」「硫黄の花」「火花」「風花」など複合語となることが多い。 2 灯心がとぼって、その先端の白く灰状になったもの。 3 瘡(かさ)、あるいは発疹。「熱の花」 4 茶を煎じたとき表面に浮く泡の、軽く細かいものをいう。 5 月経。 花にあやかったり、花をかたどったり、あるいは花を描いたりした物や事柄。 1 造花。つくりばな。かざりばな。 2 散華(さんげ)に用いる紙製の蓮の花びら。 3 (「纒頭」とも。花の枝につける進物の意から)芸人や力士などに祝儀として与える金品。また、祭りの寄付をもいう。てんとう。心付け。また、紙花(かみばな)。*浮・世間胸算用‐三「内証より近付の芸者に花をとらせ」 4 俳諧・狂歌の添削料のこと。入花。点料。 5 上方で、芸娼妓や幇間(ほうかん)の揚げ代をいう。花代。 6 上方で、芸娼妓の花代を計算するために用いる線香。また、それによって計る時間。 7 ウンスンカルタの組札の一種。剣や筒の頭に花のついた図柄のもの。 8 花カルタ。花札。また、それを用いて行なう競技。「花をひく」 9 連句の花の定座(じょうざ)。また、花の句。 花の美しく、咲き栄えるさまにたとえていう。 1 (形動)はなばなしく栄えること。美しく盛んなこと。はなやかなこと。栄華。繁栄。「この世の花」「人生の花」「話の花」など。*栄花‐初花「時の花をかざす心ばへにや」 2 (「花の…」の形で)美しいさま、華やかなさまをいい、ほめことばとして用いる。「花の都」「花の顔ばせ」など。*有明の別‐三「めづらしきさましたるはなの女」 3 世阿弥(ぜあみ)の能楽論の用語。観客に感銘を与える芸のおもしろさ、珍しさ。 4 若い男女。男女のはなやかなさかりをいうことば。また、特に美しい女をいい、さらに遊女をもさす。 5 豪勢な遊び。贅沢な遊興。楽しいこと。特に、色事をいう。情事。 6 もっともよいこと。もっとも貴いこと。多く、「…が花」の形で限定して、その範囲のうちだけがよい、という意で用いる。*浄・烏帽子折‐道行「只何事も見ぬが仏、きかぬが花」 7 ある範囲の中にあって、見ばえのするもの。また、よりぬかれた本質的なもの。精華。精髄。「文化の花」「オリンピックの花」など。 実に対して、花のあだなさま。本物でないもの。あるいは、花のうつろい、はかなく散るさまにたとえていう。 1 (形動)人の心などに誠実さがなく、あだなこと。うわべだけであること。*古今‐仮名序「人の心花になりにけるにより、あだなる歌はかなきことのみ出でくれば」 2 (形動)人の心や風俗などの変わりやすいこと。うつろいやすいこと。*古今‐七九七「色みえで移ろふものは世中の人の心の花にぞありける」 3 文芸論の用語として、和歌、俳諧などで、表現のたくみさ、おもしろさ、表現上のはなやかな美しさなどをいう。実に対していう。*毎月抄「古の歌は、みな実を存して花を忘れ、近代のうたは、花をのみ心にかけて、実には目もかけぬから」 4 外観。うわべ。また、そのはなやかさ、美しさ。また、見かけだけのはなやかさで、実質の伴わないこと。虚飾。浮華。「花多ければ実少なし」 5 本籖(ほんくじ)のほかに、若干の賞金が出る籖。花籖。 ●花に=嵐(あらし)[=風(かぜ)] とかく物事にはじゃまが起こりやすいことのたとえ。月に叢雲(むらくも)花に風。 ●花の兄(あに) (四季の花のなかで他の花にさきがけて咲くところから)梅の異称。《季・春》 ●花の雨(あめ) 桜の花の咲くころの雨。桜にふりそそぐ雨。また、桜の花のしきりに散るさまを雨に見立てていう。《季・春》 ●花の色(いろ) 1 花の色あい。 2 花染(はなぞめ)の色。また、その色の衣。 ●花の浮橋(うきはし) 花が水に散り敷いたのを浮橋に見立てていう語。 ●花の台(うてな) 1 萼(がく)の異称。 2 極楽往生した人がすわるという蓮の花の台。蓮のうてな。 ●花の枝(え) 花の咲いている木の枝。 ●花の宴(えん) 季節の花を観賞しながら催す酒宴。特に、春の観桜の宴にいう。《季・春》 ⇒親見出し ●花の王(おう) (花の中で最もすぐれている意から) 1 牡丹(ぼたん)のこと。花王(かおう)。 2 桜のこと。 ●花の=お江戸(えど)[=江戸(えど)] 江戸の繁華なさまをたたえていう語。 ●花の弟(おとと) (多くの花に遅れて咲くところから)菊の異称。《季・秋》 ●花の賀(が) 春、花の咲くころに行なう賀の祝い。 ●花の会(かい) 1 花を観賞しながら催す茶の会。 2 いけ花の会。挿花の会。 ●花の顔(かお・かおばせ・かんばせ) 1 咲いている花の姿。花の様子。《季・春》 2 花のように美しい顔。花顔(かがん)。 ●花の鏡(かがみ) 花の影が映っている池水などを鏡に見立てていう語。《季・春》 ●花の陰(かげ) 花の咲いている木の下かげ。《季・春》 ●花の木(き) 1 花の咲く木。花の咲いている木。花木。花樹。 2 ⇒親見出し ●花の雲(くも) 桜の花の一面に咲き連なっているさまを雲に見立てた表現。《季・春》 ●花の君子(くんし) (「周敦頤‐愛蓮説」による)蓮の花をいう。 ●花の心(こころ) 1 花に心があるものとしていう、その心。 2 相手の心をいう美称。 3 花によせる思い。花についての風情。 4 あだあだしい心。うわき心。 ●花の御所(ごしょ) 足利将軍家の邸宅。永和四年義満が現京都市上京区室町通今出川北の地に造営。種々の花を植えたところからの名。室町殿。 ●花の=衣(ころも)[=袖(そで)・袂(たもと)] 1 美しい衣服。はなやかな衣服。多く、春の服をいう。花衣。*古今‐八四七「みな人は花の衣になりぬなり」 2 花染めの衣。 3 観桜の時の晴れ着。花見の衣装。《季・春》 4 咲いている花を衣に見立てていう語。多く、梅・桜の花をいう。 ●花の宰相(さいしょう) 芍薬(しゃくやく)をいう。 ●花の杯(さかずき) 1 花を見ながらとる酒杯。花見の宴の酒杯。 2 杯を花にたとえていう。美しい杯。 ●花の盛(さか)り 年若く容色の美しい年頃をたとえていう。はなざかり。 ●花の魁(さきがけ) 百花にさきがけて咲くこと。また、その花。梅の花をさしていう。 ●花の雫(しずく) 花からしたたり落ちる露。 ●花の下紐(したひも) 花の蕾(つぼみ)が開くことを下紐の解けることにたとえた表現。花の紐。 ●花の下臥(したぶし) 花の下に臥すこと。桜の花の下に寝ること。花の枕。 ●花の風巻(しまき) 花を飛沫にたとえていう。*夫木‐四「花のしまきのなみたかくみゆ」 ●花の=定座(じょうざ)[=座(ざ)] 連歌・連句の一巻で、花の句をよみこむべきところ。歌仙では初裏第一〇句、名残裏第五句、百韻では、初裏第一三句、二の裏第一三句、三の裏第一三句、四の裏(名残裏)第七句。 ●花の姿(すがた) 1 花のかたちや有様。花の様子。特に、梅・桜の花についていう。《季・春》 2 花のように美しい容姿。艶姿。 ●花の便(たよ)り 1 花が咲いたついで。 2 花が咲いたという音信。花便(はなだより)。花信(かしん)。 ●花の露(つゆ) 1 花の上においた露。花に宿る露。特に、桜花におく露。《季・春》 2 薔薇の花を蒸留して取った水。薔薇露。 1 江戸時代、女性用の上等の鬢付(びんつけ)油の名前。 2 化粧水の名。婦人がおしろいをつける前につけて艶を出すもの。 ●花の寺(てら) 京都市西京区大原野南春日町にある勝持寺の通称。 ●花の頭(とう) (「とう」は当・撓・薹とも書く)祭りのとき頭屋(とうや)などから花を供える式。また、その式を中心行事とする祭り。名古屋市熱田神宮、京都市松尾神社など類例が多い。 ●花の常盤(ときわ) 花が永遠に変わらず、美しく咲いていること。 ●花の=(とざし)[=枢(とぼそ)] 花の咲きこめているのをとざしに見立てた表現。また、一面に花に囲まれた家。 ●花の=波(なみ)[=小波(さざなみ)] 花の散り浮かぶ水面にたつ波。《季・春》 ●花の錦(にしき) 1 花の美しいのを錦に見立てた表現。 2 衣の上に花の散りかかるのを錦に見立てた表現。また、美しい衣装を花に見立てていう。 ●花の春(はる) 1 花の咲く春。 2 新年をいう。新春。《季・新年》 ●花の紐(ひも) =はな(花)の下紐 ●花の衾(ふすま) 桜花が身に散りかかるのを夜具に見立てた表現。 ●花の吹雪(ふぶき) 桜花の乱れ散るさまを吹雪に見立てた表現。 ●花の父母(ふぼ) (草木を潤し養うところから)雨や露のこと。*和漢朗詠‐上「養ひ得ては自ら花の父母たり」 ●花の帽子(ぼうし) =はなだぼうし(縹帽子) ●花の幕(まく) =はなみまく(花見幕) ●花の丸(まる) 模様の一つ。花のついた枝や茎を丸く図案化したもの。 ●花の都(みやこ) 都の美称。はなやかな美しい都。また、春、今を盛りと花の咲いている都。《季・春》「花の都パリ」 ●花の=下(もと)[=本(もと)] 1 花の咲く木の下。花の陰。《季・春》 2 鎌倉・南北朝時代、地下(じげ)層の連歌愛好者。のち、連歌の巧者・宗匠の尊称となり、東山時代に公的な宗匠職と合して連歌最高の権威者・指導者として将軍から扶持が与えられ、公認された称号。俳諧では、寛政二年に加藤暁台が二条家の許しを得てこの称号を用いた。 3 (2から転じて)武術、諸芸などの名誉ある主領。 ●花の宿(やど) 花の咲いている家。また、花のある宿。《季・春》 ●花の山(やま) 1 一面に咲いている山。《季・春》 2 江戸時代、大坂の遊里で、売れっ子をいう。全盛。 ●花の雪(ゆき) 1 白く咲いている花、また花の散るのを雪に見立てた表現。花吹雪。《季・春》 2 香の名。*名香目録「花の雪伽羅」 ●花の装(よそお)い 花のように美しい装い。美人の装い。 ●花は折りたし梢(こずえ)は高し ほしいけれども手に入れる方法がない。思うようにならないことのたとえ。 ●花は=桜木(さくらぎ)[=桜に]人は武士(ぶし) 花では桜がすぐれており、人では武士がすぐれている。 ●花は根(ね)に帰る 咲いた花は、その木の根元に散り落ちて、こやしになる。物はみなその本に帰ることのたとえ。 ●花も恥(は)じらう うら若く美しい女性の形容にいう。 ●花も実(み)も=ある[=具(ぐ)す] 木または枝に花、実ともに有する。外観も美しく、内容も充実している。名実ともに備わる。 ●花より団子(だんご) 風流よりは実利をとる、外観よりは実質を重んじる、虚栄よりも実益のある方を喜ぶことのたとえ。 ●花を折(お)る (花を折ってかざす意)衣装や身づくろいなどをはなやかにする。美しく着飾りたてる。 ●花を咲(さ)かせる 1 はなやかにする。にぎやかにする。盛んにする。「話に花を咲かせる」 2 栄えるようにする。成功する。名をあげる。 ●花を添(そ)える 美しさを加える。はなやかさを増す。「錦上花を添える」 ●花を吹(ふ)く 陰暦九月九日、重陽の節供に菊の酒を飲む際にまじないとして杯の中の菊の花を吹く。 ●花を持(も)たせる 勝利や功名を相手にゆずる。相手を立てる。 ●花をやる 1 はなやかなさまをする。華美なよそおいをする。着飾る。*俳・犬子集‐二「年年に花をやるなり姥桜」 2 豪勢な遊びをする。豪奢な生活をする。楽しいことをする。特に色事をする。*浮・日本永代蔵‐一「爰の都に花をやって、春をゆたかに暮され」 3 世にもてはやされる。人気を集める。*随・独寝‐下「黒文字の上々といふ評判にのって、たんと花をやりぬれば」

日国 ページ 16452 での単語。