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ゆ🔗⭐🔉
ゆ
〔助動〕(活用は「え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・○」。四段・ラ変動詞の未然形に付く)自発・受身・可能の助動詞。中古の「る」に当たる。
1 自発。ある動作が自然に行われること、無意識的にある行為をしてしまうことを表す。*万葉‐三七三二「ぬば玉の夜はすがらにねのみし泣か由(ユ)」
2 受身。他から動作を受ける意を表す。動作の受け手(「ゆ」が付いた動詞に対する主語)は、人間・動物など有情のものであるのがふつうで、また、その動作を受けることによって、被害や迷惑、または恩恵などを受ける意味をも含むことが多い。動作の行い手は、「…に」の形で表現される例が多い。*万葉‐八〇四「か行けば人に厭(いと)は延(エ)かく行けば人に憎ま延(エ)」
3 (打消の助動詞を伴って)不可能の意を表す。*書紀‐斉明四年一〇月・歌謡「おもしろき今城のうちは忘ら
(ユ)ましじ」
[補注](1)「らゆ」とともに、中古以降の「る」―「らる」に対応する。ただし、上代にも「る」の例は少数ある。命令形は現れない。(2)語源上、「見ゆ、燃ゆ、消ゆ、絶ゆ」など、いわゆる他動詞を対応形にもつヤ行下二段動詞の語尾と同じもので、作用を自然に発動する変化またはその状態としてとらえるのが原義と考えられる。それが、「見ゆ」にも「人に見ゆ」などの用法のあるように、受身の意味を明らかにするために用いられた。(3)四段活用動詞の未然形に付くものを助動詞として取り扱うが、「思ふ」、「聞く」に付いた場合のように、早く「思ほゆ」(さらに「おぼゆ」)、「聞こゆ」となって、一動詞の語尾として扱われるものがある。(4)上一段活用動詞「射る」について、「射ゆ」の受身用法の例があり、「見ゆ」と考え合わせると、古くは上一段動詞にも「ゆ」が付いたと見られる。(5)中古には、漢文訓読に「地蔵十輪経元慶七年点‐七」の「当来に有ら所(エ)む罪咎を防護すべし」のように、多少引き継がれ、また、「あらゆる」「いはゆる」のように連体詞として固定したものが後世まで用いられたほかは、一般に「る」に代わった。

日国 ページ 19753 での【ゆ】単語。