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やま【山】🔗🔉

やま【山】 1 火山作用、侵食作用、造山作用によって地表にいちじるしく突起した部分。高くそびえたつ地形。また、それの多く集まっている地帯。山岳。古くは、神が住む神聖な地域とされ、信仰の対象とされたり、仏道などの修行の場とされたりもした。*古事記‐中・歌謡「平群の夜麻(ヤマ)の熊白檮(くまかし)が葉を」 2 特に植林地、伐採地としての山林。種々の産物を得たり、狩猟したりするための山林。*万葉‐七七九「板葺の黒木の屋根は山(やま)近し」 3 鉱石、石炭などを採掘する場所や諸施設。鉱山。*梅津政景日記‐慶長一七年三月八日「わきさし成共、<略>やまへは法度に候間」 4 (墓地が、多く山中、山麓に営まれたところからいう)墓場。墳墓。山陵。みやま。*源氏‐須磨「御山に参り侍るを。御言伝やと聞え給ふに」 5 土を盛り、石を積んで1に擬してつくったもの。築山。*源氏‐桐壺「もとの木立、山のたたずまひ、おもしろき所なりけるを」 6 高く盛りあがった状態、またはその物を1になぞらえていう語。 種々のものを多数または大量に盛り上げ、あるいは積み重ねた様子。うずたかい形。大きな堆積。「瓦礫の山」「借金の山」*蜻蛉‐上「山とつもれるしきたへの枕の塵も」物の凸起した状態。また、その部分。「帽子の山」*滑・浮世風呂‐三「鼈甲の櫛さ<略>山(ヤマ)の恰好から何から今風で」兜(かぶと)の鉢(はち)。灸(きゅう)のあとのはれているところ。 7 物事の程度がはなはだしいことのたとえ。程度が高い様子。*古今‐一〇五六「なげきこる山とし高くなりぬれば」 8 継続または連続している物事が頂点に達したのを、1の頂上にたとえていう。 文章や演芸などで、そのおもしろさが最高潮となるところ。また、一般に物事がいちばんよいと感ぜられるところ。絶頂。クライマックス。*滑・客者評判記‐上「わかりもせぬ狂言を、あそこが山だの爰が腹だのと」事の成りゆきにおいて、もっとも重大なところ。事の成否がきまるところ。山場。「今日明日が山だ」病気のもっとも危険な段階。峠。近世には、特に疱瘡(ほうそう)についていう。「山を越す」可能なかぎり。せいいっぱいのところ。関の山。 9 (1は高くゆるがないところから)仰ぎみるもの、頼りとするもの、または、目標とするもののたとえ。*後撰‐一三二七「かさとりの山とたのみし君をおきて」 10 祭礼に出る山車(だし)で、1の形に作った飾り物。京都の祇園祭では、鉾(ほこ)よりもおおむね小型で、真木(しんぎ)を立てず、構造の簡単なものをいう。多くは上に松を立て、根元に1をかたどったものを作る。舁(か)き山と曳(ひ)き山との二種類がある。また、山鉾の総称。 11 猪・鹿などを捕らえるために仕掛ける落とし穴。 12 遊女。女郎。 13 (鉱脈を探し当てることが、投機的な仕事であるところから)3から転じて、 思いがけない幸運をあてにすること。万一の幸運をねらって事を行うこと。投機的な仕事。また、その対象となる物事。やまごと。「山が中る(外れる)」*洒・蕩子筌枉解「おほきに泣くは、まったく山がそんじてのこととみへたり」確かな根拠がなく、偶然の的中をあてにしてする予想。特に、学生などが試験に出題される箇所を予想すること。また、その箇所。「山を掛ける(張る)」見せかけや誇張などで他人をあざむくこと。いんちき。はったり。 14 売切れ。品切れ。主に飲食物についていう。 15 犯罪事件をいう俗語。 比叡山延暦寺の称。天台の霊場としての比叡山。 〔接尾〕 1 山、特に山林や鉱山を数えるのに用いる。 2 盛り分けたものを数えるのに用いる。「一山百円」 〔語素〕 1 動植物の名の上につけて、それが同種類または類似のものに比して、野生のもの、あるいは山地に産するものであることを表す。「やますげ(山菅)」「やまどり(山鳥)」「やまもも(山桃)」など。 2 動詞、形容詞などに添えて、しゃれていう語。特に意味はない。近世、通人の間に用いられた。「ありがた山のほととぎす」*洒・南閨雑話「どふぞして飯を一っはい働山は、出来まいかの」 ●山=片付(かたづ)く[=片掛(かたか)く] 山に近く寄っている。一方が山に沿っている。片側が山に接している。*万葉‐一八四二「山片就(やまかたつき)て家居せる君」 ●山が=見(み)える[=見られる] 前途の見込みがつく。難所や困難な時期を乗り切って、将来の見通しが立つ。 ●山から里(さと) 物事があべこべであることのたとえ。 ●山高きが故(ゆえ)に貴(たっと)からず (「実語教」の「山高故不貴、以樹為貴」による)どんなに見かけがよくても、内容が伴わなければ立派なものではない。外観よりも実質が大切であることのたとえ。 ●山高く水(みず)長し 仁者、君子の徳が優れていることを、山があくまで高くそびえ、河水がとこしえに流れ続けることにたとえていう語。山高水長。 ●山と言えば川(かわ)と言う 人のことばに反対ばかりすることのたとえ。右といえば左。 ●山とし高(たか)し 山のように高い。年齢の多く積もることなどにいう。 ●山なす =やま(山)をなす ●山に千年(せんねん)海に千年 (山に千年住み、海に千年住んだ蛇は竜になるという俗説から)世の中の経験を十分に積んで物事の裏表に通じていること。また、そのようなしたたか者。海千山千。 ●山眠(ねむ)る 冬の山の静まりかえった形容。《季・冬》*俳・寛政句帖‐四年「君が代や風治りて山ねむる」 ●山の井(い) 山中の、湧水をたたえたところ。掘井戸に対して浅いところから、和歌では「浅い」の序詞の一部としても用いる。やまい。 ●山の神(かみ) ⇒親見出し ●山の口明(くちあけ) 共有山野の草木・果実などの採取の禁止を解くこと。山開(やまあけ)。 ●山の崎(さき) 山の突き出たところ。尾根の先端。山の鼻。 ●山の幸(さち) =やまさち(山幸) ●山の雫(しずく) 山の樹木などからしたたる雨露のしずく。 ●山の末(すえ) 山の頂。峰。また、山の奥。 ●山の裾(すそ) 山の麓。やますそ。山脚。 ●山の袖(そで) 山の重なったもの。山あいの袖。 ●山の撓(たお)り 山の尾根のくぼんだところ。山の鞍部。山のたわ。山たわ。*万葉‐四一二二「あしひきの夜麻能多乎理(ヤマノタヲリ)に」 ●山の司(つかさ) 1 山のもっとも高いところ。山の頂。頂上。 2 山林を管理する役人。山をつかさどるもの。また、かりゅうど。 ●山の手 ⇒親見出し ●山の刀禰(とね) (「刀禰」は山賊の長を戯れていう語)山賊のかしら。 ●山の錦(にしき) 秋、山の草木が美しく紅葉したさまをたとえていう語。《季・秋》 ●山の端(は) 山を遠くからながめたとき、山の空に接する部分。稜線(りょうせん)。 ●山の鼻(はな) 山の尾根の突き出た部分。山の先端。やまはな。山の崎。 ●山の額(ひたい) 山の差し出たところ。一説に、山の頂上に近いところ。山の小額。 ●山の辺(べ) ⇒親見出し ●山のもの 1 山にいるもの。山に住んでいるもの。 2 山に産するもの。山の産物。 ●山笑(わら)う 新緑や花などによって山全体がもえるように明るいさまになる。《季・春》*俳・笈の若葉「山笑ふ柳をしたふ名残かな」 ●山を当(あ)てる 1 埋蔵物のある山を掘り当てる。 2 転じて、可能性の少ないことを成就する。 ●山を鋳(い)海を煮る 山からは鉱物を採掘して金属を鋳る、海からは海水を煮て塩を採る。国内に産物が豊富であることのたとえ。 ●山を=掛(か)ける[=張る] 1 万に一つのしあわせをねらって事をする。また、当て推量で物をいう。 2 試験で、問題に出そうな箇所を推定する。 ●山をなす 山のような形をなす。物がうず高く積んである。やまなす。 ●山を抜(ぬ)く (「史記‐項羽本紀」の「力抜山兮気蓋世、時不利兮騅不逝」から)力が強大で山を抜き取るほどである。 ●山を踏(ふ)む 犯罪を実行することをいう俗語。

日国 ページ 19823 での単語。