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し‐ぜん【自然】🔗⭐🔉
し‐ぜん【自然】
1 山、川、海、草木、動物、雨、風など、人の作為によらずに存在するものや現象。また、すこしも人為の加わらないこと。それらを超越的存在としてとらえることもある。「自然の恵み」「自然の摂理に従う」
2 天からうけた性。物の本来の性。天性。本性。*太平記‐二「六義数奇の道に携らねども、物類相感ずる事、皆自然なれば」
3 「しぜん(自然)の事」の略。
(形動)「しぜんと」「しぜんに」の形、または単独で副詞的にも用いる。
1 故意にするわけではないのに、ひとりでになるさま。おのずから。「自然に戸が開く」*枕‐二六七「しぜんに宮仕所にも、親・はらからの中にても、思はるる思はれぬがあるぞいとわびしきや」
2 あることがらが、誰にも抵抗なく受け入れられるさま。また、行為や態度がわざとらしくないさま。「そう考える方が自然だろう」「自然なやり方」
3 そのうち。いずれ。*浮・西鶴織留‐五「自然また請出す事も有」
4 物事が偶然に起こるさま。ぐうぜん。*浮・西鶴諸国はなし‐二「らくちうをさがしけるに、自然(シゼン)と聞出し」
5 異常の事態、万一の事態の起こるさま。もし。もしかして。万一。ひょっとして。*曾我物語‐八「しぜんに僻事し出候て」
[補注]⇒「じねん(自然)」の補注。
●自然とも
1 万一。もしかしたら。*狂言記・末広がり「もししぜんとも、きげんのあしうおぢゃろそうは」
2 ひとりでに。おのずから。*浮・新可笑記‐三「女かく身をもつからは自然とも家をととのひける」
●自然に帰(かえ)れ
(フランスRetournons
la natureの訳語)社会の因襲から脱して、人間本来の状態にかえろうではないかという呼びかけ。ジャン=ジャック=ルソーの思想を端的に表現したことば。
●自然の国(くに)
1 (ラテンregnum naturaleの訳語)アウグスティヌス、トマス=アクィナス、ライプニツなどの用語。道徳的、宗教的な意味をもつ「恩寵の国」または「神の国」に対立して、現実の世界の物理的、社会的、政治的な原理が支配する領域をさす。
2 カントでは、「目的の国」に対立して、自然法則の支配する現象界、感性界をさす。
●自然の事(こと)
(ふつう、「自然の事あらば」のような仮定条件、「自然の事あらむ時」のような未来表現の中で用いられる)
1 自然に起こる予期できない事件。万一の事。もしもの事。*平家‐九「自然の事のあらん時、物の具して頼朝がのるべき馬なり」
2 特に、死ぬことをいう。もしもの事。*浮・男色大鑑‐二「此上に十太郎自然の事あらば」
●自然の数(すう)
人の力では企て及ぶことのできないこと。自然の運命。自然のなりゆき。
●自然の斉一性(せいいつせい)
(英uniformity of natureの訳語)特殊から普遍を推理しようとする帰納法論理が前提とせざるをえない公理の一つ。自然は、同一条件下では同一原因から同一結果を生みだすような斉一性をもっているという公理。
●自然の光(ひかり)
(ラテンlumen naturaleの訳語)人間に神から与えられた生得的な認識能力。アウグスティヌスでは、生まれつき与えられた理性。トマス=アクィナスでは、神の啓示(超自然の光)と対比された事物の原理を洞察する理性の光。
●自然は飛躍(ひやく)せず
(ラテンnatura non facit saltumの訳語)自然は一挙に変化することなく、徐々に変わっていくものだという考えを示す生物学者リンネのことば。



日国 ページ 9560 での【自然】単語。