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こと【事】🔗⭐🔉
こと【事】

名
〔人間の意識や思考の対象となるもののうち、「もの」の性質・状態、変化、その関係など、抽象的な事柄をさす。実際に見たり触れたりすることのできる「もの」に対する〕
この世に起こる現象や出来事、人間の行為、また、それらの成果・推移などを広くいう。特に、大きな出来事や事件をいう。
「━が起こる前に手を打とう」
「力を尽くして━に当たる」
「━は重大だ」
「心臓発作でも起こしたら━だ」
《連体修飾語を受けて》それによって特徴づけられるさまざまな事柄をいう。
「それはある日の暮れ方の━だった」
「どんな━があってもそこを動くな」
「困った━になった」
「人生には辛い━もあるさ」
「細かい━にはこだわるな」
《「…の━」の形で》それに関連するさまざまな事柄を表す。
「釣りの━なら任せてくれ」
「今後の━は頼む」
「病気の━が心配で…」
《人代名詞や人を表す語+「の━」の形で》その人に関するさまざまな事柄を表す。また、その人そのものについてもいう。
「老父の━が心配だ」
「彼女の━が好きだ」
「太郎君の━をよろしく」
意味の境界が曖昧あいまいな言い方。「…のこと」を省くと、より直截ちょくせつ的な表現となる。「太郎君をよろしく」
《連体修飾語を受けて》ことばで表される内容を表す。意味や指示対象物をいう。
「急にそんな━を言われても困るよ」
「ILOとは国際労働機関の━だ」
「何の━かさっぱり分からない」
《人代名詞に付いて》それについて言う意を表す。…に関して言うと。
「私━この度転居いたしました」
「私こと(=私儀)」の形で使われることが多い。
《雅号・通称などと本名との間にはさんで》同一人物であることを表す。すなわち。
「金太郎━坂田金時さかたのきんとき」
《活用語の連体形を受けて》
《思考・知覚・発話などの精神作用を表す動詞を伴って》精神作用の内容を表す。〜するところの事柄の意。…ところ(のもの)。
「思っている━を言いなさい」
「私が見た━を申し上げます」
活用語を名詞化する。
「見る━は信ずる━である」
「僕は本を読む━が好きだ」
「こと」は文法的に働くだけで、何らかの意味を追加するわけではない。
この応用として、次のような助動詞相当に働く連語がある(それぞれの項目を参照)。→…ことができる(可能。できる

)・…ことだ(勧告や要求。こと
)・…ことがある(経験。また、状況による事態の成立)・…ことがない(未経験)・…ことはない(不必要・事態の不成立)・…ことにする(意志に基づく決定。また、みなし行為)・…こととする(意志に基づく決定)・…ことになる(事態の成立・口裏合わせ・必然的結論など)・…こととなる(事態の成立)
命令的な伝達を表す。…ように。
「決して口外しない━」
「五時までに集合の━」
《「…━だ」の形で》
特定の相手に対する勧告・忠告・要求などを表す。…することが肝心[最善]だ。
「君はとにかくゆっくり休息する━だ」
「文章上達の秘訣ひけつはまず本を読む━だ」
感動・詠嘆を表す。
「故郷の山々は何と懐かしい━だ」
「いやあ、うらやましい━で…」

は、「…ことです(丁寧語)」「…こった(俗語)」などのバリエーションがある。「まあ、景色の美しい━」など、「だ」を伴わない言い方も多い。
《「…という━だ」「…との━だ」の形で》伝聞を表す。…と聞く。…という。
「もうすぐ帰れるという━だ」
「宜よろしくとの━だった」
伝え聞いた情報を直接引用して述べる気持ちで使う。丁寧形は「…という[との]ことです」。
《「…━か」の形で》感動・詠嘆を表す。…ことだろう。
「この絵の何と素晴らしい━か」
「どんなに辛い思いをした━か」
やや古い言い方に「(何と)…ことよ」がある。「めでたい━よのう」
《「…━だろう」の形で》推測を詠嘆的に表す。
「さぞかし無念だった━だろう」
丁寧形は「ことでしょう」。
《「…━だし」の形で》理由や根拠を述べて(または、他にも理由や根拠があることをほのめかして)、下に続ける。
「還暦を迎えた━だし、引退を考え始めているところだ」
「子供のした━だし、許してくれまいか」
「ことだ」の形で、いったん言い切る言い方もある。「夏休みも終わった━だ。あとは頑張るしかない」。また、倒置させて終助詞的にも使う。「ここは私が持とう。先日ご馳走になった━だし…」
丁寧形は「…ことですし」。
《「…━この上ない」の形で》事柄の程度が最高である意を表す。
「面白い━この上ない」
「手のかかる━この上ない」
《「━に(は)」の形で、感情を表す活用語の連体形や完了の助動詞「た」の付いた形を受けて》その感情を事実として強調する。
「ありがたい━に(は)、全員が無事だった」
「困った━に、話すわけにはいかないのだ」
前置きや挿入句の形で副詞的に使う。
《「…━と思う」「…━と存ずる」などの形で》それが相手や第三者についてなされた推測の内容であることを明示する。
「突然の申し入れにさぞや驚かれた━と存じます」
「御承知の━と思いますが、…」
「御迷惑とは思いますが/御迷惑なこととは思いますが」のように、「なこと」は省略しても意味に変わりはないが、丁寧さの度合いは落ちる。
《「…の━」の形で、程度を表す副詞を受けて》その意味を強める。
「なおの━、君が悪い」
「いっその━死んでしまいたい」
「勿論もちろんの━、賛成だ」
《「A━はAだが…」の形で》事実として肯定しながらも、十全に肯定できない要素があることをいう。一応Aであることは確かだが、しかし…。
「行く━は行くが、みずから進んでではない」
「好きな━は好きだが、君ほどではない」
「労作なことは労作だが、深みがない」など、名詞を受けるときは、名詞+「な」の形をとることも多い。
《形容詞の連体形を受けて》全体で副詞のように使って述語を修飾する。
「長い━(=長い間)待たされた」
「早い━(=早めに)済ませてしまおう」
《「…って━よ」の形で》〔俗〕さとすような調子で、相手を説得したり言い含めたりする。
「気にするな。いいって━よ」
「泣いたって仕方がないって━よ」
《「…までの━だ」の形で》→まで
《「…だけの━はある」の形で》→だけ
《動詞の連用形・名詞・形容動詞の語幹などに付いて、「…ごと」と濁って》そのような事柄の意を表す。
「願い━・隠し━・考え━」
「勝負━」
「きれい━」
◆
事件・事態など、実質的な意味を表す
は「事」と書くのが標準的(事が起こる・事を急ぐ)。形式的な意味を表す
〜
は「こと」と書くのが標準的(彼のことが心配だ・見たことがある)。
は、新聞では原則として漢字で書くが、一般にはかな書きも多い(勝負事/勝負ごと)。子見出しに立てた「事が事」「事ここに至る」のような「事」で始まる成句は、漢字で書くのが標準的。
関連語
大分類‖事‖こと
中分類‖事‖こと



























































明鏡国語辞典 ページ 2221 での【事】単語。