
口を動かして(また、字に書いて)思っていることなどをことばで表す。
「『あ、雨』と━・って走り出す」
「確か彼は婚約したとか結婚したとか━・っていた」
「意見[文句・うそ・お礼・不満・冗談・泣き言・言いたいこと・寝言]を━」
「電話するように━・っておきます」
「━に及ばない(=当然すぎて言う必要がない。いうまでもない)」
「よく━よ(=よくもぬけぬけと言ったものだの意で、厚かましい発言などを非難していうことば)」

評価する意では、評価を表す形容動詞連用形を伴う用法もある。「彼のことを悪く[ぼろくそに]━」

「言う」は発話行為の全般にわたって広く使い、「話す」は主にまとまった内容をことばにする意で限定的に使う。「今日は!」「よろしくお伝え下さい」などは、「言う」だが「話す」ではない。その点では「しゃべる」「語る」「述べる」も「話す」と同様。

「言う」の尊敬語には「おっしゃる・仰せられる」が、謙譲語には「申し上げる」や「言上
ごんじょうする・上奏する・啓上する」などが、丁重語には「申す」がある。

ある語をあるしかたで発音する。その語形でとなえる。
「『ペダル』と━・わずに『ペタル』と━」

物事などをことばで(また、あることばを別のことばで)表現する。
「これを奇跡と━・わずして何と━・おう」
「彼をこそ天才と━べきだ」

記号(特に、ことば)がある内容を表す。指す。示す。
「この論説は人類が危機に陥っていることを━・っている」
「案内図の━とおりに進む」

《「と━」「と━・われる」の形で、終止形で言い切る文を受けて》多くの人がそう述べ、そう認めていることを表す。…ということが言われる。…ということだ。…とのことだ。
「一人前になるには十年の修業がいると━」
「台風は明日にも上陸すると━」
「二〇世紀は一般に科学の時代だと━・われる」

「…と言う」の場合、主語は現れにくく、「一般に」「俗に」「世に」などの副詞句となじみやすい。

《補助的に》

《「と━」の形で》下の語で上の語の内容を説明するのに使う。
「これが会社と━組織の在り方だ」
「知ると━ことは必ずしも幸せなことではない」
「人間と━ものをもっと理解しなさい」
「出席できないと━理由を説明する」

列挙・例示する気持ちを添えていうときは「…と━・った」とも。「文学とか芸術とかと━・ったものには興味がない」

《「と━」の形で、上に数量を表す語を伴って》上の語の表す数量を特別のものとみなして、下の語でその内容を説明するのに使う。
「二〇〇キロと━体重はいかにも重い」
「五万と━群衆が押しかけた」
「一〇億円と━金が浪費された」
「一〇人と━わずかな参加者しかなかった」

《「Aと━A」の形で》それに属するものはすべての意を表す。また、強調を表す。
「窓と━窓は閉ざされている」
「条件と━条件は洗い出した」
「今度と━今度は我慢がならない」
「今日と━今日こそ決起すべき時だ」

《「Aと━・いBと━・い」の形で》複数の事柄を例示してとりたてる。AもBも。AだってBだって。
「手と━・い足と━・い傷だらけだ」
「知性と━・い感性と━・い申し分ない」

AB以外にも例示できるといった含みを伴い、より明示的に「…Cと━・いDと━・い…」と続けることもある。また、否定表現「Aと━・わずBと━・わず…」は、ABは言わずもがなの気持ちで、意味を強める。区別なしに全部。「顔と━・わず手と━・わず虫に刺された」

《「Aと━かBと━か」の形で》AとBのどちらが適切な言い方か。
「寛大と━か人がいいと━か、全財産を与えてしまった」

「Aと━かB」の形で、Aと言うよりBと言う方が適切だ、の意で使う。「冷静と━か冷淡な人だ」「時間をかけると━かダラダラ働いている」

「Aと━かB」の「A」だけで言いさして断定を避けるのに使われることがある。「行きたくないと━か」

《「こう」「そう」「ああ」+「━」「━・った」の形で》それと類似または近似するという気持ちを添えながら、物事や事柄を例示する。この[その・あの]ような〜。こんな[そんな・あんな]〜。
「こう━場合はこうするといい」
「そう━条件なら引き受けよう」
「ああ━・ったことがときどき起こる」

《「どう」+「━」「━・った」の形で》物事や事柄を定かではないものとして示す。どのような〜。どんな〜。
「彼がどう━人かは知らない」
「二人の間にはどう━・ったことがあったのだろうか」

《「これ」+「と━」「と━・った」「と━・って」の形で、下に否定の語を伴って》特にとりたてていうべきことがない意を表す。
「これと━問題点も見当たらない」
「特にこれと━・った特徴がない」
「別にこれと━・って意見はありません」

《「どれ」「なに」「どこ」「だれ」「なぜ」「いつ」+「と━・って」の形で、下に否定の語を伴って》特にとりたてていうべき物事・場所・人・理由が見当たらない意を表す。
「なにと━・って欲しい物はない」
「どこと━・って体に悪い所はない」
「だれと━・って特に希望する人はいない」
「なぜと━・って特別の理由はない」
「いつと━・って今日ほど絶好の日はない」

問いに答える形で、要件を総当たりする気分を伴う。

《「何
なん」「どう」+「と━ことはない」の形で》特にとりたてて問題にすべき点がない意を表す。どうこういうことはない。なんてことはない。
「総会はなんと━こともなく終わった」
「あんなやつなど、どうと━ことはない」

《「と━のは」の形で》名辞の定義を表すのに使う。また、名辞の指す物事を主題として取り上げるのに使う。
「『人』と━のは言葉を使う動物の意だ」
「世間と━のは厄介なものだ」
「ある人と━のは誰のことだ」
「結婚すると━のは本当か」

《「と━と」「と━・えば」「と━・ったら」の形で》題目を提示するのに使う。…(ということ)について言えば。…を話題にすれば。…に言及すれば。
「『研究』と━と少し大げさだが…」
「相談と━と例の件ですか」
「優勝と━・えば今日は千秋楽だ」
「最も混雑する時間帯と━・ったら朝の七時台だ」

《「かと━と」「かと━・えば」「かと━・ったら」の形で》提示された疑問に対する答えを述べるときの前置きに使う。
「犯人は誰かと━と、お前だ」
「なぜ休んだかと━と、頭痛がひどかったからです」
「どちらが好きかと━・えば、A子さんだ」

《「Aと━・えばA」の形で》…と言えないこともない意を表す。
「寒いと━・えば寒い」
「優勝に貢献したと━・えば貢献した」

判断・評価に迷う気持ちを暗示し、下に同趣の否定・反意表現を伴うことも多い。…とも言えるし…でないとも言える。「授業は面白いと━・えば面白い、少々退屈だと━・えば退屈だ」

《「から━と」「から━・えば」「から━・って」の形で》話し手の基準となる視点を表す。…からする[見る]と。
「消費者の立場から━と値下げ競争は好ましいということになる」
「彼の主義から━・えば納得はすまい」
「値段から━・ってこちらがお得です」

《状態を表す語+「と━・ったらない」の形で》言いようがないほど…だの意で、程度を強調する。これ以上に…なことはない。…ったらない。
「すばらしいと━・ったらない」
「疲れたと━・ったらない」
「褒められたときのうれしさと━・ったらない」

《「と━ことだ」の形で》伝聞を表す。…とのことだ。…だそうだ。
「今年は一〇年ぶりの猛暑だと━ことだ」

《「と━ものだ」の形で》話し手の判断を断定・強調する。
「成功したのだから苦労のしがいもあったと━ものだ」
「それはあんまりと━ものだ」

《「とは━・え」「と━・って」「と(は)━・っても」「とは━ものの」「とは━・いながら」などの形で》前提を認めたうえで、それに反することが成り立つ意を表す。…だけれども、しかし。…だとしても。…といえども。
「親しい間柄とは━・え、礼儀を忘れてはいけない」
「いやになったからと━・って辞めるわけにもいかない」
「今日中にできると(は)━・っても何の保証もない」
「読んだとは━ものの精読してはいない」
「知らざることとは━・いながら、誠に失礼しました」

接続詞的にも使う。「休みたい。とは━・え、休むわけにはいかない」

《「(そう)かと━・って」の形で、下に否定的な表現を伴って》前提から予想されることが、現実には成り立たない意を表す。しかし、そうはいうものの。さりとて。
「害にはならないが、かと━・って役に立つわけでもない」

《「それと━のも」の形で、多く下に「…から(なの)だ」など理由を表す表現を伴って》前文が成り立つ理由を補足的に説明するのに使う。なぜそうかと言うと。
「料理の腕前は玄人はだしだが、それと━のも食い道楽だからだ」

《「からと━・って」の形で、下に否定的な表現を伴って》理由となるべき根拠が一般に認められるとしても、必ずしも正当な理由とはならない意を表す。…からって。
「入選したからと━・ってそんなに自慢するものではない」
「作曲家だからと━・ってピアノが弾けるとは限らない」
「社長だからと━・ってごり押しは困る」


自五


《擬声語+「(と)━」の形で》人以外の動物が声を出す。鳴く。また、物が音を立てる。鳴る。
「犬がワンワン━・って
えさを求める」
「床がみしみし━」
「雨戸ががたがた━」
「腹がグーグー━」
◆

「言う」の発音は「ユー」であるが、「言います」などでは「イー」となる。現代仮名遣いでは、語幹を「い」にそろえて「いう」と書くことになっている。「ソーユー」「ユワユル」なども正式の仮名遣いとしては「い」(そういう・いわゆる)。


〜

は「言」、



と

はかな書きが一般的。「謂」は主に「謂わゆる」「…の謂
いい」「謂わば」などと、「云」は「田中と云う人」「『真実』と云う語」などと使うが、今はかな書きが一般的。
言える
関連語
大分類‖言う‖いう
中分類‖
言う‖いう
【言い得て妙みょう】
巧みに言い表しているさま。