
「伺う」が、訪問したり行ったりする先の人物を高める敬語であるのに対し、「参る」は丁重な物言いをして相手(=聞き手・読み手)に改まった気持ちを表す敬語。たとえば佐藤氏に向かって「田中氏のお宅に

伺います/参ります」という場合、「伺う」は訪問する先の田中氏を高め、「参る」は聞き手である佐藤氏に対する丁重さを表す。

「伺う」は必ず高める人物がいる場合に使うが、「参る」は高める人物がいない場合にも使える。「明日出張で大阪へ
×伺います/
○参ります」「〔取引先の社長に向かって〕先日、うちの会長の別荘に
×伺いまして…/
○参りまして…」

「参る」を尊敬語のように使って他人の動作についていうのは誤り。「
×
先生は祝宴には参られますか」「
×
ご面会の方が受付に参っていらっしゃいます」

〔武士のことばで、多く命令形で〕「行く」「来る」の尊大語。目上の人が目下の人の行為を低めていう。
「その方は一足先へ━・れ

芥川

」
「近う━・れ」

〔主に武士のことばで〕「行く」「来る」の荘重語。重々しくもったいをつけていう。
「御坊たち、うちそろってよく━・られた

柴田錬三郎

」
「殿は、いずれへ━・られまする

司馬遼太郎

」
「もそっと近う━・られよ」
「わしには一向に合点が━・らぬぞ」
◇この用法では尊敬を表す「参られる」の形もよく使う。

神仏、先祖の墓などにもうでる。参拝する。参詣
さんけいする。
「出雲大社[先祖の墓]に━」

丁重語意識がなくなり、「参られる」「お参りになる」など、尊敬語化も自由に行われる。

負ける。降参する。
「『どうだ、━・ったか』『うん、━・った、━・った』」
「見事なお手並み、━・りました」

閉口・困惑する。よわる。こまる。
「この混雑には━なあ」

困難な状況で心や体が弱る。へたばる。
「こう忙しくては体[神経]が━」

〔やや古い言い方で〕死ぬ。
「そのような時には永く苦しませずに首をねじって━・らせてやるのだ

倉田百三

」

異性に心を奪われる。
「彼は彼女にすっかり━・っている」


他


《終止形を記号的に使って》目上の人にこの手紙を差し上げますの意で、手紙の脇付
わきづけにする語。男女ともに使う。
「母上様━」
◇もと、差し上げる、…して差し上げるの意で、その動作の及ぶ相手を敬ったことから。


補動


《動詞連用形+「て[で]」に付いて》

「…て行く」「…て来る」の丁重語。相手(=聞き手・読み手)に対する改まった気持ちを表す。
「〔知人への手紙で〕日増しに寒くなって━・ります」
「これまで種々の職業を体験して━・りました」
「先日は信州まで行って━・りました」
「〔課長に対して〕私が部長のご都合を伺って━・りましょう」

〔武士のことばで、多く命令形で〕「…て行く」「…て来る」の尊大語。
「一度こちらへ連れて━・れ」

〔主に武士のことばで〕「…て行く」「…て来る」の荘重語。
「京の宗牧と申される方が訪ねて━・られました

司馬遼太郎

」
◆「参
まい入る(=貴所に参入する)」の転。



〜

、

はかな書きも多い。
参れる
参り
→
敬語解説
関連語
大分類‖移動‖いどう
中分類‖
行く‖いく
マイル[mile]


名


ヤードポンド法で、距離を表す単位。一マイルは約一・六〇九キロメートル。記号

mil

mi

「
▼哩」と当てる。