「そうだ」「すぎる」との接続
▼1〜3の、形容詞・補助形容詞「ない」と、形容詞「…ない」の場合は、「さ」を介して付く。
〔なさそうだ〕…試合はなさそうだ・悪くなさそうな味だ・頼りなさそうに見える
〔なさすぎる〕…お金がなさすぎる・彼の話は面白くなさすぎる・情けなさすぎて呆れる
▼4の接尾語「ない」が付いた形容詞の場合は、「な」に直接付くのが一般的だが、慣用で「さ」を介して使うものもある。
〔なさそうだ/なそうだ〕…ぎこちな(さ)そうだ・切な(さ)そうだ
〔なさすぎる/なすぎる〕…あどけな(さ)すぎる・はしたな(さ)すぎる
▼5の助動詞「ない」の場合は、「な」に直接付く。
〔なそうだ〕…彼は知らなそうだ・彼は飽き足りなそうだ・済まなそうに謝る・つまらなそうな様子だ
〔なすぎる〕…本を読まなすぎる・くだらなすぎる番組
*5は、「さ」を介した形でも用いられるが、慣用になじまない。「
△
知らなさそうだ・読まなさすぎる」
*「そうだ」と類義の接尾語「げ」を、5の助動詞「ない」に付ける人もいるが、標準的な言い方ではない。「
×
済まなげ・つまらなげ」→
「げ」の語法・
「なげ」の語法
な・い【無い(亡い)】


形


〔「ある」の対〕

《人・動物以外の物体を主語にして》ものが存在しない。
「この部屋にはテレビが━」
「捜しても財布が━」

人・動物の場合は「いる」の打ち消し形「いない」を使う。

《人や動物など意思を持つものを主語にして》

《存在の有無を問題にして》特徴づけられた人・動物が存在しない。いない。
「彼にかなう者は━」
「賛同者は全く━・かった」
「この世には神も仏も━のだろうか」

「いない」よりも、やや文章語的。

人が死んでもうこの世にいない。生存していない。
「彼死して既に━」

「今は亡き師」のように文語形を使うことも多い。

「亡い」と書く。

《抽象的な事柄を主語にして》

事柄や状態、関係などが存在しない。
「芸術に理解が━」
「言動にそつが━」
「痛み[記憶・落ち着き]が━」
「この件とは[この件には]関係が━」
「際限も━」

行為や出来事、現象などが起こらない。
「留守中に電話は━・かったか?」
「今日は学校[授業]が━」
「変化が━」
「一か月も雨が━」

方法や選択肢が存在せず行えない。
「手の施しようが━」
「彼に頼むほか━」

所有されたり含まれたりする状態で存在しない。持っていない。
「私には兄弟が━」
「貧乏暮らしで私には金も時間も━」
「彼にはまったくくったくが━」


や


でも、その持ち主や起こる場所に焦点が当たると、この用法になる。「この市は空港[美術館]が━」

《「…に━」の形で状況や場面を表す語を受けて》特定の状態や段階に置かれていない。
「人口は増加の傾向には━」
「忠告できる立場に━」
「柄にも━・く照れている」

《「…も[と]━」の形で数値を受けて》その数量に及ばない意を表す。…に達しない。
「歩いて一〇分も━距離」
「二つと━宝」

《「…しか━」の形で数値を受けて》数量がわずかにそれだけである意を表す。
「ツアーの参加者は三人しか━」

《「…と━・く」の形で疑問詞や疑問詞を含む文を受けて》それと特定できないが。
「誰と━・く話し出した」
「何度と━・く繰り返される」

《「…とも━・く」の形で文を受けて》特にそうしようと意識せずに。
「誰に聞かすとも━・くつぶやいている」

《「…ことが━」の形で》→
ことがない

《「…ことは━」の形で》→
ことはない

《「…なくは━」「…ないことは━」「…ないでは━」などの形で》二重否定を表す。
「数学の勉強はつまらなくは━」
「勧められたら読まないでは━」
→
ないことはない

《「…はずが━」「…わけが━」の形で》可能性がない。
「彼が来るはずが━」
「そんな説明で納得するわけ━だろう」

《「━・くして」の形で、名詞を受けて》それを欠いた状態で。
「彼の協力━・くしてこの事業の完成はあり得ない」
「信じること━・くして生きられようか」
→
なしに
◆

名詞に付いて形容詞や副詞を作る。「頼り━・心━・だらし━・しかた━・相違━」「何[どこ・それ]と━・く」

「はてし」「詮
せん」「たわい」「いとま」「跡形
あとかた」「余念」「絶え間」「意気地」「すべ」などは、「…が[も]ない」「…が[も]ありません」の形で使うことが多く、「…がある」の形はあまり使われない。


補形


《主に形容(動)詞型の活用語の連用形に付いて》打ち消しの意を表す。
「評判ほどには面白く━」
「ベテランらしく━失敗だ」
「もう子供では━のだから」
「穏やかで━話だなあ」

《「…で━」の形で、動詞の連体形を受けて》禁止を表す。
「断じてくじけるで━ぞ」
「つべこべお言いで━よ」
◇古い言い方。
◆

→
「ない」のコラム


はかな書きが多い。「亡」はもっぱら



で使う。

はかな書きが一般的。

文語形「無し」を使うことも多い。「何の報告も無し」「成算我に無し」などのほか、「良くも無し、悪くも無し、まあ十人並というところでしょう

岡本綺堂

」のように、連用形「なく」と同じように使う場合もある。
‐げ/‐さ
関連語
大分類‖無い‖ない
中分類‖
無‖む