ない
「…ない」の種類
1 形容詞「ない」
試合がない・金も時間もない・見たことはない・彼が来るはずがない

→
形容詞「ない」
2 補助形容詞「ない」
悪くない・少なくない・静かではない・犯人は僕じゃない

→
補助形容詞「ない」
3 1・2の「ない」が付いた形容詞
大人げない・差し支えない・仕方ない・如才ない・素っ気ない・頼りない・だらしない・違いない・とんでもない・情けない・みっともない・面目
めんぼくない・もったいない・申し訳ない・やるせない

→
形容詞「ない」
の語法
4 接尾語「ない」が付いた形容詞
あどけない・えげつない・おぼつかない・かたじけない・ぎこちない・しどけない・切ない・せわしない・はしたない

→
接尾語「ない」
5 助動詞「ない」が付いたもの
知らない・飽き足りない・書けない・構わない・くだらない・済まない・足りない・つまらない・ほかならない・やむを得ない・相談しない・誠意が感じられない

→
助動詞「ない」
*5の「ない」は、打ち消しの助動詞「ぬ」に置き換えられるが、1〜4は置き換えられない。「
○
知らぬ・くだらぬ・相談せぬ」「
×
おぼつかぬ・かたじけぬ」
*1〜3の「ない」は漢字「無い」と書くこともできる。4と5は漢字では書かない。
*形容詞・接尾語・助動詞の「ない」がどういう語に付くかという接続情報は、それぞれの「ない」項目を参照。→
形容詞「ない」・
接尾語「ない」・
助動詞「ない」の語法
*上のほか、「危ない・きたない・少ない」など、語源が不明な形容詞もある。→
危ない・
汚い・
少ない
「…ない」の丁寧表現
▼「…ない」の終止形+「です」
試合がないです・悪くないです・仕方ないです・かたじけないです・知らないです
*1〜5に用いる。「か」「よ」「ね」などの終助詞を伴わずに「です」で言い切る形は、多少ぎこちない。そのため、「テレビがありません」「かたじけない次第です」「もったいないことです」などと、「ないです」の形を避けることも多い。→
「です」
の表現
▼「…ない」の連用形+「ございます」
試合がのうございます・少なくのうございます・情けのうございます・かたじけのうございます
*1〜4に用いる。ただし、5でも例外的に用いるものがある(「足りのうございます」など)。古風な言い方で、現在はあまり用いない。→
「です」
の表現
▼「ない」を「ありません」「ございません」に換える。
テレビがありません・悪くありません・金も時間もございません・少なくございません
*1・2では換えることができるが、4・5ではできない(
×
かたじけありません・飽き足りございません)。
*3は、定着しているもの(
○
申し訳ありません・申し訳ございません)から、定着していないもの(
×
みっともありません・みっともございません)までさまざま。「とんでもありません」「とんでもございません」は広く使われているが、不自然に感じる人もいる。
▼動詞連用形+「ません」
構いません・済みません・つまりません・ほかなりません・相談しません・感じられません
*5に用いる。1〜4には用いない(
×
おぼつきません)。ただし5でも、「くだりません」など、用いられないものもある。「頼りません」は、3の「頼りない」の丁寧形ではなく、5の「頼らない」の丁寧形である。
*さらに「です」を付けた「…ませんです」は、言い切りの形では崩れた言い方となる。→
「ません」の語法
*上のほかにも、さまざまな丁寧表現を用いる。「悪くないと思います」「とんでもないことでございます」「みっともなく感じます」など。
「そうだ」「すぎる」との接続
▼1〜3の、形容詞・補助形容詞「ない」と、形容詞「…ない」の場合は、「さ」を介して付く。
〔なさそうだ〕…試合はなさそうだ・悪くなさそうな味だ・頼りなさそうに見える
〔なさすぎる〕…お金がなさすぎる・彼の話は面白くなさすぎる・情けなさすぎて呆れる
▼4の接尾語「ない」が付いた形容詞の場合は、「な」に直接付くのが一般的だが、慣用で「さ」を介して使うものもある。
〔なさそうだ/なそうだ〕…ぎこちな(さ)そうだ・切な(さ)そうだ
〔なさすぎる/なすぎる〕…あどけな(さ)すぎる・はしたな(さ)すぎる
▼5の助動詞「ない」の場合は、「な」に直接付く。
〔なそうだ〕…彼は知らなそうだ・彼は飽き足りなそうだ・済まなそうに謝る・つまらなそうな様子だ
〔なすぎる〕…本を読まなすぎる・くだらなすぎる番組
*5は、「さ」を介した形でも用いられるが、慣用になじまない。「
△
知らなさそうだ・読まなさすぎる」
*「そうだ」と類義の接尾語「げ」を、5の助動詞「ない」に付ける人もいるが、標準的な言い方ではない。「
×
済まなげ・つまらなげ」→
「げ」の語法・
「なげ」の語法