びん [1] 【鬢】 頭の左右側面の髪。「―に白いものがまじる」

びん-おや 【鬢親】 深除(フカソギ)または鬢除(ビンソギ)のとき，髪や鬢の末をそぐ役をする人。深除にはその子の髪置きの式を執り行なった人，鬢除では娘の婚約者か，婚約者のいない場合は父兄が行なった。

びん-かがみ [3] 【鬢鏡】 鬢を映して見る，柄(エ)付きの小さい手鏡。

びん-かき [1][0] 【鬢掻き】 鬢をかき整える小さい櫛(クシ)。

びん-きり [0] 【鬢切り】 〔「びんぎり」とも〕 江戸時代，元禄（1688-1704）以前に行われた髪形。鬢の毛を切って耳の後ろに垂らしたもの。びんぎれ。

びん-ぐき 【鬢茎】 鬢の毛筋。「年三十余ばかりの男の，鬚(ヒゲ)黒く，―よきが/今昔 28」

びん-ぐし [1][0] 【鬢櫛】 鬢をかき上げて整えるのに用いる，横に長く歯のあらい櫛。多く黄楊(ツゲ)で作る。

びん-さし [1][0][4] 【鬢差(し)】 女子の結髪用具の一つ。鬢の髪を振り出させるために，その中へ挿入する具。鯨のひげまたは銅線をまげて弓のような形にしたもの。江戸中期に流行した。上方では「鬢張り」と称した。

びん-し [1] 【鬢糸】 白くまばらになったびんの毛。

――茶烟(サエン)の感 〔杜牧「題禅院詩」〕 年老いてから，枯淡な生活を送りつつ，青春の日をしのぶ寂しい心境。

びん-しょ 【便所・鬢所】 （１）適当な所。《便所》 （２）室町時代，貴族の家で，鬢や髪を整えたり衣服をつけたりしたところ。便宜所。《鬢所》

びん-そぎ [4][3] 【鬢除・鬢削ぎ・鬢曾木】 女子が成人に達したしるしに，垂れ髪の鬢の毛を切りそぐこと。近世は普通一六歳の六月一六日に行う。男子の元服にあたる。婚約者か，婚約者がいない場合は父兄が切った。 →鬢親(ビンオヤ)

びん-だらい ―ダラヒ [3] 【鬢盥】 （１）鬢をときつける水をいれる小型のたらい。 （２）江戸時代，髪結いが持ち歩いた，髪結い道具一式の入った手さげ箱。 鬢盥（２） [図]

びん-つき [0][4][1] 【鬢付き】 鬢のかっこう。

びん-つけ [4][0] 【鬢付け】 「鬢付け油」の略。

びんつけ-あぶら [5] 【鬢付け油】 日本髪で，鬢を張らせたり，髪を固めて形づくるのに用いる固く練った油。生蝋を植物油で練って香料を混ぜたもの。固油(カタアブラ)。びんつけ。

びん-どめ [0][4][1] 【鬢留(め)】 鬢の毛をとめる留め具。

びん-なが [0] 【鬢長】 スズキ目の海魚。全長約1メートル。小形のマグロで，体は紡錘形。胸びれがいちじるしく長い。缶詰に加工。世界中の温帯海域に広く分布。ビンナガマグロ。トンボシビ。ビンチョウ。ヒレナガ。 →マグロ

びんのほつれ 【鬢のほつれ】 端唄・小唄の一。三下り。「鬢のほつれは枕のとがよ…」という，間夫にいいわけする遊女のことばを歌詞とする。鬢ほつ。

びん-はさみ [3] 【鬢挟み】 鬢の毛をはさんで乱れないようにする結髪具。

びん-ぱつ [0] 【鬢髪】 （１）鬢の毛。鬢毛。 （２）頭髪。

びん-はり 【鬢張(り)】 「びんさし（鬢差）」の上方での称。

びん-ぷく 【鬢幅・鬢服】 （１）平安末期，公家の少年の髪形。耳の後ろの髪をふくらませて耳が少し隠れるようにしたもの。 （２）近世，公家の少年少女が髻(モトドリ)につけ，前額部に垂らした義髪。輪の形を二つか三つ作り，油で固めたもの。

びん-ぼうし 【鬢帽子】 （１）帽子の一種。鬢のあたりをおおうため，左右に布を垂れたもの。「―したる雲客うちほほ笑みて/太平記 35」 （２）江戸時代，病人が手拭いなどを頭にまいて端を鬢のあたりに垂らしたもの。病鉢巻。

びん-みず ―ミヅ [1] 【鬢水】 鬢をなでつけるために櫛(クシ)を浸す水。伽羅(キヤラ)の油や，サネカズラを浸した水を用いた。

びん-みの [0] 【鬢蓑】 添え髪の一種。毛髪で蓑形につくったもの。

びん-もう [0] 【鬢毛】 鬢の毛。鬢髪。

びん【鬢】 side locks.