
「お…する[します]」「お…申し上げる」などの形で、間に動詞連用形、漢語サ変動詞語幹、形容(動)詞などが入る。
「私から佐藤さんに
お伝えします」
「心より
お詫び申し上げます」
→
する

・
申し上げる

「(私は)Aさんに新作を
お目にかける」「A先生の
お眼鏡にかなう」「A先生に
お許しいただいた」などは句全体では自分側の動作についていう謙譲表現だが、「お目」「お眼鏡」「お許し」の「お」は、Aを高めていう尊敬用法である。

「お」「ご」を用いた謙譲の可能表現には、「お[ご]…できる」「お[ご]…いただける」などがある。「(あなたに)明日には
お送りできます」「(小社は会員に)特別料金で
ご使用いただけます」→
できる
・
いただける

謙譲の「お」「ご」を、「いたす」「申す」などの丁重語と合わせて使い、動作や事物の及ぶ人物を高めるとともに、相手(=聞き手・読み手)に対して改まった気持ちを表す。「佐藤さん、私が先生を
ご案内いたします」相手が動作や事物の及ぶ人物と同一人物であることもある。「あなたの気持ちは
お察し申します」→
致す

・
申す
美化語
美しく上品な言い方をすることで、自分の品位を高める。いろいろな物事について言う。
「江戸時代の
お手紙を集めた展覧会」
「私の
お洋服」
「うちには
お米も
お味
みそもあるわ」
「
お
油
しょうゆ?

それとも
おソース?」
「
おトイレに行ってくる」
「この頃野菜が
お高いわね」
「
おしとやかな女性になりたいです」
→
する




の最初の用例のように、同じ「お手紙」でも、尊敬語・謙譲語・美化語になる場合がある。

《「お…様」「お…さん」の形で、他人の状態を表す語を入れて》他人に対するねぎらい・慰めの気持ちを表す。
「
お疲れ様でした」
「
お気の毒様」
「
おあいにく様」

《人を表す語の上に付いて》軽い尊敬・親愛の気持ちを表す。
「
お千代」
「
お政さん」
「
おちびちゃん」
「
おバカさん」
◇女性の名に付けるのはやや古い言い方。

からかいや自
じちょう、ふざけの意を表す。
「よっ、
お熱いね!」
「
お粗末な出来だ」
「
お恥ずかしい限りです」

本来の敬意が失われて、形式的に添える語。
「姉の
お古を着る」
「菓子の
おまけ」
「ご飯の
お代わり」
◆「おほん(御)」が変化した「おん」の省略形「お」に由来する語。古くは貴人の持ち物や行為についていう尊敬の用法に限られたが、のち、動作の及ぶ先を高める気持ちで、自分側の事物・行為に「お」を付ける用法が生まれた。
「お」と「ご」の使い分け

基本的に、和語には「お」が付き、漢語には「ご」が付く。「
お体・
お気遣い・
お寂しい・
お名前・
お会いする・
お使いになる」「
ご恩・
ご家族・
ご住所・
ご立派・
ご案内する・
ご使用になる」

ただし、漢語であっても、日常的に使うものには「お」が付くことがある。「
お医者様・
お加減・
お勘定
かんじょう・
お客・
お行儀・
お化粧・
お砂糖・
お散歩・
お時間・
お邪魔・
お正月・
お食事・
お歳暮・
お節介・
お洗濯・
お葬式・
お代
だい・
お達者・
お駄賃・
お天気・
お電話・
お人形・
お便所・
お弁当・
お夕飯・
お料理・
お礼
れい」

まれに、和語であっても、「ご」が付くものがある。「
ごもっとも・
ごゆっくり・
ごゆるり」

同じ漢語でも、場面によって「お」と「ご」を使い分けることがある。「お」は口頭語ややわらかい日常的な場面に、「ご」は改まった文章や固い場面に使われる傾向がある。「
お慈悲/
ご慈悲」「
お相伴
しょうばん/
ご相伴」「
お説教/
ご説教」「
お誕生/
ご誕生」「
お返事/
ご返事」「
お勉強/
ご勉強」

外来語でも、日常的に使うものには「お」の付くことがある。「
おズボン・
おソース・
おトイレ・
おニュー・
おビール」
注意すべき「お」「ご」の用法
1 「ご」(「お」)を付けるのが一般的な語に「お」(「ご」)を付けるのは不適切。
「
×
お案内・
お意見・
お遠慮・
お近所さん・
お苦労・
お自宅・
お冗談・
お心配・
お注文・
お伝言・
お夫婦・
お本
ほん・
お迷惑・
お友人・
お両親・
お連絡」「
×
ご体
からだ・
ご父上・
ご手紙・
ご名前」
2 「和語=お」「漢語=ご」の原則通りで、他人に関わる動作や状態を表す表現であっても、「お」「ご」を付けるのが慣用になじまないものがある。
「
×
おさすが・
おしっとり・
おそっくり」「
×
ご学生・
ご華麗・
ご貴重・
ご事故・
ご繊細・
ご便利」「
×
お死にになる→
○
お亡くなりになる・亡くなられる」「
×
ご運転になる→
○
運転なさる・運転される」→
成る
の注意
3 「父上・尊顔・令嬢」などの尊敬語や「逝去」「亡くなる」などの婉曲
えんきょく表現に「お」「ご」を付けて、より敬意の高い言い方をするのは適切。
「
○
お父上・
ご尊顔・
ご令嬢・
ご逝去・
お亡くなりになる」
4 自分側の事物や動作で、他人に及ばないものに「お」「ご」を付けるのは誤り(美化語用法は除く)。「私の
×お考え(→
○考え)を聞いてください」「身内の
×ご法要(→
○法要)があり、恐縮ながら欠席します」
5 自分側の事物や動作に「お」「ご」を付けたり、「
お[ご]…する」「
お[ご]…申し上げる」を用いたりしても、それが他人に及ぶものであれば、適切な謙譲用法。
「〔披露宴で司会者が〕
○
ここで新郎より
ご挨拶申し上げます」
6 「和語=お」「漢語=ご」の原則に適っていて、自分側の動作を表す表現であっても、「お」「ご」を付けるのが慣用になじまないものがある。
「
×
お上げする→
○
差し上げる」「
×
お憧れする→
○
憧れ申し上げる」「
×
ご賛成申し上げる→
○
賛成申し上げる」
7 美化語の「お」は、過剰に付けると幼稚・慇懃
いんぎん無礼・冗長に感じられたり、自分側に尊敬の「お」を使っていると受け取られたりする場合もある。
「
△
ご希望の
お日にちをお知らせください」「
△
お出口はあちらです」「
×
お書類を提出します」「〔取引先に対して〕これ、うちの山田が担当した
×お仕事(→
○仕事)です」
8 固定した成句などに美化語の「お」を付けるのは不適切。「
×
お金の切れ目が縁の切れ目」
9 美化語の「お」を付けないと乱暴な言葉遣いに感じられる場合がある。
「先生、
△茶(→
○お茶)でも飲みませんか」
10 「お父さん・お姉さん・お祖父さん」などは、親しみを表す呼び名でもあるが、敬称でもある。他人に対して、自分の身内をこれらの語でいうのは一般に不適切。
「〔お父様は元気ですか、と尋ねられて〕はい、
×お父さん(→
○父)は元気にしております」
11 「お[ご]…ください」などで、やりもらいでない動作について、動詞連用形・サ変動詞語幹のあとに「
を」を入れるのは、一般的でない。
「
△
ご注意
をください」「
△
あちらの席で
お休み
をください」「
○
お許し
をいただく」
12 「ちょっと
お散歩
してきます」「(私は)会社を
お休み
する」など、動作の及ぶ人物のない「
お…する」は、新しい用法。→
する
の語法
13 「お[ご]」を付けず動詞連用形・サ変動詞語幹に直接「
ください」を続けるのは誤り。
「
×
取り寄せ
ください→
○
お取り寄せ
ください」「
×
使用
ください→
○
ご使用
ください」→
ください
の注意
14 サ変動詞として使わない(「○○する」と言わない)名詞を「
ご[お]…ください」とするのは誤り。「
×
ご参考
ください→
○
参考に
なさってください・
ご参考
になってください」→
ください
の注意
15 尊敬の「お…になる」に尊敬の助動詞「れる」を続けた「
お…になられる」は二重敬語で、敬意過剰。「
×
お亡くなり
になられた」「
×
ゆっくり
お休み
になられてください」→
成る
の注意
・
れる
の注意
16 「使いやすい」「理解しにくい」など「動詞+形容詞」の複合語を尊敬語にするには、動詞を尊敬語にして形容詞を続ける。単に「動詞+形容詞」の先頭に「お」を付けることはしない。
「
×
お使いやすい→
○
お使いになりやすい」「
×
ご理解しにくい→
○
ご理解になりにくい」
17 謙譲の「
お[ご]…する」を、尊敬表現として他人の動作について使うのは誤り。
「
×ご利用
する(→
○ご利用
になる)サービスをお選びください」「先生、この問題について
×ご説明
してください(→
○ご説明
ください)」→
する
の注意
18 「
お[ご]…できる」を他人の行為について使うのは誤り。
「
×
会員は
ご利用
できます」「
○
明日までに私どもで
ご用意
できます」→
できる
の注意
19 「
お[ご]…いただける」は、場面によって適切・不適切な場合の両方がある。
「
○
ご説明
いただけますか」「
×
会員の方は
ご利用
いただけます」→
頂ける
20 謙譲「
お[ご]…いただく」の「…」の部分に謙譲語を用いるのは誤り。
「
×
ご拝読
いただきありがとうございます」→
頂く
の注意
21 丁重語「
いたす」「
申す」などは、自分または自分側の行為について使うものなので、尊敬語と組み合わせるのは誤り。
「
×
お読み
いたしてください→
○
お読み
になってください」
お【雄(▽男・▼牡)】ヲ

(造)

男性。動植物のおす。
「益荒
男ますらお」
「
雄牛・
雄花」

動物には「雄」「牡」を使う。

男らしい。おおしい。
「
雄叫
おたけび」

一対の物のうち、より大きいものや勢いの激しいもの。
「
雄滝
おだき・
男波
おなみ」