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うら【心】🔗⭐🔉
うら【心】
(「裏」「浦」と同語源。上代では、「うらもなし」という慣用的表現の中に見られるにすぎず、多くは造語要素として用いる)心。心のうち。上代において、同じく「心」の意を持つ「した」との違いは、「うら」が、意識して隠すつもりはなくても自然に表面にあらわれず、隠れている心であるのに対し、「した」は、表面にあらわすまいとしてこらえ隠している心であるという。
〔語素〕形容詞およびその語幹、動詞の上に付いて「心の中で」「心から」「心の底からしみじみと」の意を添える。「うらあう」「うらがなし」「うらぐわし」「うらごい」「うらさびし」「うらどい」「うらなき」「うらまつ」「うらもう」「うらやす」など。中古以後はほとんど形容詞との結合に限られるが、「うら」の意味も弱まって、「おのずと心のうちにそのような感情がわいてくる」の意になる。類似の「もの」が情意、状態の対象を漠然と示して外的であるのに対し、「うら」は内面的である。
●心もなし
1 心の中にとりたてて思い煩うことがない。なにげないようすである。無心だ。くったくない。*万葉‐三四四三「宇良毛奈久(ウラモナク)わが行く道に」
2 相手に対して、顧慮したり遠慮したりしない。むとんじゃくだ。*蜻蛉‐中「うらもなくたはぶるれば、いとねたさに」
3 相手に対して、自分の心の中を包み隠したりしない。心の中で相手を恨んだり疑ったりするような隔て心がない。*宇津保‐楼上上「うちとけてうらもなくこそたのみけれ」


けい‐しん【
心】🔗⭐🔉
けい‐しん【
心】
(「
」は藤袴(ふじばかま)の一種で香りたかい草のこと)美女のうるわしく上品な心。また、美人のこと。


ここり【心】🔗⭐🔉
ここり【心】
誤読によって「こころ(心)」の上代東国方言とされていた語。
[補注]「万葉‐四三九〇」歌の「去去里」を、「ここり」と訓んだことによる。「里」は、「ろ」の乙類の仮名にも用いるので、正しくは「こころ」。
こころ【心・情・意】🔗⭐🔉
こころ【心・情・意】
人間の知的、情意的な精神機能をつかさどる働き。「からだ」や「もの」と対立する概念として用いられ、また、比喩的に、いろいろな事物の、人間の心に相当するものにも用いられる。精神。魂。
人間の精神活動を総合していう。
1 人間の理性、知識、感情、意志など、あらゆる精神活動のもとになるもの。また、そうした精神活動の総称。*古事記‐下・歌謡「大君の 許許呂(ココロ)をゆらみ」
2 表面からはわからない本当の気持。心の本来の状態。本心。*古今‐四二「人はいさ心もしらずふるさとは」
3 先天的、または習慣的にそなわっている精神活動の傾向。性格。性分。気立て。*伊勢‐二「その人、かたちよりは心なんまさりたりける」
4 人知れず考えや感情などを抱くところ。心の中。内心。*霊異記‐下・八(真福寺本訓釈)「常に懐(こころ)に愁ふ」
人間の精神活動のうち、知、情、意のいずれかの方面を特にとり出していう。
1 物事を秩序だてて考え、行動を決定する精神活動。思慮分別。また、細かなところまで行きとどいた気の配り。周到な配慮。*万葉‐三四六三「ま遠くの野にも逢はなむ己許呂(ココロ)なく里のみ中に逢へる背なかも」
2 とっさの気の配り。また、事に臨んで物事を処理してゆく能力。機転。気働き。臨機応変の心。*枕‐八三「よも起きさせ給はじとてふし侍りにきと語る。心もなの事や、と聞く程に」
3 自分の気持と異なったものを受け入れるときの精神的許容性。度量。*源氏‐夕顔「我がいとよく思ひ寄りぬべかりし事を、譲り聞えて、心広さよ」
4 感情、気分など、外界の条件などに反応して心理内で微妙にゆれ動くもの。情緒。*古今‐五三「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
5 他に対する思いやり。他人に対して暖かく反応する気持。情け。人情味。情愛。*土左「この来たる人々ぞ、こころあるやうには言はれほのめく」
6 詩歌、文学、芸術、情趣、もののあわれなどを理解し、それを生み出すことのできる感性。風流心。*新古今‐三六二「心なき身にもあはれは知られけり」
7 ことばの発想のもとになる、人間の意識や感情。言語表現を支える精神活動。*古今‐仮名序「やまと歌は、人のこころを種として、よろづのことの葉とぞなれりける」
8 ある物事を意図し、その実現を望む気持。考え企てること。また、その考え。企て。意向。意志。*古今‐三八七「命だに心にかなふ物ならば」
9 気持の持ち方。心構え。また、意図を実現させるのに必要な意気ごみや精神力。*源氏‐若菜下「心によりなん、人はともかくもある」
10 構えて、そういう気持になること。わざと、そのものとは違った見立てをすること。つもり。*浄・鑓の権三重帷子‐上「かう手をかければけいやくの盃した心」
11 あらかじめ事の成りゆきを想定または予定しておくこと。また、その予想。予期。想像。覚悟。常識的想定。*浜松中納言‐二「少しもよのつねなる事にこそ、心もことばも及ぶわざなりけれ」
人間の行動の特定の分野にかかわりの深い精神活動を特にとり出していう。
1 相手に逆らうような気持をひそかに抱くこと、また、その気持。相手に反逆したり、分け隔てをするような気持。水くさい心。二心。異(こと)心。あだし心。隔意。*万葉‐五三八「心あるごとな思ひ吾が背子」
2 宗教の方面に進んでいる気持。道心。宗教心。信仰心。信心。*枕‐一二〇「などて、この月ごろ詣でで過しつらんと、まづ心もおこる」
3 世俗的なものに執着する気持。迷いのままで悟れない心。雑念。妄念。我執。煩悩(ぼんのう)。俗情。*ささめごと‐下「心を捨てたる人にまぎれ侍るべし」
事物について、人間の「心」に相当するものを比喩的にいう。
1 人に美的感興などを起こさせるもの。事物の持つ情趣。風情。おもむき。*源氏‐絵合「四方(よも)の海の深き心を見しに」
2 あまりおおやけにされていない事情。また、詳しいいきさつ。内情。実情。*源氏‐若紫「門うちたたかせ給へば、心知らぬ者の開けたるに」
3 物事の本質的なあり方。中心的なすじみち。物事の道理。*古今‐仮名序「古へのことをも、歌のこころをも知れる人」
4 内々でたくまれた、物事の趣向。くふう。*源氏‐若菜上「紫の綾のおほひどもうるはしく見えわたりて、内の心はあらはならず」
5 ことばの意味。わけ。語義。また、詩歌文章などの含んでいる意味内容。*古今‐仮名序「言の心わきがたかりけらし」
6 事柄を成り立たせている根拠。物事の理由。また、謎ときなどの根拠。わけ。*海道記「山に霊社あり、江尻の大明神と申す。〈略〉法師は詣らずと聞けば、其の心を尋ぬるに」
7 歌論・連歌論用語。
和歌や連歌の主題。表現の意図。意味内容。*古今‐仮名序「この歌、いかにいへるにかあらん、その心、えがたし」
和歌や連歌の情趣、感動、余情などをいう。*新撰髄脳「凡そ歌は〈略〉こころにをかしき所あるをすぐれたりとうふべし」
和歌や連歌の表現の上に見られる、すぐれた感覚。美的なセンス。*永承五年女御延子歌絵合「末いまめかしく、こころありなど侍るは、ゆかぬことにぞ」
人体または事物について「心」にかかわりのある部位や「心」に相当する位置をいう。
1 物の中心。物の中央。特に池についていうことが多い。まんなか。なかご。*躬恒集「散りぬともかげをやとめぬ藤の花池のこころのあるかひもなき」
2 人体で、心の宿ると考えられたところ。心蔵。胸のあたり。胸さき。*万葉‐三三一四「そこ思ふに心し痛し」
(こゝろ)小説。夏目漱石作。大正三年発表。前作「行人」の発展とみられる作品で、友人を死に追いやった主人公の心理的過程を、自己否定に帰結させ、近代知識人のエゴイズムの問題を追求する。
●心浅(あさ)し
⇒親見出し
●心悪(あ)し
⇒親見出し
●心暖(あたた)まる
人情の暖かさに触れて心がなごむ。「心暖まる話」
●心有(あ)り
⇒親見出し
●心合わざれば肝胆(かんたん)も楚越(そえつ)の如し
(「荘子‐徳充符」の「仲尼曰、自
其異者
視
之、肝胆楚越也」による)気が合わないと、近親の者も遠国の人のように疎遠なものである。
●心慌(あわたた)し
⇒親見出し
●心急(いそ)ぐ
気がせく。早く物事をしたいと思って気がいらだつ。*宇津保‐春日詣「心いそぎてまかりいで」
●心痛(いた)し
胸が痛む。心がうずく。悲しい。*万葉‐四四八三「許己呂伊多久(ココロイタク)昔の人し思ほゆるかも」
●心熬(い)らる
気持があせって落ち着かない。いらだつ。
●心入(い)る
(「入る」が自動詞四段活用の場合)ある事に心が引きつけられる。気に入る。身が入る。心にかなう。思い入る。*源氏‐末摘花「そのうつくしみに心いり給ひて」
(「入る」が他動詞下二段活用の場合)⇒こころ(心)を入れる
●心浮(う)く
1 気持がうわつく。思慮分別を欠く。*宇津保‐祭の使「こころうきたるにつき」
2 陽気である。気さくにふるまう。*天理本狂言・水汲新発意「こころのういたやさしい人がくめば」
●心動(うご)く
1 気持が動揺する。思い乱れる。感動する。*大和‐一二三「心うごくに涙落つらむ」
2 心がその方に引きつけられる。その気になる。興味をもつ。*源氏‐梅枝「この本どもなん、ゆかしと心うごき給ふ若人」
●心憂(う)し
⇒親見出し
●心失(う)す
驚いて気が遠くなる。正気を失う。胆がつぶれる。*宇治拾遺‐二・一〇「心もうせて、吾にもあらでつい居られぬ」
●心内にあれば色外にあらわる
心中に思うことは、自然に顔色、動作などに現われるものだ。
●心内に動けば詞(ことば)外にあらわる
(「詩経大序」の「情動
於中
而形
於言
」による)心中に思うことは、覚えずことばに現われ出るものだ。
●心愛(うつく)し
⇒親見出し
●心=移(うつ)る[=移(うつ)ろう]
愛情や関心が、他からそのものに移る。心を引かれる。恋慕の情が生じる。
●心得(え)る
⇒親見出し
●心生(お)う
心のままに育つ。自然に成長する。また、心にある種の気持が生じる。*大和‐四二「何をたねにて心をひけむ」
●心多(おお)し
1 気が多い。移り気である。浮気だ。
2 趣向が複雑である。たくさんの心が含まれている。多義だ。
●心おかし
⇒親見出し
●心後(おく)る
1 心の働きや美的感覚などが劣っている。気がきかない。頭の働きが鈍い。考えが幼稚だ。*源氏‐帚木「その折につきなく、目にとまらぬなどを、推しはからず詠み出でたる、中中心をくれて見ゆ」
2 気おくれする。弱気になる。おじけづく。*源氏‐梅枝「怪しく心をくれても進みいでつる涙かな」
●心起(お)こる
1 思い立つ。その気になる。*増鏡‐九「いと思ひの外に心おこらぬ御旅寝なれど」
2 発心(ほっしん)する。菩提(ぼだい)心が起きる。*枕‐一二〇「などて、この月ごろ詣でで過しつらんと、まづ心もおこる」
●心幼(おさな)し
⇒親見出し
●心おさむ
気持を落ち着ける。我慢する。*源氏‐早蕨「心おさめん方なくおぼほれ居たり」
●心惜(お)し
心中に惜しく思う。残念だ。*類従本基俊集「山桜心おしくやとくに散りぬる」
●心鈍(おそ)し
⇒親見出し
●心重(おも)し
1 落ち着きがある。思慮深い。人柄がおおようである。
2 心が軽快に働かない。俳諧で、観念や趣向などにこだわって心が自由自在でないさまにいう。句意がさらりとしないで、渋滞している。
●心面白(おもしろ)い
⇒親見出し
●心及(およ)ぶ
1 考えが行き届く。気がつく。
2 常識によって予想、想像、期待などができる。思い寄る。思い及ぶ。想像がつく。下に打消を伴うことが多い。*浜松中納言‐三「かたちありさま、琴(こと)のね、心もをよばず」
●心懸(か)かる
心が、ある対象にとまる。心が引かれる。
●心が軽(かる・かろ)い
1 軽薄である。思慮が浅い。
2 気軽である。心がはずんでいる。
●心掛(か)く
⇒こころ(心)に掛く・こころ(心)を掛ける・こころがける(心掛)
●心賢(かしこ)し
⇒親見出し
●心が弾(はず)む
楽しさや明るい希望などのために心が浮き浮きする。意気が揚がる。乗り気になる。
●心通(かよ)う
1 思いの心が通い合う。気持が通じ合う。互いに思い合う。
2 気がつく。思いつく。*浮・好色一代男‐三「不思議と人に尋ければ、よき所へ心のかよふ事ぞ」
●心から
1 自分の心掛けが原因で。他のせいでなく自分の心ゆえに。自分の勝手で。みずから求めて。*万葉‐六九四「積みて恋ふらく吾が心柄(こころから)」
2 心の底から。一心に。衷心から。*源氏‐乙女「心から春待つ園は」
●心軽(かる・かろ)し
⇒親見出し
●心変(か)わる
1 気持が前とは異なる。気持が他に移る。愛情がなくなる。変心する。
2 意味が違う。作品内容や作者の意図が異なる。
●心利(き)く
機転がきく。才覚がある。気がきく。
●心汚(きたな)し
⇒親見出し
●心消(き)ゆ
感情がはげしく動揺して、気が遠くなる。正気を失う。
●心清(きよ)し
⇒親見出し
●心切(き)れる
思いきりがよい。気まえがよい。さっそうとした意気がある。
●心砕(くだ)く
(「砕く」が自動詞下二段活用の場合)心が乱れる。いろいろと思い煩う。心屈する。*源氏‐蓬生「心くだけてつらく悲しければ」
(「砕く」が他動詞四段活用の場合)⇒こころ(心)を砕く
●心下(くだ)る
卑屈になる。気性が劣る。無気力になる。
●心曇(くも)る
1 よこしまな気持が生じる。誠意を失う。心にうしろ暗いことがある。
2 心に晴れ晴れしないことがある。暗い気持になる。
●心昏(く)る
心がまっくらになる。ぼうぜんとして前後の分別がなくなる。*源氏‐若菜下「御心もくれて渡り給ふ」
●心苦(くる)し
⇒こころぐるしい(心苦)
●心消失(けう)す
正気がなくなる。失心する。
●心鴻鵠(こうこく)にあり
(物を教わりながら、鴻鵠を射ることを考える意。「孟子‐告子上」の例話による)心がうわの空で、物事に身がはいらないたとえ。
●心焉(ここ)に在(あ)らざれば視(み)れども見えず
(「礼記‐大学」の「心不
在
焉、視而不
見、聴而不
聞、食而不
知
其味
、此謂
修
身在
正
其心
」による)心が他のことにとらわれていれば、たとえ視線が物に向かっていても、その物が目にはいらない。正しい事に心を集中しなければ、身を修めることはできない。
●心異(こと)
⇒親見出し
●心強(こわ)し
⇒こころごわし(心強)
●心下(さ)がる
品性が卑劣である。根性が卑しい。心くだる。*曾我物語‐二「この者は、もとよりこころさがりたる者にて」
●心定(さだ)まる
1 意志堅固である。情緒が安定している。*宇津保‐俊蔭「心さだまらぬ人なりけり」
2 気持が落ち着く。平静になる。
3 気持や考えが決まる。
●心寂(さび・さみ・ざむ)しい
⇒親見出し
●心寂(さぶ)し
⇒親見出し
●心寒(さむ)し
⇒こころざむし(心寒)
●心騒(さわ)がし
⇒親見出し
●心騒(さわ)ぐ
1 心配で気持が落ち着かない。あまりのことに心が乱れる。*落窪‐一「立つとて、かい探るに、なし。心さわぎて、起ちゐふるひ」
2 いやな予感がして胸さわぎがする。虫のしらせで心が波立つ。*読・春雨物語‐宮木が塚「何心なくて在りしが、心さわぎぬとて、夜の亥中に帰り来て」
●心時雨(しぐ)る
そぞろに心に悲しく思い、涙を流す。心が湿りがちである。
●心静(しず)か
⇒親見出し
●心染(し)む
(「染む」が自動詞四段活用の場合)深く心にとまる。気持が引き付けられる。気に入る。*源氏‐絵合「らうたげさに御心しみて」
(「染む」が他動詞下二段活用の場合)心を打ち込む。心にかける。*源氏‐若菜下「いとさしも親しからぬ継母の御ことを、いたく心しめ給へるかな」
●心しらう
⇒親見出し
●心好(す)く
風流を好む心がある。物好きだ。*平家‐一「すぐれて心数寄給へる人にて」
●心少(すく)なし
思慮が浅い。注意が足りない。*十訓抄‐二「大かたかやうの事は
慢をもととして、心の少きよりおこれり」
●心凄(すご)し
⇒親見出し
●心涼(すず)し
⇒親見出し
●心進(すす)む
1 心がはやる。気がせく。気負い立つ。*万葉‐三八一「家思ふと情進(こころすすむ)な風まもりよくしていませ荒しのの道」
2 希望する気持が強くなる。*宇津保‐忠こそ「おこなひのみちに心すすみてなん侍る」
●心坐(すわ)る
1 心が安定する。気持が落ち着く。*こんてむつすむん地‐一「心すはりてぶじにでうすにながらへ奉る事かなふもの也」
2 迷っていたことの決心がつく。*伎・三人吉三廓初買‐六幕「さう心が据ったら、くどくは言はねえ」
●心急(せ)く
心がいらだつ。もどかしく思う。あせって落ち着かない。*浄・艶容女舞衣‐下「心のせくは此子の事」
●心狭(せば・ぜま)し
⇒親見出し
●心せわしい
⇒こころぜわしい(心忙)
●心添(そ)う
本来の気持のほかに、別の気持が加わる。*宇津保‐楼上下「いよいよあさましき御心そひて」
●心空(そら)なり
心がからだから抜け出て、無我の状態にある。ある物事に気をとられて何事も手につかない。うわの空である。*万葉‐二五四一「妹を置きて心空在(こころそらなり)土は踏めども」
●心違(たが)う
(「違う」が自動詞四段活用の場合)
1 本意にそむく。予期に反する。あてがはずれる。*万葉‐一七六「仕へ奉りし情違(こころたがひ)ぬ」
2 気が変わる。心境が変化する。正念が乱れる。*蜻蛉‐中「我心のたがはぬを、人のあしうみなしてとのみあり」
(「違う」が他動詞下二段活用の場合)本意にそむくようにする。志を無にするようなことをする。*源氏‐賢木「その心たがへさせ給なと」
●心高(たか)し
⇒こころだかし(心高)
●心確(たし)か
⇒親見出し
●心正しければ則(すなわ)ち筆(ふで)正し
書法は心が根本で、心の正しいものは筆法もまたおのずから正しい。
●心立(た)つ
(「立つ」が他動詞下二段活用の場合)
1 ⇒こころ(心)を立つ
2 心を起こす。興味を持つ。*拾玉得花「上士も一たんめづらしき心たて、是に愛(め)づれ共、誠の性花とは見ず」
(「立つ」が自動詞四段活用の場合)心が奮い立つ。一念発起する。*源氏‐胡蝶「花蝶につけたるたよりごとは、心ねたうもてないたる、なかなか心たつやうにもあり」
●心楽(たの)しい
⇒こころだのしい(心楽)
●心絶(た)ゆ
1 もだえ苦しむ。悶絶(もんぜつ)する。*東大寺諷誦文平安初期点「或いは刀の山に串(くす)ぬかれて悶(ココロタエ)迷ふ」
2 思う気持がなくなる。あきらめる。断念する。*源氏‐竹河「此中将は、猶思そめし心たえず、憂くもつらくも思ひつつ」
●心足(た)る
1 心境が十分である。深い境地に至っている。*吾妻問答「心たらぬ人さ様に願はば、必ず必ず正路を捨てて邪路に入るべし」
2 注意がいきとどく。十分に気をくばる。*評判・名女情比‐五「さても彼かたの心のたらぬゆへに、いやしき者のくちのはにかかり」
3 満足する。納得する。*読・春雨物語‐樊噌下「いな、一曲にて心たりぬ」
●心付(つ)く
(「付く」が自動詞四段活用の場合)
1 ある考えを持つようになる。心が起こる。考えるようになる。*古今‐七一八「わすれなんと思ふ心のつくからに」
2 ある対象に、愛情、執着、強い関心などが生じる。心にかかる。思いこがれる。執心する。*宇津保‐藤原の君「このあて宮に御こころつき給て」
3 すぐれた分別や才覚などをもつようになる。また、成長して物心がつく。一人前の思慮分別をもつようになる。*伊勢‐五八「むかし、心つきて色好みなるをとこ」
4 ある心がその人にそなわる。考え方や性格をもつ。*源氏‐東屋「あららかにゐなかびたる心ぞつきたりける」
5 産気づく。*義経記‐六「痛む事もなく、そのこころつくと聞きて」
(「付く」が他動詞下二段活用の場合)⇒こころ(心)を付く
●心尽(つ)く
あらゆる物思いをし尽くす。気がもめる。
●心強(つよ)い
⇒こころづよい(心強)
●心と
⇒親見出し
●心解(と)く
1 気が晴れる。心中のわだかまりが解ける。気持がやわらぐ。*源氏‐浮舟「なほこころとけぬ御気色にて」
2 うち解ける。くつろいだ気分になる。気を許す。油断する。*源氏‐夕顔「人ばなれたる所に、心とけて寝(い)ぬるものか」
●心疾(と)し
⇒親見出し
●心とす
1 心に任せる。思う通りに行なう。「身を心ともせず」の形で用いる。*後撰‐九三八「いなせともいひはなたれず憂き物は身を心ともせぬ世なりけり」
2 気を配る。注意する。*読・春雨物語‐二世の縁「さればよとて、いよよ心とせしに、目を開きたり」
●心留(と・とど)まる
1 愛情や深い関心・興味を感じる。心が引かれる。気に入る。*宇津保‐吹上下「琴の響き高くいづ。〈略〉ことに心とまりて、ごかの手どもをつかうまつりつくす」
2 心が残る。未練が残る。世俗的なものに心が執着する。*源氏‐橋姫「聖(ひじり)だちたる御ために、かかるしもこそ心とまらぬもよほしならめ」
●心ともなく
心にもあらず。思わず知らず。無意識に。
●心無(な)い
⇒親見出し
●心長(なが)し
⇒親見出し
●心ながら
1 自分で支配しなければならない心であるにもかかわらず。自分の心でありながら。われながら。内心では。*宇津保‐嵯峨院「おのが心ながら、心にまかせぬことなれば」
2 同じ心を保持し続けて。その心のままで。*伊勢‐一六「貧しく経ても、猶昔よかりし時の心ながら、世の常のことも知らず」
●心和(な)ぐ
気持がやわらぐ。心が慰む。気が静まる。*万葉‐一六二九「ここ思へば胸こそ痛きそこ故に情奈具(こころナグ)やと」
●心ならず
1 本意ではない。自分の意思に反している。*竹取「おのが心ならず、まかりなむとする」
2 思い通りにすることができない。自由にはできない。*千載‐一〇五〇「うき世はたれもこころならねば」
3 不安でじっとしていることができない。気が気でない。*浄・神霊矢口渡‐二「心ならねば女房湊、思ひの外(ほか)早いお帰り」
4 われ知らず。無意識である。うっかり。*米沢本沙石集‐二・三「心ならず南無阿弥陀仏と申したりけるを」
●心ならずも
(副詞的に用いて)心からそうするのではないが。不本意ではあるがやむをえず。「心ならずも御無沙汰してしまいました」
●心に合(あ)う
意にかなう。満足する。気に入る。*枕‐三一五「世の中心にあはぬ心地して」
●心に当(あ)たる
気にさわる。気を悪くする。
●心に余(あ)る
自分の心一つでは処理できないでいる。思案に余る。
●心にあり
1 胸中にある。内々に思っている。
2 考えや決心しだいで事態がきまる。気持しだいである。
3 心に思いつく。考え得られる。*浮・日本永代蔵‐四「心に有程のもてなし」
●心に入(い)る
(「入る」が自動詞四段活用の場合)
1 心にしみこむ。深く心に留まる。印象が深く感ぜられる。*万葉‐二九七七「紐の緒の心爾入(こころニいり)て恋しきものを」
2 気に入る。心にかなう。*源氏‐総角「なのめならず心に入りて思ひいらるるもはかなし」
3 気のりがする。興に入る。感興をもよおす。*大和‐一九「心に入らで、あしくなむ詠みたまひける」
4 専念する。熱中する。身を入れる。*宇津保‐楼上下「舞せさせ給ふ。ましてこれはあけくれ心にいりたりければ、になし」
5 理解する。会得する。ふに落ちる。*山家集‐中「西へ行く月をや余所(よそ)に思ふらん心にいらぬ人のためには」
(「入る」が他動詞下二段活用の場合)
1 心をこめる。熱心にする。深く心に思いこむ。*伊勢‐六五「仏の御名を御心に入れて」
2 気に入る。関心をもつ。目をかける。*宇津保‐祭の使「仲忠とかいふすきものを心にいれて」
3 心にとめる。気にかける。気をつける。*平中‐三一「ことに、心に入れても思はぬことなれば」
●心に鬼をつくる
1 恐れて無用な想像をする。疑心暗鬼を生ずる。
2 うしろ暗く思って悩む。心にやましさを覚える。
●心に及(およ)ぶ
(下に打消の語を伴うことが多い)予想や想像のつく範囲内にある。思い及ぶ。*源氏‐帚木「心にをよばず、いとゆかしき事もなしや」
●心に懸(か)かる
1 心から離れないでつきまとう。念頭を離れない。気になる。
2 心配なこととして気になる。恐れ、不安などが心に生じて離れない。
3 ある人の厚意にたよる。志を頼みとする。情けにすがる。
●心に垣(かき)をせよ
油断をしないで用心せよ。常に用心を怠るなの意。
●心に掛(か)く
1 心にとめる。念頭におく。気にする。
2 特別の関心をいだく。懸想(けそう)をする。目をかける。
3 心にまかせる。思う通りにする。
●心に笠(かさ)着て暮らせ
(笠をかぶると上が見えないところから)上を見ないで、足(た)ることを知れ。高望みをせず、分(ぶん)相応に暮らせ。
●心に適(かな)う
1 思う通りになる。意のままになる。
2 予期、希望、不満などを満たしてくれる。望ましく思っていたものを得て、満足する。気に入る。
●心に通(かよ)う
1 心に相通じる。
2 外から心にやってくる。心に思い浮かぶ。
3 心にしみ入って感興をもよおす。
●心に刻(きざ)む
深く心に留めておく。肝に銘ず。
●心憎(にく)い
⇒親見出し
●心に焦(こ)がす
ひそかに思いこがれる。人知れず思い乱れる。
●心に応(こた)う
思い当たってはっとする。胸にぎっくりとひびく。
●心に籠(こ)む
1 人に漏らさずに心に秘めておく。胸にたたむ。
2 心を傾ける。細心の注意を払う。
●心に従(したが)う
1 相手の意向の通りに事を行なう。相手の心のままになる。
2 自分の思う通りにする。思い浮かぶままにする。心のままに物事がはこぶ。
3 それぞれの心の程度に応ずる。心の深さに対応する。
●心に染(し)む
(「染む」が自動詞四段活用の場合)心に深く刻みこまれて離れない。深く心に感じる。
(「染む」が他動詞下二段活用の場合)心を傾ける。思いつめる。執心する。ただし、「占(し)む」をあてる説もある。*源氏‐総角「見奉る人々、若きは心にしめてめでたしと思奉る」
●心に錠(じょう)をおろす
1 用心する。気を許さない。
2 心を変えまいと堅く決心する。心にきめる。
●心に進(すす)む
気がはやる。しきりに思う。
●心に添(そ)う
1 心につきまとう。離れず念頭にある。
2 意のままになる。期待通りになる。
●心に染(そ)む
(「染む」が自動詞四段活用の場合)気に入る。意にかなう。強く心が引かれる。
(「染む」が他動詞下二段活用の場合)深く心を寄せる。執心する。
●心に違(たが)う
本意にそむく。期待に反する。心にそむく。
●心に付(つ)く
(「付く」が自動詞四段活用の場合)心にかなう。気に入る。心が引かれる。
(「付く」が他動詞下二段活用の場合)心を寄せる。関心をもつ。心にかける。
●心に剣(つるぎ)を含む
相手に危害をあたえようとする気持をもつ。害心をいだく。
●心に留(と)まる
心が引かれる。気にかかる。
●心に留(と・とど)める
気にかける。忘れないでおく。
●心に乗(の)る
1 心に乗り移って離れない。心を占める。心にかかる。
2 気に入る。満足する。心にかなう。
●心に蓋(ふた)なし
心に包み隠すことがない。隠しだての心がない。
●心に任(まか)す
1 自分の思うままに行なう。勝手気ままにふるまう。
2 (否定の語を伴うことが多い)自分の思うようになる。思い通りに事が運ぶ。
3 相手の考えにまかせる。人の一存に従う。
●心に咽(むせ)ぶ
悲しみが胸にこみあげる。胸が迫る。
●心にもあらず
1 思わず知らずのさま。無意識である。
2 本意ではない。気が進まない。
3 思いもかけない。意外だ。
●心=にも[=に]ない
1 身に覚えがない。思いもよらない。不本意だ。*浮・西鶴織留‐三「心にもなき事にうたがはれぬ」
2 本心ではない。思ってもいない。「心にもないお世辞をいう」
●心に物を言わす
口に出さないで、表情や動作で気持を伝える。無言の中に思いをこめる。
●心緩(ぬる)し
1 心がのんびりしている。性質がおっとりしている。気が長い。*源氏‐若菜下「心ぬるくなだらかなる人は、長きためしなむ多かりける」
2 心が鈍い。*源氏‐若菜下「心のいとぬるきぞくやしきや」
3 心が弱い。*浄・聖徳太子絵伝記‐三「仏法にしみ付心ぬるき公家武家」
●心嫉(ねた)し
⇒親見出し
●心の垢(あか)
心の汚れ。煩悩(ぼんのう)。罪障。
●心の秋(あき)
1 (「秋」を「飽き」にかけていう)秋になると葉が変色するように、飽きて心変わりすること。
2 心に寂しさを感じること。心の弱まり。
●心の仇(あだ)は心
自分の心を害するものは自分自身の妄念である。悟りを妨げるものはおのれの煩悩(ぼんのう)である。
●心の跡(あと)
心の思いを象徴する痕跡。思いのあらわれ。
●心の雨(あめ)
心が晴れやかでないさまのたとえ。
●心の綾(あや)
複雑な物思い。入り組んだ心境。
●心の嵐(あらし)
心が乱れ平穏でないこと。心がすさんでしまうこと。
●心の池(いけ)
池が水をたたえているように、心に物思いを深くたたえていること。悩みが心にみちみちていること。
●心の泉(いずみ)
泉のように心に湧(わ)き出る考えや感興。
●心の至(いた)り
すみずみまで心が行き届くこと。心境の深さ。思慮の深さ。
●心の糸(いと)
心が乱れることを糸にたとえていう語。
●心の暇(いとま)
1 =こころ(心)の暇(ひま)*落窪‐二「心のいとまなくなん」
2 口には出さないで、心の中でひそかにするいとまごい。*浄・曾我扇八景‐上「余所ながら心のおいとま申せしが」
●心の色(いろ)
1 心の有様。特に、心に深く思いそめているさま。また、その心。*後撰‐七三六「ときはなる日かげのかつら今日しこそ心の色に深く見えけれ」
2 美しいものに動かされた心。はなやかなものにひかれる、うわついた心。*新後拾遺‐一三六七「墨染の袖にうき世をのがれても心の色はかはるともなし」
●心の内(うち)
心の中。胸のうち。内心。
●心の=馬(うま)[=駒(こま)]
(「衆経撰雑譬喩‐上」の「欲求善果報、臨命終時心馬不乱、則得随意、往不可不先調直心馬」による)馬が勇み逸(はや)って押えがたいように、感情が激して自制しがたいこと。意馬。
●心の海(うみ)
心の広く深いことを海にたとえていう。度量の大きいこと。
●心の占(うら)
心中に、前もって感得したり判断したりすること。心中に立てたうらない。予感。予想。*古今‐七〇〇「心のうらぞまさしかりける」
●心の浦(うら)
(「心の裏(うら)」を同音の「浦」にかけていう)心の中。*書陵部本夫木‐一九「思ひの風の海ふけばこころのうらにたつ涙哉」
●心の裏(うら)
心の中。
●心の緒(お)
(「心緒(しんしょ)」の訓読み)物を思い続ける心のさまを緒にたとえたもの。*広本拾玉集‐二「よそならぬ心のをこそ短けれ」
●心の熾(おき)
思いこがれる心を、赤くおこった炭火にたとえていう。*班子女王歌合「人を思ふこころのおきは身をぞ焼く」
●心の掟(おきて)
心に守るべき価値基準。心がまえ。心の持ちかた。*源氏‐橋姫「俗ながら聖になり給ふ心のをきてやいかにと」
●心の置き所なし
心がどうしようもないほどせつなく苦しい。やるせなくて途方に暮れる。
●心の奥(おく)
1 心の底。表面からはなかなか知れない本心。*伊勢‐一五「忍びて通ふ道も哉(がな)人の心のおくも見るべく」
2 奥深い考え。思慮の深さ。*源氏‐柏木「この宮こそ、聞きしよりは心のおく見え給へ」
●心の鬼(おに)
1 心を責めさいなまれること。ふと心をよぎる不安や恐れ。
心の中で疑い恐れること。疑心暗鬼。*一条摂政集「わがためにうときけしきのつくからにまづは心の鬼もみえけり」
心にかねて恥じ恐れていたことに直面してはっと思うこと。気が咎めること。良心の呵責。*枕‐一三五「かたはらいたく、心のおに出で来て、いひにくくなり侍りなん」
2 心の奥に隠れている、よくない心。よこしまな心。邪心。*浜松中納言‐五「われはかく思ふとも、さすがなる心のおにそひ」
3 恋慕愛着の妄念。煩悩(ぼんのう)にとらわれる心。*浮・好色一代男‐五「なを思ひは胸にせまり、こころの鬼(オニ)骨を砕き」
●心の鬼が=身(み)を責める[=己(おのれ)を責める]
良心に責められて苦しむ。
●心の緒(お)ろ
(「緒ろ」の「ろ」は接尾語)=こころ(心)の緒*万葉‐三四六六「さ寝なへば己許呂乃緒呂(ココロノをロ)に乗りてかなしも」
●心の鏡(かがみ)
1 清く澄んで物事をよく感得できる心を鏡にたとえていう語。
2 筆(ふで)の異称。
●心の限(かぎ)り
1 からだはともかくとして、心だけを全部。*蜻蛉‐付載家集「花すすきまねきもやまぬ山里に心のかぎりとどめつるかな」
2 心の及ぶ限り。精一杯。思う存分。*落窪‐二「後の事〈略〉心のかぎりはしつ」
●心の風(かぜ)
1 人の心のきびしく荒いさまを風にたとえていう。*夫木‐一九「人の心のかせぞはげしき」
2 心に俗塵のつくのを払う道心などを風にたとえていう。*六帖詠草‐雑上「紅の塵の中にも住みつべし心の風のとはにはらはば」
●心の糧(かて)
精神生活を豊かにするもの。精神の向上を助けるもの。
●心の際(きわ)
1 心の高さ、深さなどの程度。心の有様。*源氏‐幻「みづからの心のきはも、残りなく見はてて心やすきに」
2 心のぎりぎりのところ。心の限界。*夫木‐一三「あはれさをいふも心のきはならで」
●心の琴線(きんせん)に触れる
人の心の奥を揺り動かし、深い感動や共鳴を引き起こすことを、琴の糸に触れて音を発するのにたとえていう。心を打つ。
●心の草(くさ)
心の中に生じる種々の物思いを草にたとえていう。*夫木‐二八「こころの草は霜がれもなし」
●心の隈(くま)
人に知られない心の奥底。心のすみずみ。また、人知れず抱いている考え。*是貞親王歌合「秋の夜の月の光は清けれどひとのこころのくまは照らさず」
●心の雲(くも)
1 心が迷って、悟れないでいるのを、雲がおおうのにたとえていう。心の迷い。*続後撰‐六〇九「秋の夜は心の雲も晴れにけり」
2 心がふさいで晴れ晴れとしないさまを雲にたとえていう。*夫木‐一九「身をもなほうしとはいはじ今はただこころの雲を風にまかせて」
●心の氷(こおり)
1 心が憂いにとざされて解けないさまを氷にたとえていう。
2 不安や恐れのために心が冷えわたるさまを氷にたとえていう。
●心のごとく
意のままに。思う通りに。*今昔‐二五・四「心の如く罸(う)ち得たるは、実に天道の許し給ふ事なめりとぞ」
●心の錆(さび)
=こころ(心)の垢(あか)*浄・五十年忌歌念仏‐中「心のさびもあら砥のとぎたて」
●心の猿(さる)
(「心猿(しんえん)」の訓読み)煩悩(ぼんのう)のために情意が乱れて落ち着かないことを、猿の挙動がせわしく騒がしいのにたとえていう。*光悦本謡曲・采女「さはがしく共教へあらばうかぶ心の猿沢の池の蓮の台(うてな)に座せん」
●心の師(し)となるとも心を師とせざれ
(「北本涅槃経‐二八」の「願作
心師
、不
師
於心
」による)師が弟子を教え導くように、自らの心を仏の教えに則して律すべきであり、情意のままに動かされてはならない。
●心の注連(しめ)
1 (「注連」は占有のしるしの縄)心で、はいらせまいと思うこと。立ち入り禁止の心づもり。*和泉式部集‐上「心のしめはいふかひもなし」
2 身を慎んで心から神に祈ること。「かける」ということばを伴うことが多い。*長秋詠藻‐下「しるやいかに君をみ嶽の初斎(はついもひ)心のしめも今日かけつとは」
●心の末(すえ)
心が移り行く先。将来の心の状態。*拾遺愚草員外「心の末のしるべたがふな」
●心の杉(すぎ)
杉の木がまっすぐに伸びるところから、正直、誠実な心のたとえ。また、常緑樹であるところから、ひたむきな変わらない心のたとえ。*新古今‐一〇六二「誰ぞ此の三輪の檜原も知らなくに心のすきの我を尋ぬる」
●心の直(すぐ)にない者
心の正しくない者。盗み、かたりなどを働く悪者。多く能狂言で用いられる表現。
●心のすさび
気持のおもむくままに事をすること。興に乗じた物好き。気まぐれ。*源氏‐帚木「すきずきしき心のすさびにて」
●心の筋(すじ)
判断や考え方の中に一貫して通っている条理。また、考えのすじみち。*源氏‐玉鬘「ただこころのすぢをただよはしからずもてしづめおきて」
●心の勢(せい)
心のいきおい。心の有様。*源平盛衰記‐一八「兵衛佐の心の
(セイ)を見てければ」
●心の関(せき)
1 思うことが通されず滞ることを関所にたとえていう。*順徳院御集「人も守る心のせきをたれすゑて又あふ坂に道まよふらん」
2 心の中で相手の行動をせきとめようと思うことを、関所にたとえていう。*月詣‐四「惜しめどもとまらで過ぎぬ時鳥こころの関はかひなかりけり」
3 人に対して心を許さないことを、関所を設けて守るのにたとえていう。警戒心。
●心の底(そこ)
心の奥深いところ。また、うわべからはわからない本当の心。本心。心底。
●心の空(そら)
1 心を晴れたり曇ったりする空にたとえていう。心の中。ここち。*類従本赤染衛門集「心のそらの晴るる世もなし」
2 1に、心もそぞろになる意の「空」をかけた表現。*後拾遺‐八七〇「いかにせん山の端にだにとどまらで心の空に出でん月をば」
3 気持のゆとり。心の暇。*青表紙一本源氏‐行幸「よるひる三条にそさふらひ給て、心のそらなくものの給て」
●心の丈(たけ)
心の深さ。心のありったけ。思うことのすべて。「心の丈を書きつづる」
●心の竹(たけ)
実直な心を竹のまっすぐなさまにたとえていう。*浄・聖徳太子絵伝記‐真の立花「直(すなを)なる心の竹を立初る」
●心の種(たね)
1 (「古今集‐仮名序」の「やまとうたは、ひとのこころをたねとして、よろづのことの葉とぞなれりける」による)心を植物の種子にたとえ、言葉の「葉」と対応させたもの。詩歌、詞の生じるもと。*新千載‐二一五二「苗代に心のたねを蒔きそへて鳴くやかはづのやまと言の葉」
2 心が展開するもとになるものを、草木の種にたとえた語。*現存六帖「憂き人のこころのたねの忘草」
3 心に悩みを生じさせるもと。悩みのたね。*浄・薩摩歌‐夢分舟「かずならぬ心のたねの」
●心の塵(ちり)
1 悩みのために千々にくだけた気持を比喩的に表現した語。*宇津保‐菊の宴「わがくだく心のちりは雲となり」
2 心についた汚れ。煩悩(ぼんのう)。雑念。*栄花‐殿上の花見「濁りなき亀井の水をむすび上げてこころのちりをすすぎつるかな」
●心の使(つか)い
筆の異称。
●心の月(つき)
(「心月(しんげつ)」の訓読み)悟りを開いた心や邪心のない清い心を、明月の清く澄むさまにたとえていう。
●心の綱(つな)
情にほだされて心がままにならないこと。思いの綱。思いのきずな。*広本拾玉集‐二「おもひしる心のつなをよもに引て」
●心の角(つの)
(「つの」は鬼のつので邪心のたとえ)邪悪な心。「心の角を折る」で前非を悔い改める意にいう。*浄・蝉丸‐一「心の角のえだ高き、かげろふの森ほのぐらし」
●心の端(つま)
思いの生じる種。心のよすが。また、気持が外に表われ出た一端。気持のはし。
●心の露(つゆ)
悲しみのあまり、心中に流す涙を露にたとえていう。
●心の剣(つるぎ)
自分や他人を傷つけ破滅させる心。害意を剣にたとえていう。*浮・好色一代男‐四「心の劔(ツルキ)を捨て西の方を拝み」
●心長閑(のど)か
⇒親見出し
●心の留(と)まり
愛情が他に移らないでそそがれているところ。心の落ち着きどころ。*源氏‐宿木「忍びつつ又思ひます人なき心のとまりにてこそはあらめなど」
●心の友(とも)
1 心の通じあっている友。自分の心をよく理解してくれる友。知己。
2 心を慰めてくれる対象物。
●心の做(な)し
先入観などが、そのように思わせること。思いなし。気のせい。*源氏‐紅梅「猶たぐひあらじと思ひ聞えし心のなしにやありけん」
●心の濁(にご)り
心のけがれ。煩悩(ぼんのう)。邪念。心の垢。心の塵。
●心の蓮(はちす)
人が生来持っている清らかな心を、蓮(はす)の花にたとえていう。*散木奇歌集‐釈教「植ゑおきし心のはちす開けなん」
●心の果(は)て
心の落ち着くところ。思いの極まるところ。*千載‐二九〇「ながめやるこころのはてぞなかりける」
●心の花(はな)
1 変わりやすい人の心を、花の移ろいやすいことにたとえていう。多く愛情についていう。あだごころ。浮かれ心。*古今‐七九七「色見えでうつろふものは世中の人の心の花にぞありける」
2 美しい心を花にたとえていう。風情を解する心。*為秀本長秋詠藻「悟りえて心のはなし開けなば」
3 よろこびの思い、念願がかなって晴れ晴れとした思いなどにたとえる。*浮・日本永代蔵‐二「頓(やが)て心の花も咲出る桜山、色も香も有若ざかり」
4 ⇒親見出し
●心の林(はやし)
(「林」は動詞「栄(は)やす」の連用形を名詞化した「栄(は)やし」にかけたもので、林立し、盛んなさま)心をはやし立て、勇気づけるもの。心を励まし力づける材料。*書紀‐顕宗即位前・歌謡「取り挙ぐる棟梁(うつばり)は此の家長の御心之林(こころのはやし)なり」
●心の針(はり)
心の中にいだく害意。とげとげしい気持。
●心の春(はる)
春のようにのどかな心。うきうきした気持。
●心の引(ひ)き引(ひ)き
思い思いに。好みにまかせて。心の向き向き。心引き。*続日本紀‐天平神護元年三月五日・宣命「己が心乃比岐比岐(こころノヒキヒキ)、太子を立てむと念ひて」
●心の暇(ひま)
心が安らかで静かな時。物思いのない時。心のゆとり。心のいとま。*源氏‐夕霧「いと御心のひまあらじ、などきこゆれど」
●心の紐(ひも・ひぼ)
心を締めくくる紐。油断をしないで気を引き締めるたとえに用いる。
●心延(の)ぶ
(「延ぶ」が自動詞上二段活用の場合)心のどかになる。気持がのんびりする。*源氏‐絵合「三月の十日のほどなれば、空もうららかにて、人の心ものび」
(「延ぶ」が他動詞下二段活用の場合)⇒こころ(心)を延ぶ
●心の蓋(ふた)
本心をおおい隠すもの。
●心の外(ほか)
1 自分の望むとおりにならないこと。不本意なこと。期待に反すること。思いのほか。*源氏‐須磨「世を御心のほかにまつりごちなし給ふ人々のあるに」
2 思いがけないこと。意外なこと。*源氏‐総角「げにながらへば、心のほかにかくあるまじき事も見るべきわざにこそは」
3 気に留めないこと。問題にしないこと。無関心。*新古今‐一三〇九「今はただ心のほかに聞くものを」
●心の欲(ほっ)するところに従えども矩(のり)を踰(こ)えず
(「論語‐為政」の「七十而従
心所
欲不
踰
矩」による)自分の心に思う事をそのまま行なっても、まったく道徳の規範から外れることがない。孔子が七〇歳で到達した境地。
●心の程(ほど)
心の程度。心の有様。*源氏‐帚木「うちつけに、深からぬ心のほどと見給らん」
●心の仏(ほとけ)
心の本性は仏で、自己の心以外に仏はないということ。即心是仏。
●心の松(まつ)
1 (「松」を「待つ」にかけて)心中に期待すること。*拾遺‐八六六「杉たてる宿をぞ人はたづねける心の松はかひなかりけり」
2 変わらない心を松の常緑であるのにたとえていう。*宗祇袖下「心の杉、こころの松、定たる心の事也」
●心のまにまに
=こころ(心)のまま*書紀‐神代上(兼夏本訓)「伊弉諾尊、悪(にく別訓わらて)むて曰はく、可以任情行(こころのままにいね別訓ココロノマニマニいね)とのたまふて乃(すなは)ち逐(やらひや)りき」
●心のまま
心に思う通り。心まかせ。思う存分。心のままに。*竹取「産める子のやうにあれど、〈略〉心のまにまにもえ責めず」
●心の水(みず)
1 心の状態を水にたとえていう。清濁、深浅、動静などのさまを表わすのに用いる。*詞花‐三六八「思ひやれこころのみづの浅ければ」
2 精液。淫水。
●心の道(みち)
1 心に守るべき正しい道。*古事談‐三「歌占に、十万億の国々は海山隔て遠けれど、心の道だになほければ、つとめて至るとこそきけ」
2 心の通う道。*御室五十首「思いやる心の道や近からむ」
●心の湊(みなと)
硯(すずり)の異称。
●心の紅葉(もみじ)
恋い焦がれる心や色めいた心を紅葉にたとえていう。*成尋母集「別れのみ秋はこころのもみぢこがれつつあなやくなやと過ぎにしさへぞ厭はしき」
●心の刃(やひば)
1 人に危害を与えようとする心。害意。心の剣。*浄・平家女護島‐四「我を土足にかけまくも沈みし君を助けたる、咎とて殺す心の刃(やいば)」
2 思いを託した刃物。*浄・寿の門松‐中「此剃刀は私が磨く心の刃(ヤイバ)」
●心の宿(やど)
心がやどるところ。胸のうち。*玉葉‐二六七五「かりそめに心の宿となれる身を」
●心の山(やま)
心を山にたとえていう。積もる思いや奥深い心などのたとえに用いる。*続古今‐仮名序「花は木ごとに咲きてつゐに心の山を飾り」
●心の闇(やみ)
1 煩悩(ぼんのう)に迷う心を闇にたとえていう。思い惑って理非の分別を失うこと。迷妄の心。*古今‐六四六「かきくらす心のやみにまどひにきゆめうつつとは世人(よひと)さだめよ」
2 (「後撰集‐一一〇三」の「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」から)特に、親が子に対する愛から理性を失って迷う心をいう。子ゆえの闇。*源氏‐桐壺「くれまどふ心のやみも堪へがたき片端をだに、はるく許に聞えまほしう侍るを」
●心の行方(ゆくえ)
心の向かうところ。意向。考え。
●心の夢(ゆめ)
煩悩(ぼんのう)に思いまどう心を夢にたとえていう。
●心の蓬(よもぎ)
(蓬が曲がって生えるところから)人の心が曲がり、正直でないさまを、蓬にたとえていう語。
●心ばかり
⇒親見出し
●心は心として
心はさておき。思ってはみるものの、一方では。*源氏‐帚木「心は心として事足らず」
●心は小(しょう)ならんことを欲(ほっ)し志(こころざし)は大(だい)ならんことを欲す
(「淮南子‐主術訓」の「凡人之論、心欲
小而志欲
大、智欲
員而行欲
方、能欲
多而事欲
鮮」による)細心綿密な思慮とともに、高尚遠大な志操を持ちたいものである。胆大心小。
●心恥(は)ずかし
⇒親見出し
●心働(はたら)く
1 心が動揺する。心が静まらない。
2 気がきく。才覚がある。
●心は二つ身は一つ
思いはあれもこれもと双方に引かれるが、わが身は一つで思うに任せないことをいう。
●心は持(も)ちよう
心の持ち方しだいで同じ事が楽しくも苦しくもなるものだ。気は持ちよう。
●心早(はや)し
⇒親見出し
●心は矢竹(やたけ)
(「矢竹」は「弥猛(いやたけ)」の当て字)気持がいよいよ勇み立つこと。心の中ではやってあせること。
●心引(ひ)く
心が傾く。心がひきつけられる。好意を寄せる。*源氏‐須磨「あながちなりし心のひく方に任せず、かつはめやすくもて隠しつるぞかし」
●心一(ひと)つ
1 多くあるわけではない、ただ一つの心。たった一つの自分の心。たった一つの心なのに思うままにならないという嘆きの意をこめて使われることが多い。*古今‐五〇九「心ひとつを定めかねつる」
2 人知れず、ひそかに、自分の心の中だけで、考え、感じるさま。*伊勢‐三四「いへばえにいはねば胸にさわがれて心ひとつに嘆くころ哉」
3 他人のおもわくには関わりなく、自分の考えだけに固執するさま。ひとりよがりな、独断的な態度。*宇津保‐忠こそ「上中下すげなき遊びを、心ひとつやりてこと心なし」
4 もっぱら、その事だけを考えること。一つのことを思いつめること。*伊勢‐二二「あひ見ては心ひとつをかはしまの水の流れて絶えじとぞ思ふ」
5 他の考え方を切り捨てて残った、たった一つの考え方。その考えだけ。*源氏‐松風「〈略〉と思ふ心ひとつをたのみ侍りしに」
6 もともと二つ以上のものが、一心同体になった状態。ひとつの心。*新撰菟玖波集‐釈教「心ひとつぞわくかたもなき」
7 同じ趣味、目的、志向などを心に持っていること。ひとつ心。*浮・西鶴諸国はなし‐五「亭主も客も、心ひとつの数寄人に」
8 もっぱら、本人の考え方いかんにかかっているさま。その人の考え方しだい。「やめるか否かは君の心一つだ」
●心開(ひら)く
晴れ晴れとした気持になる。うちとける。
●心広し
⇒親見出し
●心深(ふか)い
⇒親見出し
●心太(ふと)し
⇒こころぶとし(心太)
●心隔(へだ)つ
1 心と心との交流を妨げる。*万葉‐四〇七六「あしひきの山は無くもが月みれば同じき里を許己呂敝太
(ココロヘダテ)つ」
2 心に隔てをおく。うとましく思う。*万葉‐一三一〇「目はへだてども心間(こころへだて)や」
●心程(ほど)
⇒親見出し
●心惚(ほ)る
1 放心状態になる。物事に心を奪われて夢中になる。
2 年老いてぼける。耄碌(もうろく)する。恍惚(こうこつ)となる。
●心まで
⇒親見出し
●心=惑(まど)う[=迷(まよ)う]
思い乱れる。当惑する。途方に暮れる。
●心忠実(まめ)し
⇒親見出し
●心回(まわ)る
考えつく。機転がきく。
●心短(みじか)し
⇒親見出し
●心咽(む)す
心がふさがり詰まる。悲しみで胸がいっぱいになる。
●心も肝(きも)も
(多く「なし」を伴って用いる)思慮も分別も。
●心も心(こころ)ならず
1 落ち着きを失って、そわそわするさま。気が気でない。
2 上気してわれを忘れる。うっとりする。
●心も詞(ことば)も及ばれず
思案に余り、形容のことばもない。想像もつかないし、ことばで言い尽くすこともできない。
●心もしのに
(「しの」は草や藻などが風や波などになびきしなうさまをいう)心もしなうばかりに。心もぐったりして。*万葉‐二六六「淡海の海夕浪千鳥汝が鳴けば情毛思努爾(こころモシノニ)古(いにしへ)思ほゆ」
●心も空(そら)
気もそぞろであること。放心状態であること。うわのそら。
●心以(も)て
1 (連体修飾語が上に付いて)そういう性質を持っていて。*古今‐一六五「はちすばのにごりにしまぬ心もてなにかは露を玉とあざむく」
2 自分の意志で。自発的に。自分の心から求めて。*後撰‐二六九「心もておふる山田のひつぢ穂は」
●心燃(も)ゆ
感情がたかぶる。居たたまれない気持になる。胸が一杯になる。
●心焼(や)く
(「焼く」が他動詞四段活用の場合)心を乱す。胸を焦がす。
(「焼く」が自動詞下二段活用の場合)思い焦がれる。心が燃える。
●心疾(やま)しい
⇒親見出し
●心病(や)む
1 平静でいられないで、心を痛める。思い悩む。*伊勢‐五「いといたう心やみけり」
2 恨む。怒る。ねたむ。
●心柔(やわ)らか
⇒親見出し
●心ゆ
(「ゆ」は格助詞)心から。本気に。心底から。*万葉‐四九〇「情由(こころユ)も思へや妹が夢にし見ゆる」
●心床(ゆか)し
⇒親見出し
●心行(ゆ)く
1 思う心が相手に届く。*万葉‐五五三「天雲の遠隔(そきへ)の極(きはみ)遠けども情志行(こころシゆけ)ば恋ふるものかも」
2 ふさいでいた気持が晴れて、満足する。念願を達して心が晴れ晴れする。→親見出し。*万葉‐四六六「わが屋前(やど)に花そ咲きたるそを見れど情毛不行(こころもゆかず)」
●心よい
⇒親見出し
●心より
1 自分の心がもとで。自分の考えで。思いなしから。心と。*曾丹集「こころより春のあらしにさそはれて」
2 心によって。以心伝心。*新後撰‐六九七「言のはもをよばぬ法のまことをば心よりこそつたへそめしか」
●心より外(ほか)
1 思いもかけないさま。思いも及ばないさま。意外なさま。
2 意に満たないさま。不本意なさま。心ならずも。
3 心の自由になる範囲外。思うにまかせないさま。心のままにならないさま。
●心寄(よ)る
心がひかれる。心がその方になびき傾く。*万葉‐二四八二「水底に生ふる玉藻の打靡き心依(こころはより)て恋ふるこの頃」
●心弱い
⇒親見出し
●心悪(わる・わろ)い
⇒親見出し
●心を洗(あら)う
心のけがれをすすぎ清める。すがすがしい気持にする。
●心を改(あらた)む
志を変える。心を入れ替える。改心する。
●心を合(あ)わせる
1 同意する。合意する。納得する。
2 しめし合わせる。共謀する。
3 協力する。心を同じくする。
●心を致(いた)す
心をこめる。心を尽くす。深く心を入れる。*源氏‐夕霧「心をいたしてつかふまつる御修法」
●心を痛(いた)める
どうなるか、どうしたらよいかとさまざまに心をなやます。
●心を一(いつ)にす
気をそろえる。協力する。
●心を入(い)れ替(か)える
それまでの考え方や精神をあらためる。魂を入れかえる。改心する。
●心を入(い)れる
その事に心を打ちこむ。専念する。熱中する。
●心を得(う)
1 意味を理解する。会得(えとく)する。事情をさとる。それと気付く。心得る。
2 精通する。通暁する。心得がある。心得る。
●心を動(うご)かす
1 心を乱す。心を動揺させる。気をもむ。
2 感動する。心を打たれる。
3 説得などして、相手の気を変える。
●心を移(うつ)す
1 注意を向ける。心がひかれる。気を取られる。
2 愛情を他の者へ移す。
●心を奪(うば)う
人の心をひきつける。魅了する。
●心を置(お)く
1 心にかける。配慮する。念頭に置いて事をする。
2 心をあとに残す。執着する。執心する。
3 自分に気がひけるようなことがあったりして、改まった態度をとる。遠慮する。気がねする。
4 相手に対してわだかまりの気持や警戒する気持を抱く。
●心を起(お)こす
1 精神を奮い起こす。心を励ます。気をとりなおす。
2 発心(ほっしん)する。信仰心を起こす。
●心を鬼にする
気の毒に思いながら、わざとつれなくする。情にほだされながら、非情にふるまう。
●心を思(おも)う
心を持つ。気持をいだく。心に思う。*万葉‐三四八二「異(け)しき己許呂乎(ココロヲ)吾(あ)が毛波(モハ)なくに」
●心を反(かえ)す
考えを変えさせる。翻意する。
●心を掛(か)ける
1 心を留める。注意する。
2 思いを寄せる。恋い慕う。
3 信仰する。祈願する。
●心を固(かた)む
心構えをする。決心を固める。
●心を傾(かたむ)ける
1 心を集中させる。心を尽くす。心を打ちこむ。
2 心を寄せる。他人の権勢などになびく。
●心を通(かよ)わす
1 互いに心を通じる。気脈を通じる。
2 注意を行きわたらせる。
●心を交(か)わす
互いに心を通じあう。思い合う。合意する。
●心を利(き)かす
気をつかう。気を配る。心をはたらかせる。
●心を砕(くだ)く
1 気をもむ。心配する。
2 気を配る。苦心する。真心を尽くす。
●心を配(くば)る
気をつける。配慮する。気を配る。
●心を汲(く)む
相手の心中を思いやる。気持を察する。斟酌(しんしゃく)する。
●心を暗(くら)す
心を暗くさせる。心を曇らせる。悲しい気持にする。
●心を呉(く)る
気を許す。油断する。
●心を消(け)つ
気を落とす。
●心を焦(こ)がす
心を苦しめる。思いわずらわせる。
●心を粉(こ)に=する[=はたく]
いろいろと苦心する。心を砕く。
●心を込(こ)める
心の丈(たけ)を託す。真心を込める。*浄・用明天皇職人鑑‐二「心をこめし贈り物」
●心を凝(こ)らす
工夫(くふう)する。一心になる。気を詰める。
●心を殺(ころ)す
心を押える。耐え忍ぶ。
●心を定(さだ)める
決心する。心にきめる。覚悟する。
●心を染(し)む
心に染みつく。深く心を寄せる。愛着する。思い染む。*源氏‐若紫「あぢきなきことに心をしめて」
●心を締(し)める
気を引き締める。油断なく気をくばる。
●心を知(し)る
1 相手の気持を推しはかる。気心がわかる。
2 物の道理を知る。事情がわかる。情趣を解する。
●心を添(そ)う
真心をこめる。特に、熱意や好意を相手に対して抱く。気を配る。
●心を染(そ)む
思いをかける。心を深く寄せる。恋慕する。
●心を空(そら)に
われを忘れて。夢中で。*新古今‐八九三「都をば心を空にいでぬとも」
●心を剃(そ)る
真心から発心(ほっしん)する。*平家‐一二「かしらをば剃ったりとも、心をばよもそらじ」
●心を倒(たお)す
気力を失う。気を腐らせる。卑屈になる。
●心を立(た)つ
発奮する。志を立てる。また、自分の意志を押し通す。我を張る。
●心を散(ち)らす
(花が散るさまにたとえていう)気を散らせる。種々に思いを馳せて落ち着かない。
●心を使(つか)う
1 心を持つ。考えを起こす。心をいだく。
2 気を配る。心配する。
●心を付(つ)く
1 思いをかける。心を寄せる。執









































































こり【心】🔗⭐🔉
こり【心】
=こころ(心)
[補注]「書紀‐神代上(水戸本訓)」に「号(なつ)けて田心姫(たコリひめ)と曰ふ」と、神名の一部として用いられている。
しん【心】🔗⭐🔉
しん【心】
1 こころ。精神。
2 心臓。心の臓。*浄・源氏冷泉節‐上「さすがの法眼手もふるひ、〈略〉心(シン)・肝・腎も命門も、右に有やら左やら」
3 胸部。むね。
4 (「芯」とも書く)物の中央、また、中心を構成する部分。
まん中にあるもの。物の中心。「ろうそく(鉛筆)のしん」「頭のしんが痛む」
生け花で、中心になる枝や花。
衿や帯、また、屏風や襖(ふすま)などに入れて形を整えるもの。「帯のしん」
飯などの煮えきらない固い部分。「しんのあるごはん」
5 中心となって活動するもの。一群の中での主要なもの。
行動の中心となるもの。主脳。
=しん(真)11
6 仲間。多く子どもが用いる語。*滑・浮世風呂‐前「そんならおいらもしんに入ねへな」
7 根拠。基礎。
二十八宿の一つ。東方に位するもの。さそり座の中央部にあたる主星アンタレスほか二星をいう。心宿(しんしゅく)。なかごぼし。
●心の臓(ぞう)
=しんぞう(心臓)
●心の=柱(はしら)[=御柱(みはしら)]
=しんばしら(心柱)
●心も懲(こ)りもない
何度、失敗しても懲りない。しょう懲りもない。








と‐しん【妬心・
心】🔗⭐🔉
と‐しん【妬心・
心】
ねたむ気持。嫉妬心。

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